0-35 冬の過ごし方
本日2話目です。
ご注意ください。
テリオたちが刀鍛冶を始めてひと月、里に来てからもふた月程が経っていた。
小さな懐刀だというのに、まだ完成には辿り着いていない。
これには未経験者が二人おり、教えながらの作業である所が大きい。
何本も打つ物でもないので、ゆっくり確実にと教えていく。
暫く離れていたテリオだけでなく他の里の者も、復習にと一緒に勉強しながらの作業となっていた。
だが、そのお陰か二人の覚わりは悪くなく、次に打つ際にはもっと重要な部分も手を掛けさせても良いレベルになっていた。
ただ、サークヤは里から離れるというテリオたちに付いて行くつもりだったので、再度里へと来れるのかどうかが分からなかった。
それでも教えて貰えるという事で、サークヤの真剣度は皆を唸らせる程のものだった。
いずれ何かがあって頼りにされた時に役立たずにはなりたくないと思うところがサークヤであり、里の者たちもそれに期待している事はサークヤにもよく伝わっていた。
さて、里の子供たちはというと、遊び相手が二人欠けた事で退屈な日々を送っていた。
外が雪で覆われた冬場は、雪遊びの他は家の中での遊びなので、元気の有り余っている子供たちは体を持て余している。
「暇だね~」
「外の人が鍛冶場に籠っちゃってもうひと月だからね~」
チナとサキの8歳コンビが不満を漏らす。
「サークヤさん、面白いからね~」
ユナがうんうんと同意する。
「ユリ姉も春には里を出てくから、最近は余り遊んでくれないしね」
「そうそう。16歳になるからって、着物作ったり荷物分けたり忙しそうだもんね」
「お姉ちゃん、最近ちょっと元気無いんだよね。里を出るの楽しみじゃ無いんかな?」
「あれ? 前にユリ姉、外の人が炭焼きしてた時に嬉しそうに里の外の事を話してたよ?」
チナとサキの話にユナが姉の最近の様子を伝えると、サキがひと月以上前の話を披露した。
「えっ! そうなの? お姉ちゃんから何も聞いて無いけど」
「外の人が里に来るまでに立ち寄った町や村の話を聞かせて貰ってたよ」
「えー! 良いなあ。私も外の話を聞きたかったな~」
「私も聞きたかったよぉ。サキは聞いたの?」
「私も聞いて無いの。炭焼き小屋には入っちゃダメってタカばあちゃんに言われてたから……」
「「あ~」」
紬家のタカエに言われては、里の者は誰も逆らえない。
ちなみに曾婆ちゃんと呼ばれるのを嫌い、タカばあちゃんと呼ばせている。
「でもユリ姉は小屋に入って良いの?」
「タカばあちゃんに今回だけってお許しを得てたわ。元々タカばあちゃんがある程度お話しようとしてたから丁度良いって」
「良いな~」
「「ね~」」
益々不満をぶちまける女の子三人組は、仲良しな里の子供たちの中でも特に仲が良い。
「でも、あと少しで今の仕事が終わるって父さんが言ってたよ」
鍛家の娘であるチナが、父と母イーゼンとの話をこっそり聞いていた。
「へぇ~、そうなんだ」
「じゃあさ、外の人に何か作ってもらわない? あの人って、皆の知らない事をたくさん知ってるっぽいし」
「あ、良いね~。家の外で遊ぶ物と中でも遊べる物が良いね」
サキの提案にユナが答える。
確かに、冬の遊び道具は竹スキーくらいしか無く、家の中で遊べる物はなかった。
里の外を知るサークヤなら、色々と遊ぶ道具や方法を知っているだろうと目論んだのだが、後にそれは証明される事となる。
ただ斜面を滑るだけだったソリ遊びに、曲がりくねったコースを作り子供だけでなく大人をも唸らせるスリリングなソリ遊びと昇華させて見せたのだ。
他にも雪像やカマクラを皆で作った。
雪合戦は小さな子がいて危ないのでサークヤが禁止としたが、ちょっとやり過ぎかなと反省もした。
室内の遊びについては各種ボードゲームを作った。
スゴロクにツイスターゲーム、トランプに将棋、オセロにジェンガなど。
将棋は不思議と里に伝わっていなかった。
これは、初代が遊びにまで手を伸ばす暇が無かったからだと思われる。
麻雀はサークヤがルール等を全く知らなかったので、作る気は起きなかった。
サークヤは様々なゲームを鍛家、修家を巻き込んで作っていった。
刀鍛冶が終わった後だったので、簡単に出来るそれらは里の中にすぐに行き渡って、暇を持て余していた皆を歓ばせた。
しかし、喜ばない者もいた。
「サークヤ、里の者を堕落させおって。冬とて仕事はあるんだぞ?」
「ご、ごめんなさい、タカエさん」
どの家にも仕事量は減るが、無くなる訳ではない。
特に紬家は織物があるので年中仕事が絶える事は無い……からなのだが、実際はタカエが遊びに入り難いが為の妬みであった。
哀れなりサークヤ。




