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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
第一章 道具屋の日常
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1-6 ピクニック

 

 いつもより少しばかり早くに起床した俺は、キッチンで神を見る事になる。

 すげぇ、サリさん。

 料理の鉄人も裸足で逃げ出すレベルだぞこれ、下手に手伝わない方が安全だ、間違いない。

 ピクニックに持って行く弁当が出来上がるのと同時に、いつの間にか朝飯も用意できていた。

 しばらく見てたけど、朝飯分をいつ作ってたか分からなかったぞ?

 いつも通り起きてきたケーブさん・サーリャ・ミーリャはそれにも気付かずいつも通りに朝飯にありつく。


 じきに集合時間になり、用意が出来た俺たちは店の前に出ると既に彼女たちは待っていた。

「あらあら、お待たせしちゃったかしら」

「いえ、二人とも今来たところですよ。みなさん、おはようございます」

 皆で朝の挨拶を交わしていく。

 ラーナさんにサーリャ・ミーリャ姉妹を紹介したところ、「な、なんですかっ! このかわいい生き物はっ!!」と取り乱していたのは至極当然である。仲間が出来たようだ。


 約束通り材料を受け取り作業場の棚に収めて戻ると、既にラーナさんがチビッ子姉妹と仲良くなっていた。

 サリさんの作った弁当は俺とケーブさんの二人で持ち、荷物は女性陣には持たせない。当然である。

 7人仲良くメイン通りを目的地に向かって歩く。

 いつもならチビッ子姉妹が俺にまとわりつくようにくっついてくるので歩きにくいのだが、今日に限ってはそんな事もなく荷物を持っていても快適に歩を進める事が出来る。

 そしてケーブさんの機嫌も、いつもと違い今日は悪くない。

 何故だろう。

 サリさんの「うふふ、今日は本当に楽だわ~」という一言にいろんな意味が凝縮されている気がする。


 ワイワイと騒ぎながら(男性陣は除く)、半時も歩くと目的の川原が見えてきた。

 走り出そうとするチビッ子姉妹を女性陣が抑えながら川原に降り、ぶらぶらと歩きながら座るのに良さそうな場所を探す。

「この辺りが良さそうだな、ちょうど昼時だし、ここで広げるか。おいユーキ、準備しろ」

 俺とケーブで敷物を広げ、昨日作っておいた物を組み立て始めた。

「気にはなっていたんですが、何ですかそれ?」

 アイーナさんに聞かれ、組み立てながら答える。

「これは組み立て式の(テーブル)です。敷物の上に並べても良いんですが、子供たちもいるし、なんだかんだで机があった方が良いかと思って、昨日仕事終わってから作ったんです」

 決して大きくはないが、会心の出来だ。

 子供たちはもちろん、女性陣皆から好評を得た。

 男からの評価はどうでも良い。


 サリさんの作った弁当は素晴らしいの一言に尽きる。

 これは全員一致の揺るがない評価であった。

 かなりの量があったにもかかわらず、何一つ残ってないのが良い証拠だ。


 弁当を食べ終わり、皆でのんびりしている時にまたあの話題になった。

「そういえば、勇者が橋の向こうの上流階級区に住むらしいって噂を聞いたわ」

「「「えっ!」」」

 サリさんの一言に反応したのが3人。

「「「えっ??」」」

 思わず顔を見合わせる3人。

 俺と、意外にもアイーナさん、ラーナさんだった。

 えっ? 何故二人が驚くんだ?


「本当なのか? サリ」

「ええ、かなり信憑性の高い話らしいわ。役所の人が空き家の確認に来てたし」

「へぇ~それじゃあ、あの噂も本当って事なのかな。勇者を召喚したって話」

 俺がその話にしかめっ面をしながら顔を上げると、何故かアイーナさん、ラーナさんが目を泳がせて固まっていた。

「あら、どうしたの? 3人とも」

「「「えっ、いや、何でもないです」」」

「あらあら」

 う~ん、何だろう。何か知ってるんだろうか。

 詳しく聞きたいところだけど、この話題はこれで終わりにした方が良さそうかな?


「でも、それが本当なら昔話もあながち作り話じゃないのかもな」

 ケーブさん、空気読めないな~。

「そうねぇ、空飛んだりは後から創作で付け足されたっぽいけど、竜退治は本当なのかもね」

 そう思っていた方がロマンがあるわよねと言うサリさんを見ると、いつの間にか姉妹が母親に身体を預け寝息を立てていた。

 やっぱり可愛いな。


 ポカポカ陽気の昼下がり、お腹も膨れ、他にやる事のない一同は昼寝を貪る事にしたのだった。






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