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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-31 薬家親子

「ただいま~。今帰ったがや」


「あら、タークさん。お帰りなさい。皆お昼食べちゃったわよ」

「ええ! 何ぞ残っとるかや?」

「ちゃんと取ってあるから大丈夫よ」

「ホッ。おおきにエナンさん」

 昼飯にありつけると安心するタークに、おかずを並べているのは兄トキヤの嫁であるエナンだ。

「シーナさんの怪我は大丈夫だったの?」

「まぁ、足を捻っただけだがや。問題にゃあて。ただのう……」

「ただ? どうしたの?」

「なんだしらん、ずっと上の空やったわ……どうなっとんだか」

「まあ、そうなの? 何かあったのかしら」

 首を傾げる二人。


「帰っとったか、ターク。ちゃっちゃと食ってちょおよ。片付かんで」

 奥から声を掛けてきたのは母チユである。

 勝手仕事はチユとエナンの二人の仕事であった。

 ちなみにチユは時々義父マサヒデ(タークの祖父)の方言が移ってしまう事があり、タークが帰ってきてからそれが顕著に出ていた。

「今帰ったとこやん…… ったく、おうじょうこくわ」

「全部さらえといてや」

「へいへい」


 * * * この先、☆印は標準語に翻訳してお送りします。決して方言を考え、調べながら書くのが面倒になったわけでは…… * * *


☆「ターク、シーナの足の具合はどうだったんだい?」

☆「軽度の捻挫やな。すぐに冷やして一晩安静にしてたらしいんだけど、その後に無理したから少し悪化したみたいやな。テリオがすぐ気付いて負ぶって帰ってきたから酷くはなっとりゃせん」*若干翻訳が追い付いてません。

☆「そう。ガッチリと固定してきた?」

☆「そりゃもう、これでもかって位ガッチリと。じっとしとりゃあ3日やな」

☆「シーナがじっとしてるところなんて、想像できないね」

☆「たしかに」

 あはははは、と笑う二人を見ていたエナンは、やっぱり親子だなぁと思うのだった。


☆「そうだ、ターク。雪かきの調子が良くないから鍛家まで持ってってくれない?」

☆「枠でも緩んだんかや? なら修家の方が良くないか?」

 里での木工品の修理はだいたい修家任せだったが、時には鍛家でも修理する。

☆「今、刀鍛冶の準備で男衆が鍛家に集まってると思うわ」

☆「刀鍛冶の相談なら鍛冶場の方かや?」

☆「たぶんそうね」


 雪かきを担いで鍛冶場に向かうターク。 

☆「こんちは~。ござらっせるか? 雪かき直してもらいたいんやが」

「おう、タークか。入ってこい」

 奥から鍛家のテツが返事をしたので、タークは中に入って行く。

☆「皆さん、お揃いで」

 そこには大家のタリオ、テリオの兄ハル、薬家のサコウ、タークの兄トキヤ、紬家でシーナの義兄マーヴィー、鍛家のテツ、修家のオサム、酪家のタツの総勢8人がいた。

 いつもは紬屋でシーナの父テムも加わりそうだが、テムはシーナが動かないように見張り役となっていた。


「ちょうど良いところに来た。タークの意見を聞きたいんだがな」

 タリオが真面目な顔で聞いてくる所を見ると、何か里に関する事だと察するターク。

☆「なんでしょう。ワシは里を出ている身なんですが」

「サークヤの事だ。シーナは動けんし、テリオじゃ正しい判断が出ないだろうからな」

「サークヤ……ですか? 何かやらかしましたか?」

 少し真剣な話っぽいので、タークはいつもの方言をやめて標準語で問う。

「いやな、サークヤが刀鍛冶を見たがっていると言うんだが、アレに見せても良いかどうかな」

「皆さんはどうなんです? もう結論はでているんじゃないですか?」

「そう……だな。意見は纏まっている。あとはお前の意見を聞いて確定するかどうかだ」


 タークは考えてから答える。

「サークヤはこの里に親しみを持ち始めていると思います。それにこの里を守りたいと言う気持ちも見て取れるし、何より信じられる人間だと思います。それに……」

「それに?」

 言い淀んだタークにタリオが聞く。

「いや、なんでもないです。ワシは見せても問題ないと思います」

 少し言い淀んだ後、そう言い切るタークにタリオが頷く。

「ふむ。一歩引いたところから見ることが出来るお前がそう言うなら大丈夫だろう」

 タリオは周りの男衆を見渡し……

「反対意見は無いか? ……無いならサークヤに次の刀鍛冶の手伝いをさせる事にする」

「ええっ!!! ちょっ! 手伝いって、そんな大事な話だったの!?」


 その頃テリオは炭焼き当番、サークヤはいるだけ用心棒を命じられて、女の子たちの弓矢の練習に立ち会っている最中だった。



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