0-32 安心して暮らせる秘密
本日2話目です。
ご注意ください。
「あっ! いた! あそこ!」
「あっ! ホントだ! いた!」
「早くっ! 早くっ!」
「そんなに騒いだら逃げちゃうよ」
今、サークヤは里の女の子たち6人と里の隅っこ、森のすぐ近くにいた。
皆は手に大小様々な弓矢を、サークヤは自分の武器である剣を持って構えていた。
狙うは兎等の小物。
中、大型の害獣は里の安全の為に大屋の男衆が狩り尽くしており、小物の獣は女性子供の練習の為に一切手を出していない。
サークヤは剣を持ってはいるが、只いるだけの用心棒役であった。
ギリッギリッ シュッ
「「「「「「「あ~」」」」」」」
「残念、当たらなかったね」
紬家の長女サキが放った矢は兎の手前に落ちるように雪上に刺さった。
8歳にして初めての狩りだと言うが、矢が前に飛んだだけでも上出来だろう。
力がない事を考えれば、よくあそこまで飛んだと褒めるべきである。
それまでは的を用意して練習していたそうだ。
「じゃあ、次はわたしね」
同じく8歳の鍛家の娘チナが名乗りを上げた。
サークヤは子供たちの様子を見ると同時に、周囲に狼等の害獣がいないかも警戒する。
「サークヤさん、そんなに警戒しなくても大丈夫よ」
前の方で始めての子たちに教えていた酪家の長女ユリが、周りをキョロキョロしていたサークヤに気が付いて、声を掛ける。
「ユリさん。いや、一応護衛役なんでね。どれだけこの里が安全なのかも知らないし」
「紬家のタカエ婆ちゃんが、100年以上里に害獣は下りて無いって言ってたわ」
「へぇ、100年以上ってすごいね。此処に来るまででも、そこそこいたのに」
「近付く害獣は大家の人たちが、みんな追い払うか駆除してくれているの。だから里に入って来る事は無いわ」
「へぇ、そうなん「あ~!! お姉ちゃんズルい! 私もサークヤさんとお話したい!」」
話に割入って来たのはユリの妹ユナだ。
「ねぇ、何話していたの?」
「ああ、僕が此処にいる理由が、今しがた否定されたところだよ」
「えっ! ちょっと! そんな事言ってないわよ?」
「あれ? そうだっけ?」
「……何だかお姉ちゃんたち、仲良くない?」
ジト目で二人を見るユナ。
それに対して首を傾げる二人、十分仲良しであるが何故か二人共それに気が付いてない。
はあ、とため息をついて、で何の話だったの? と二人に問う。
「この里に害獣が100年以上入り込んでないって話だよ。すごいよね」
「え? それってそんなにすごい事なの?」
「すごいと思うよ。この里に来る道中なんてそれなりに害獣と遭遇してたし、テリオさんが里まであとちょっとって言ってからも、たまにいたよ」
「ええっ!そうなの?」
「知らなかった……」
実際サークヤたち四人が、道なき道を里へと向かっている道中、鹿や猪、猿等の畑を荒らす獣とよく遭遇しており、都度狩ったり国境方面へ追い払ったりしていた。
テリオが里まであとちょっとと言ってから、特に里に入る前日と当日は、里への土産にと徹底的に狩り尽くした。
おかげで里への土産が大量になり、最初の夜の宴の席を賑わせ里の者たちを大層歓ばせた。
サークヤとしては、あとちょっとと言ってから3日くらいは森の中をさ迷ったので、担ぐ獲物の重量も手伝ってうんざりするくらいだった。
「へぇ、そんな事があったのね。だからあれだけのお肉が並んだのね」
と、ユリが返すが……
「ねえ、それって里の周囲を警戒に回ったんじゃ……」
「「ええっ!?」」
ユナの仮定に驚く二人。
「そういえば、西から来た筈なのに里には東から入ったっけ」
思い出しながら、そう答えるサークヤ。
「東側からの方が坂道が緩いからじゃないの?」
「たぶん違うと思うよ、お姉ちゃん。里の場所を分からなくするのと一石二鳥だから、と考えた方がしっくりしない?」
「「……」」
ユナの返しに、いよいよ言葉を失う二人だった。
「ユナちゃん、よくそんな事が分かるね」
サークヤの言葉に、うんうんと頷くユリ。
「てゆうか、お姉ちゃんは”さん”付けなのに、わたしには”ちゃん”付けなんだね」
ジト目が板に付くユナ。
「え? ユナちゃんは、さん付けの方が良いの?」
ユナは13歳、前の世界ではまだ中1だ。
対してユリはもうすぐ16歳、高校1年に当たる。
早い子は働き始めている歳だ。
実際、春からユリは里を出て働き出すだろう。
なんとなくサークヤは、その辺りで使い分けようとしていた。
「ん~…… やっぱ良いや。そのままで良いよ」
「そう? 本当に良いの? ユナさん」
「うひゃ~!! やっぱちゃんで良い!」
アハハハハと3人で笑い合う。
「何なになに? 何の話しているの?」
弓の練習をしていた子たちが集まって来た。
「今日は収穫ゼロかな?」
サークヤが皆に問い掛ける。
「ふふ~ん♪ わたしだけ兎1羽捕れたんだよ~!」
「え? ユナちゃん、捕れたの?」
まさかのユナの言葉に、サークヤは驚いた。
「あ~、ユナは私より弓が得意なのよねぇ……」
「お姉ちゃん、体動かすの苦手だもんね~」
「「「「ね~」」」」
皆の声が揃って、ユリがふいと顔を背けた。
それを見て、サークヤは苦笑しながら切り上げを提案した。
「さて、そろそろ皆帰ろうか」
は~い、と里に皆の声が響いた。




