1-5 休日の過ごし方は?
「明後日の休み、どこか小旅行でも行こうか」
サリが作った夕飯を食べながらケーブが言い出した。
「あら、良いわね~。お弁当、たくさん作っちゃうわよ?」
「「しょ~りょこ~?」」
サーちゃんミーちゃんは、ほへっと首をかしげた。
「少し遠くに出掛けて、お弁当を食べる事だ」
うわ~間違ってはないけど、子供に通じるかなそれ。
「「わ~~~おでかけするの? ね、ね、おでかけ~?」」
通じたーー!! ここはケーブの説明より子供たちの理解力に拍手だな~。
「ね、ね、ユーちゃんも行く?」「ユーたんいくぅ?」かっかわいいっ!
行くに決まって「ユーキは行かないぞ!」
えっ!! ケーブさん何言ってんだ!?
って……目が怖いんですがケーブさんや。
「えーーー! ユーちゃんいかないの? いっしょにいこうよ~」「ユーたんいこーよー」
「あなたぁ~、おかしな事言わないの! 行くでしょ? ユーキ」
さすが女性陣!
もちろん「行きまーすっ! それなら街外れの河原なんて如何です?」
このまえ鋳造所に行った時、街と穀草地との境にある川の橋で何気に下を見たら河原で何組かお弁当を広げてたのを見掛けたんだよね。
それほど遠くないので、子供たちとのんびり歩いて行っても半時程で行けるだろう。
それより遠くなると子供たちが疲れるだろうし、あまりに近いとつまらないからね。
それに、すぐそばの川には数日前の夜中、数年か振りという月食を見に行ってるんだよね。
夜遅かったので、月食が始まる頃には子供たちは我慢できず腕の中でコクリコクリしてたので、月食は大人たちしか見れていなかったのだけど。
さて、お弁当はサリさんに任せるとして、俺はアレを作っておこう。
― * ― * ― * ― * ― * ― * ― * ―
翌日、作業場で仕事をしていると店先の方からベルの音と共にサリさんが呼ぶ声が聞こえたのでカウンターへ向かうと……
「ね、どう? 明日休みって言ってたわよね」
サリさんが熱心に誘っている相手を見ると、銀髪セミロングで柔らかな表情の女性と、赤髪ショートでふんわりとした顔立ちの女性が見合っていた。
「あ、アイーナさん、こんにちは。 えっと、そちらの方は?」
「あ、ユーキさん、こんにちは。こちらは職場の後輩で」「私、ラーナと言います。初めまして」
「初めまして、ユーキです。 で、どうしたんです?」
アイーナさん、ラーナさんと挨拶を交わし、何を話してたのかを聞いてみる。
「明日の小旅行にお二人を誘ってたのよ。ちょうどお二人とも休みだって言うし」
なるほど、明日休みなのか。
「俺も行きますよ、小旅行。街の外の河原までなのでそんなに遠くないですから、如何ですか」
「アイーナ先輩、どうします?」
「明日は特に予定もないので、私は行っても良いわよ。ラーナはどうする?」
「先輩が行くなら私も行きますっ!」
「あらまぁ、仲良しさんなのね、お二人は」
二人とも参加決定ですね、楽しみが増えた。
集合時間を決めた後、忘れかけてた本題に入る。
「先日のピンは素晴らしい物で、仕事の効率が飛躍的に向上した上に何度か再利用できる事も分かったんで、予算オーバーだと怒られる所が、逆に褒められました。今日は追加発注をお願いに来たんです。あと相談ですが、こんなものは出来ますか?」
出された紙を見て内容を確認する。
・
・
・
「はい、賜りました。持ち込みの材料はいつ頃お持ちいただけますか」
「取りに行けばすぐにもお渡しできます。これから取りに行った方が良いでしょうか」
「あぁ、それでしたら明日の集合時にお渡しいただければ良いですよ。問題なければですが」
「よろしいのですか? 助かります」
アイーナさんと俺との会話を見ていたサリさんがニコニコしながらうんうんとうなずいている。
それを見たラーナさんがえっえっとアイーナさんと俺を代わるがわる見てくる。
あれぇ? 何か二人とも勘違いしてませんかねぇ……
アイーナさんを見ると、えっえっとラーナさんとサリさんを代わるがわる見ていた。