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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-20 稽古の相手

 

 結局、毎朝の稽古に出てくるのは、数日も経たずにサクーム家の二人(マサとナオ)とサクーム分家の一人(ノブ)だけになった。


 他の子たちには本格的な剣術は必要なく、チャンバラ程度で十分で稽古は厳し過ぎたのだ。

 まぁ、人減らしをしたかった二人としては意図せず成功した訳だ。

 元々この3人にはハルがよく稽古をつけており、ゆくゆくは刀を打ってやる予定である。

 12歳のマサは普段ハルに付いて狩りにも行っており、ハルのお下がりの小刀でウサギやタヌキくらいなら一人でも狩れるくらいの腕は持っていた。

 この世界に来たばかりのサークヤと比べると、どっこいか上手だった。

 ただ、まだ子供という事で、中型以上の獣の狩りには参加させてもらっておらず、熊の単独討伐を果たしたサークヤに現状では及ばないのだった。


 鍛家の長男ノブ(10)やマサの弟ナオ(9)も、もうじき狩りに連れて行ってもらえそうな腕にはなっている。

 素振りでは当初のサークヤを上回っていた。

「みんな、素振りがとてもきれいだなぁ」

 サークヤの素直な感想である。

「僕たちだって毎日稽古してるんだから、当然だよ!」

「「そうだそうだ!」」

 反撃を食らった。

 しかし……。


「お前らは素振りは良いんだが、手合せや実践に移ると途端にとっちらかる。威張れるほどじゃないんだぞ?」

 タリオが痛いところを突く。

「「「うっ」」」

「で、でも、僕は狩りもできてるしっ!」

「足の遅い小型のモノばかりだがな」

「ぐっ!」

「ま、まぁそのくらいで……」

 サークヤがタリオを止める。

 このまま続ければ、”子供たちのそばに居場所を作る”というサークヤの目論みの突破口を失いかねない。


 サークヤはこの里に来てから、稽古以外での居場所が無いままだった。

 下戸であるため最初の宴で酒盛りする男衆を避け、料理する女衆の中にも入って行けず、縋るように入って行った子供たちにも大泣きされて追い出された。

 普通は男衆の中に入って行くものだが、この里ではたっぷりの地酒があった。

 酪家の(タツ)が主体となって、男衆が本気で酒造りに勤しんだ結果だ。

 時に女衆も混ざって飲むので文句も出ない。

 恐るべし、酒の力。


 となれば、サークヤの行き先は……。

 なんとしてでも子供たちの輪の中に入るしかないのである。

 狙い目はこの3人。

 あとは慣れてもらうしかない、何度も顔を合わせて。

 それこそ地道な努力が必要だ。

 努力する方向が残念すぎるのだが。


 ちなみに、稽古初日に全員が集まった時は、最初の宴の時に泣いた子を中心に小さな子連盟がサークヤを木の棒片手に襲った。

 サークヤは小さな悲鳴を上げながら、幼子相手に手を出せず為すがまま叩かれた。

 それを見ていた大きな子たちはケタケタと笑っていた。

 その後の子供たちは、スッキリした表情でその日の稽古(という遊び)を終えたのだった。

 ……それ、既にもう大丈夫だと思うぞ? 作者が思うには。


 その後、タリオとサークヤが相手になり、3人と手合せをしていく。

 サークヤは気になった所を指摘していくのだが……。

「ほら、脇が甘い」

「腕から先の力を抜いて」

「相手をよく見ろ」

 全て、サークヤが今まで言われていた事だった。

 里に来てからテリオの稽古ではなく、タリオの稽古を受けていたので、そのスピードに徐々に目が慣れて来ていたサークヤは、知らず知らずのうちに更に腕を上げていたのだ。

 そんなスポンジのように吸収していくサークヤを見て更に面白がるタリオだった。

 そんな時に格下の指導をする事は、自分を見つめ直すのに有効である事は良く聞く事だろう。

 サークヤもまた己に対して、基本を見直す事に繋がった。


「よし、今日はここまでにしておこう」

「「「「はい!」」」」

「サークヤはまだこれから、いつもの手合わせだぞ?」

「……え」


 いつもより多くの汗を流す事になるサークヤだった。




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