0-19 稽古は娯楽?
”閉ざされし里”に滞在中のサークヤは、朝の稽古が終わった後は手の足りていない畑を手伝っていた。
と言っても、ほとんどが世話になっているテリオの実家の畑を、だったが。
今日は白菜の収穫。
丸々と太った白菜が畝に沿ってたくさん育っていた。
鍋に煮物に漬物にと万能野菜なので、サークヤも大好きである。
「収穫は皆が食べる分だけだからな、大きなものからにしろよ」
今日は3軒からの要望分だ。
釘を刺されなければ、むやみに引っこ抜くところだった。
里では作る作物の分担を決めて分け合っている。
家ごとに作るよりは、多種の野菜を自給自足するには効率も良いし、必要な事であった。
すぐ隣を見ると、テリオの2人目の甥っ子ナオが丸々とした白菜を二つ抱えてフラフラしていたので、サークヤは思わず白菜の下に手を添える。
「大丈夫かい? 1つ持とうか?」
「うん! 大丈夫! 1人で持ってく!」
フラフラしながらだが、元気よくテリオの弟ハルの元へと白菜を運んで行った。
更に隣の列では、ナオの兄マサがその様子をハラハラしながら見ていた。
サークヤも白菜を3つ抱え込んで籠の方へと運ぶ。
「よし、白菜はこんなもんで良いだろう。昼を食ったら大根と畝作りに分かれよう」
ふぅ、と一息つくサークヤに、マサとナオが近寄って来た。
「ねぇねぇ、オジサンも剣士?」
「おい、ナオ。お兄さんと言っとけ」
お、オジ……
初めてオジサンと言われたサークヤだったが、よくよく考えれば、大学を出て就職していたのだ。
9歳と12歳から見れば、立派なオジサンだ。
「見習いだけどね」
「じゃあ、僕らと同じだ!」
ニカっと笑う二人に釣られて、にっこりと笑い顔を作る複雑な気持ちのサークヤだった。
「ねぇねぇ、朝にお爺ちゃんと稽古しているよねぇ。僕たちも一緒にやっても良い?」
ん~、と考えてから答える。
「お爺ちゃんが良いと言ったら一緒にやろう」
「「やったぁ!」」
喜んで駆け出す二人を見送り、父親のハルに事後報告をしておく。
「そうか。親父の稽古は厳しいけど、大丈夫だろう。まあ、親父が音を上げなければ、だがな」
と、意味深な言葉を言ってきた。
なんだろう? と思いながら白菜が詰められた籠をハルと二人で運ぶサークヤだった。
「なっ」
翌朝、稽古に出たサークヤを待っていたのは、里の子供たち全員だった。
各家二人の計12人が庭先に集まっていたのだ。
上は15歳から下は3歳まで、男の子も女の子もだ。
「なっ!」
続いて出てきたタリオは、どうしてこうなったと頭を抱えた。
しかし、娯楽の無い"閉ざされし里"だ、マサとナオがうっかり自慢してしまえば瞬く間に里中に知れ渡り、この惨状となるのは当然と言える。
「「「「「「「「「「「「おはよ」う」」」ございます」」」」」」」」
「「あ、ああ、おはよう」」
その様子を横目で見て鼻で笑いながら鍬を肩に畑へ向かうテリオ曰く、やっぱりこうなったか、と。
「と、とりあえず素振りから……」
練習用の木刀がある者はそれで、無い者は手頃な棒を持った。
酪家(ホゥスカー分家)の姉妹(15、13歳)は見学だ。
「えっと、こ、こう?」
「「僕も見て!」」
「「僕も!」」
「「わたしも!」」
「ミユも!」
「タッくんも!」
「ああん、わたしも!」
「「……」」
タリオもサークヤもどうして良いか分からなくなり、顔を見合わせて途方に暮れるのだった。




