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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
第一章 道具屋の日常
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1-4 鋳造所と噂話

 今日は本店のヘルプで馬車に乗って郊外まで出てきた。

 この先にある鋳造所までポンプの部品を受け取りにだ。

 馬車は空荷なのでポンポン跳ね快適には程遠いが、穀草地が広がる景色は爽快で馬の機嫌も良さそうだ。


「こんにちは~、ジーニさん」

 手が空くのを待って声を掛ける。

「おう、ケーブんとこの。なんだ今日はお前が来たのか」

「はい、ニコールはどうやら疲れが溜まったのか寝込みまして……」

 ポンプの開発で俺もここまで来て色々と意見を出し合っていたので既に顔なじみだ。

 本店では、新工場のための人材育成に加えて依頼が溜まってしまって、休日返上で悲鳴を上げていた。

 そこに3日に一度運搬をしてた若手のニコール(18)が体調を崩してダウン。

 あまり溜め込むと馬一頭の馬車では運搬が困難になり、二頭立て馬車、四頭立て馬車を手配しなくてはいけなくなる。


 ケーブの所では馬車は持ってなく、本店でもこの一台のみだ。

 馬一頭でも飼育に手間暇お金が掛かるので必要以上には増やせない、馬も高いし。

 取付け業者に取りに来させれば良いので、新工場が出来てもおそらく馬車を増やす事はないだろう。


 ジーニさんはダグロスさんの従弟に当たり、息子さんと切り盛りしており、創業者の親父さんは高齢で引退したものの忙しい時には手伝っている模様。

 血縁という事で秘守義務の心配も少ないし、2代目だが高い技術を持ち、安心して任せられる。

 特にシリンダーやピストン部の精度が高ければ高いほど、後の加工が楽になる。

 本格的な鋳造所は街中では危険なのでどうしても郊外になってしまう。

 他国での話だが、過去には雨季に浸水して大規模な水蒸気爆発の事故があり大惨事となった事があるそうだ。

 職人の間では水分厳禁なのは常識であり最優先事項なのだが、新規参入する業者が偶にそういった事故を起こすので、国が許可制にし規制を厳重にした。

 本店の新工場にも鋳造が出来るように申請を出しているが、街中という事もあり規制により規模はかなり小さくなるとの事。

 今後、新たに造る廉価版の小型ポンプは新工場で作り、今の大型ポンプは引き続き此処にお願いする事になるだろう。

 大型ポンプには装飾を施し高級品とするのも良いかもしれない。


「そういえば、勇者が召還されたって噂を聞いたんだが……」

 充分に冷やされたポンプの本体を馬車に積み終えたころ、ジーニさんが本当なのかと聞いてきた。

「あぁ、そんな噂を街で耳にした事がありますけど……本当かどうかまでは……」

 実際にその噂以上の事を耳にしてないし、確認しようもない。

「まぁ、ワシもそんなのお伽話でしか聞いた事が無かったからな。本当だったら今までのお伽話が事実だったって事になるからなぁ」


 お伽話か……

 俺もサリが娘たちに話し聞かせてたのを横で聞いていたのだが、かなり古くから言い伝わっている話らしく、街で暴れてた竜を召還された勇者が討伐したって話なんだけど、雷を落としたとか空を飛んだとか体が光ってたとか尾ひれはひれが付いたであろうトンデモ話になっていたのだ、ありえねぇ。

 いや、竜は実際いるらしい。

「西の外れの村で、竜に長年ちょっかいを出され続けているって話があるからなぁ、国も歯が立たないからって見放しているってぇ話だ。情けねぇ」

「竜ですか。いるんですね、そんなの」

「なんだ、知らねぇのか。一つの国に3~5頭の群れが一つか二つ居るぞ。おそらく家族なんだろう。悪ささえしなければ国の守護神として祀られるんだがなぁ」


 ジーニさん曰く、竜は一家族で縄張りを持ち、縄張りからは滅多に出ないそうだ。

 非常に長い寿命を持っており、硬く分厚い皮膚も相まってその土地の守り神として崇められているらしい。

 しかし一旦でもそれが牙を剥くと強靭な皮膚、鋭い爪、強力な尻尾で手におえないとの事。

 この国でも初代大統領が軍を送ったが、歯が立たず撤退、有能な初代大統領の唯一の汚点となったそうだ。

 う~ん、どこまで本当なんだろ。

 竜がいるのは確定として、勇者はどうか知らないけど召還かぁ…… 故意に(・・・)出来るのかね、実際問題として。


 そんな話や新工場の話題をしたあと、のんびりと帰路に就いた。

 本店にたどり着く頃には、機嫌の良かった筈の馬が息を切らしていた。





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