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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-8 薬草採りと畑仕事

「やっぱ、タンナさんの握り飯は美味いな」

「う~ん、ここの米は絶品ね。分けて貰えるほどの量が無いのが残念ね」

「二人とも、はよう食って代わってちょおすか」


 3人は既に充分な量の薬草を採り、村人の分や山の幸まで採集していた。

 誰も入れなかったので、大漁であった。

 当然、熊の情報があったので、3人のうち一人が見張り、あとの二人が採集する形でだ。

 もちろん昼食時でも見張りは必要なので、それまで夢中で薬草の採集をしていたタークが見張りをしている。

「熊はまだ遭遇してないな。所々で餌を漁ってる痕や糞はあったが」

「そうやの、すんと会う思うとったのに、まんだ会わせんとは」

「この辺りでしょ? 見たって言うのは。でもこの辺はエサがもうないから余所へ行ったのかしら」

 我慢できなくなったタークがおにぎりを一つ出して頬張る。

「う~ん、うみゃあ、うみゃあて」

 と言いながら警戒に戻ろうとした時だった。


「おい! あれ、小熊じゃないか!!」

「げほげほ!」

 一同がサッと戦闘態勢に移る。

 小熊の近くには親熊がいるものと見た方が良い。

 辺りを見る。

 小熊が3頭、向こうの方でヒョコヒョコと動いている他は動くものは見当たらない。

「おかしい。親熊が見当たらない」

「どないしゃあす?」

「近付いて討つか、離れるか、ね」

 難しい判断だ。

 近くに親熊がいれば、小熊に近付いただけで親熊は錯乱状態で襲ってくるかもしれない。

 このまま放置すれば、小熊も大きくなり近くの村まで下りてくる可能性もある。

 日本ではない異世界だから、保護しろ等の考えも湧かない。


「討っておこう。村に下りてきたら事だ。親熊がいないか警戒は厳にな」

 こうして小熊の討伐は行われた。

 保護団体等からの抗議なんて来ても知らない、受け付けない。

 異世界の話だから、なんてったってフィクションなんだから。

 3人は小熊の討伐を終え、周囲を警戒する。

「おかしい。親熊がいないぞ?」

「そうだなも。まんだおらへんって、おかしゅうわ」

「小熊に与えるエサを探しに行ってるのかしら。どちらにしてもこのままにして下りられないわよね?」

 さてどうするか。

 考え込む3人。


「熊が村の方面に下りている可能性は?」

「考えたくはないけど、無い事もないわね」

「おそがい事言わやーすな。山に登ってるかもしれせんがや」

「……2つに分かれるか。ここで迎え討つのと、村の様子を見にいくのとで」

「余所の村に行ったって事はこの際考えない方が良いわね、キリが無いし」

「ほんなら、2つに分かれて”音玉”で知らしゃあええか」

「そうね、何かあれば”音玉”で知らせて、何もなければ日暮れまでに村に戻ると」

「それじゃあ、俺が残るか。2人は村へ向かってくれ」

 3人はそれぞれで行動を開始する。



 ― * ― * ― * ― * ― * ― * ―



 その頃、村では昼食を済ませた村人たちが、畑で汗を流していた。

 もちろん、サークヤもである。

 土を掘り、畝を立て、種を蒔く。

 それを続ける。

 良い天気なので日差しが暑いが、爽やかな風が吹いておりさほど苦痛でもない。


 ふと気が付くと、坂の上の方が騒がしくなった。

 ん? 何だろうとサークヤが見上げる。

 何人かの鍬を構えた男衆と、下へ叫びながら走ってくる女衆。

 その男衆の先に黒く大きな影。


 熊だ!

 サークヤが見間違える事は無い。

 何故なら、この世界に来てすぐに遭遇し、襲われそうになったのだから。

 サークヤは一瞬硬直した。

 トラウマが心配されたが、次の瞬間には走り出していた。

 剣は小屋に置いてきてしまっているので取りに行かねばならない。

 まだ膠着状態であるが、男衆が鍬で威嚇している。

 それは悪手ではないか、そんな事を想いながら、我が相棒を取りに走る。

 そのまま、下手に手を出さないでいてくれ。

 そう思いながら、サークヤは必死に走った。

 幸い、この1か月近くで足腰は鍛えられた。

 ちょっとやそっとじゃ息も切れなくなった。


 小屋に戻ったサークヤは相棒の剣をギュッと握り、男衆の元までひたすら駆け登るのだった。




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