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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-6 逸る気持ち

「ほら、それじゃ当たらないぞ。もっと相手を引き付けろ。よく見るんだ!」


「くっ!」

 サークヤは絶賛スパルタ教育中だ。

 相手は狸。

 初心者にはこの辺りが無難だろうか。

 その判断でテリオにノルマを与えられたのだが、これがなかなか難しい。

 当然、相手も必死で逃げるわ攻撃するわで、四苦八苦していた。

「ほら、また力が入ってる! 力むと動きが悪くなるぞ!」

「ほれ、そこ。ああ、あかん、あんばいようやらんと! もう一歩踏み込みゃあ!」

「右に回り込んで! そうそこっ! サークヤ、頑張って!」

「「「やった!!」」」


 10分以上掛かって狸一匹を仕留めた。

「まだまだだな」

「えらい、えらい。ようやった」

「まあ、初めてだって言うからよくやった方でしょうね」

「逃がさなかっただけ良し、か」

 ぐったりと疲れ果てて、その場に座り込むサークヤであった。


 初めての獲物は旨かった。

 自分で狩った獲物と思えば尚更だ。

 捌き方は、まだ見て覚えている段階だ。

 次の獲物で、実際に捌くのを手解きして貰う予定だ。

 今まで生温い世界で生きて来たのだ、この位のペースでないと頭が混乱する。

 のだが、それではやっぱり生温いのだ。

 今はそういう(・・・・)世界にいるのだから。


 稽古は毎朝の日課として励んだ

 高校で引退してからずっと、稽古は素振りをしたりしなかったりで、感も腕も鈍っている。

 それを取り戻すのは並大抵では難しい。

 そんなサークヤに、テリオは毎朝付き合った。

 剣道では当然相手は人である。

 今では人が相手である事は少ない。

 相手は獣、大きさも大小様々なのだ。

 しかも、剣道はルールのあるスポーツ、今必要なのは殺し合いの技である。

 これは、大きな差と言うより別物なのだ。

 だからこそ、狸一匹にもあれだけ手こずってしまったのだ。

 今は、ただ剣の振り方のひとつを知っているだけの素人(・・)なのである。


 その事は、狸を相手にし重々承知したサークヤだったので、テリオの指導を素直過ぎる位に聞いていた。

 毎朝、毎朝、サークヤは剣を振るう。

 そして徐々にだが、獣狩りにも慣れてくる。

 慣れれば、勢いよく獣に突っ込んで行けるようになるのだが、勢い余って怪我にも繋がる。


「いかんて、サークヤ。こんなしょーもにゃあ怪我をこさえよって」

「怖れなくなったのは良いんだけどねぇ」

「相手や回りをよく見てない証拠だ。注意力が足りん!」

「すみません……」

「俺たちがいるからと安心し過ぎだ。助けに入れない状況だってあるんだぞ」

「まあ、向上心があるのは良いんだけどねぇ。ちょっと焦りもあるんじゃないの?」


「焦り……ですか。そう……なのかも」

 実際にサークヤは焦っていた。

 徐々に腕は上がっているのだが、もしこのまま一人になってしまったら、と心の奥に危惧心を持っていた。

 事実、何かしらのアクシデントがあれば、離ればなれになってしまう可能性は十分ある。

 その時、自分は生き残る事が出来るのか。

 他の三人は何とかしてしまうだろうが、自分は……。

 まだまだ力不足は明らかだ。

 三人に付いていくのもやっとである。

 いや、むしろ簡単に進める道を使って進んでいる。

 三人は別の道なき道を進むつもりだったのだ。

「焦るなよ? まだ出会ってからひと月も経ってないんだ。まだこれから伸びるだろう」

「そうよ。剣の腕は何年も掛けて伸びていくものだから」

「焦っちゃいかんで。焦っちゃ命のうなるでなも」


 随分と北に進んだように思う。

 途中、数度の滞在を経て、出発から20日を過ぎ、約1ヶ月経っていた。

 4日に一度を目安に休息日を設けて進んでいた。

 やる時はやり、休む時は休む、宿場町があれば野営をせずにそこで休む。

 旅を続けている彼らのノウハウである。

 余所の人達の事は知らない。

 一日の進む距離を落とせば良いようにも思うが、それが彼らのやり方であった。

「目的の山が見えて来たぞ。今夜はこの先の村に寄ろう」


 そう、サークヤの今の実力は、この村で垣間見える事になる。






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『カースブレイカー』シリーズ
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