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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
第一章 道具屋の日常
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1-2 本店へのお使い

 翌日の午後、俺は荷車を牽いてケーブの実家の本店へと向かった。


「こんにちは~」

「おう、なんだ、ユーキか」

「ダグロスさん、頼まれてた部品持ってきました。あと、お願いしてた部品って出来てます?」

「おう、できてるぞ。荷車を奥へ入れな」

 答えてくれたのはここの店主でケーブの親父さんであるダグロス・ド・サグリー。

「お前んとこは早いから助かるわ。サーリャやミーリャは元気か?」

 あ、ここにもいた。孫娘中毒者。


 ティナンプート、通称ティナ、この国テインバークの首都であり、その中でも上流階級区内に店を構える、それなりに名の通った道具屋サリオーレがダグロスさんの店であり、ケーブさんの実家である。


「もちろん、二人とも元気いっぱいですよ!」

「おう、そうかそうか、帰りに土産を持たせるから忘れるなよ!」

 うっ! 毎回量が多すぎてサリさんが困ってんだよな、隠し場所に。

 子供たちだけでなくケーブからも隠さないといけないから。


「おっユーキ、部品を持ってきてくれたのか。そこへ降ろしてくれ」

 作業場で声を掛けてきたのはケーブの兄のザニスさん。

 副店長兼工長で二児の父だ。

 美人な奥さん捕まえやがって裏山。


「そういえば液体石鹸の小型揚水機(ポンプ)作ったのって、ザニスさんですか?」

「ああ、お前さんの(・・・・・)井戸揚水機(ポンプ)を真似てみたんだけど、良い感じだろ」

 俺は指摘しなければならない事に心の中でため息を吐く。

「実際に使ってみました? あれは欠陥品ですよ」

「ええっ! ちゃんと使えたぞ? 何が悪いんだ?」

「あれだと勢いよく上に吹き出します、目に向かって」

「いや、そりゃ使い方」「ダメですっ!!」

 俺はザニスさんに危険性を説き、形を変えて出口を横に向けるように進言した。


「そもそも何故球状にしたんですか?」

「その方が美しくて高級感があるだろ」

「いや、美術品を作ってるんじゃないですから! それにあれを加工するのにどれだけ時間を掛けるつもりですかこの忙しい時に!!」

「ううっ……」

「あれは結構時間を取られましたからね、ユーキの言う形状にすれば工程は増えるけど時間短縮にはなるだろうし」

 荷降ろしを終わらせた職人のテニーさんが横から意見を言う。

「ザニスは余分な事にこだわり過ぎるんだ。新しい工場では人を増やして指示しなければならない立場って事を自覚して欲しいものだ」

 後ろからダグロスさんがザニスさんに駄目出しをした。


「ところでユーキ。井戸揚水機なんだが、上流階級区からだけでなく一般階級区からも注文が増えてきたぞ」

「ええっ! そんな安い物でもないのに? また部品を作って来ないと!」

「工場の建造を急いで貰わないと間に合わなくなるな」

 首都(ティナ)以外からの発注も予想出来るだけに、ダグロスさんがうんざりした顔で言う。

 引退がまた遠退いたね、ダグロスさん。


 この井戸揚水機、どこも紐を括った桶で手汲みだったので、俺が提案をして半年程前に実用品として完成、売り出し始めたところ、大ヒット。

 本店だけでは製作が間に合わず、ケーブのところや他の同業にまで外注に出している程。

 設置業者への指導も時々俺が行っている。

 ちなみに試作品は本店と支店であるケーブのところで使っているが、問題もなく快適に使用している。

 子供が井戸に落ちる危険も無くなり、大好評なのである。


 話が逸れたが、ポンプの他にも店先で承った依頼品の製作も合間に挟まなければならないので、ぶっちゃけ液体石鹸のポンプなんて作ってる場合じゃないのだ。

 下手すると余所に真似されてせっかくの商機を逃しかねない。 

 "欠陥品"として一旦店頭から引き揚げた方が良いかも。

 そんな事を話し合って受け取るべき部品と次に納めるべき材料を荷車に載せ、本店を後にした。


 もちろん、おみやげは忘れてませんよ、おこぼれに期待!




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