3-2 剣の実力は?
俺は悶々としながら溜まった仕事をこなしていた。
あまり悪く考えないように、とは思ってももしかしてと思ってしまうと、やっぱり悪く考えてしまう。
先日のサリさんの話。
”ポキポキと”……どれだけ硬いんだよ竜の皮膚って!
当時の鋳造技術って、今と比べてどうだったんだろう?
って、そうか!
ジーニさんの鋳造所で親爺さんに聞けば良いんだ!
次に鋳造所に行く機会は……無いよ今の所。
ううう、こんな時に限って用事が無いとは。
先日、本店の新工場の鋳造施設も無事に稼働し始めたし、ジーニさんの所へは新人さんに行かせているから、本当に行く機会が減ったんだよなぁ。
はぁぁぁ、休みの日にでも行くかぁ。
そう考えつつ、俺は次の仕事の材料を取り出した。
アイーナさんから受注している杖の部品作りに取り掛かるためだ。
2本目なので寸法等は把握できている。
寸法を管理する工具も捨てずに残してあるので手間は格段に減っている。
加工で失敗さえしなければ、それだけ装飾に時間が掛けられるのだ。
「ケーブさーん、新工場に行ってきまーす」
「おう、杖の加工か。よろしく頼むわ。余計な仕事をもらってくるなよ?」
「分かってますって!」
そんなん、俺も願い下げである。
材料と工具を持って新工場へと向かう。
借りるのは電動化された旋盤である。
ウチにも旋盤はあるが、人力なのでかなりの時間を要するのだ。
この電動化に当たってはある部品を提供しているので借りる事が出来るのだ。
その部品とは、”ころ軸受”だ。
俺がケーブさんに拾われ首都に来て、井戸ポンプを提案した時、それを作る工作設備が必要となって、その過程でこの”ころ軸受”を提案して作ったんだよな。
それまではすべり軸受けしかなかった様なので”玉軸受”を作ろうとしたけど、精度の良い玉を作るのはどうしても出来なくて断念したんだよね。
鉄工業がまだまだ発達してないので、たぶん出来るのはずっと先だろう。
それにまだ、これらは消耗品の域を脱してない。
今後の課題は、これらの強度を上げる事、耐久性アップだ。
造った設備はボール盤や旋盤、フライス盤だったが、今までは動力が無いので人力(足踏み)だった。
当然力が無いので重切削は無理、仕上げに使う程度だったから大変だ。
なので井戸ポンプは鋳造時の出来が製品となるかどうかの肝だった。
ジーニさんところの鋳造技術が最高に生かされたのだ。
この”ころ軸受”の製造で得たノウハウが、あのアイーナーさんの依頼品の丸棒に生かされていたのだ。
そりゃ精度は抜群だろう、何に使っているか未だに聞いてないが。
聞けるのかな?
「ほぉ~、そんな事があったのか」
俺は竜討伐の話と武器の話をザニスさんに話して相談した。
じきに公表されるであろう話なので、ここで口にしても問題ないだろう。
「ええ、あのまま俺たちの作った武器を使って竜と対峙していたら、果たして竜を討てたのか……って」
「ふむ、ウチの爺さんも、その時の武器製造には絡んでいたらしいが、酷く落ち込んでいたらしいな」
当時、関わった人たちで生きている人は少ない。
50年前なのだ、当たり前だ。
ジーニさんの親爺さんは既に生き字引と化している。
「当時と比べて、今の技術って良くなってるんですかね」
「ああ、鋳造技術か。良くはなってるが、それが竜を討ち倒せる程かってのは怪しいだろうな」
「やっぱり……」
「お前さんが発案した剣なら大丈夫だとも言い切れないが、実際はやってみなくちゃ分からないって事よ」
「じゃぁ、今回討伐されたのって、どんな方法だったんでしょうね」
「うーん、それはやった本人に聞く方が早いだろうな。誰かは知らないが」
ですよね~。
「でも、剣の強度を確認する事は出来るかもしれない」
「えっ! どうやって?」
ザニスさん曰く、当時の剣が折れるくらいの対象物に、今回の剣をぶつければ良いと。
うわー、乱暴なやり方!
でも、それもアリか。
やらせてもらえるのかは分からないけど。
話の後、杖の加工をさっさとして、余計な仕事を貰わない内に帰路へとつくのだった。
おかしい。
ノープランだったのに安産だった。




