2-4 やる気スイッチ
道具屋たちが会議室に来てから更に数日経った頃、その道具屋たちが再び来た、武器を持って。
あいつは来ないのかな?
隊員たちが持ち込まれた武器を手に、ワイワイとやってるけど、オレたちが使える武器は無さそうだな。
ふんっ!
訓練なんてやってられっか!
オレはシンジとミカを誘ってサボリを決め込んだ。
「なぁ、あいつら、本当に竜の討伐に行くつもりかな?」
ちょっと不安になってきた。
「どうしたんだ、ショーマ。行くから俺達を呼び寄せて訓練までしてるんだろ?」
「まぁ、そうなんだがな。実感が湧かないというか……」
「あぁ、分かるわ。アタイたちが未知の生物相手に戦うなんて、ほんの2、3週間前には考えられなかったもの」
そうなんだよな、本当なら未だに進路でウダウダしながら学校に通っていたんだ。
んで、暇があれば喧嘩相手を探して町中をうろついてたんだよな。
ソレが何だ。
突然、見知らぬ場所に飛ばされて有無を言わさず竜討伐に駆り出されるって!
訳が分からないよ!
そうやって壁際でウダウダしてたら、例の奴が来た。
黒髪の奴だ。
顔立ちは日本人のようにも見えるんだが、召喚に成功したのは、オレたちが初めてだとオッサンたちから聞いていた。
じゃあ、アイツは何だ?
シンジたちは気にしてないみたいだけど、オレは奴が日本人じゃないかって疑っている。
でも召喚はオレたちが初めて。
周りが違うと言っているんだ。
分からない。
そうウダウダと思考を巡らしていると、信じられない光景が目に飛び込んで来た。
奴がもう一人と持って来た武器は、今までの物どころか、他の道具屋が持って来た武器より明らかに鋭かった。
同じカタチをしていて、何故あれほどの性能差が出るんだ?
理解が出来ない。
知らない内にオレたちも立ち上がって、その集団の中に引き寄せられていた。
すると、オレたちに気が付いた黒髪がもう一人に声を掛けて、オレたちの武器を渡して来た。
おいおい。
何だよコレは!
カッコ良すぎんだろ!
まるでハリウッド映画とか某世紀末のアニメに出てくる武器のようじゃないか!
それを現実の物として、更に言えば俺たちの武器として!
シンジなんて感動までしてやがる。
奴は何なんだ?
黒髪だから気になってたんじゃなくて、何か別の、引き込まれるものでも持っているというのか?
それに、あのキレっキレの武器を見た瞬間からオッサンどもはおろか、道具屋の連中の顔つきが変わったのが分かった。
明らかに雰囲気が変わった。
何より目付きが変わった。
やるぞ、やってやろうじゃないか! って意気込みが嫌というほど伝わってきやがる。
どうなってるんだ。
奴が現れてからだ、皆が変わったのは。
それまでもピリピリした空気は伝わってきていた。
これで良いのか、これでは駄目なのか、もっと出来る事はないのか。
そんな切羽詰まった空気だ。
それがどうだ。
いつの間にか、コレだ!求めていたのはコレなんだ!という空気に変わっていた。
そりゃそうだろう。
あれだけの性能を見せたんだ、アツくもなる。
それは分かる、分かるんだが。
何故、オレたちもアツくなっているんだ?
ハッキリ分かる!
隣に並ぶ二人からの熱いモノが!
今まで感じたことのなかった闘志が!
ついさっきまで隠しもせず不安を顔に出していたじゃないか!
なんだってこんなに感化されてるんだ?
何なんだ、コイツはっ!
分からない。
分からない。
分からない。
分からない事だらけだ。
オレは奴に声も掛けられないまま、今まで嫌々だった訓練に、自ら勤しむのだった。
再びショーマ目線でした。




