1-16 道具屋の日常
本店の新工場が稼働を始めた。
工場長にはダグロスさんの息子のザニスさん、受付窓口に奥さんのミリーさん。
工場作業員は本店にいたダムスさん、ダグさんの二人を含む10人体制となる。
新人さんたちは事前に本店で研修を受けていたとはいえ、新しい施設に新しい設備、新しい道具では、すんなりと立ち上げる事は出来ないであろう。
因みにサニスさんの家のすぐ近くである。
ケーブさんの店からも本店からも近く、アクセスが良いから何かあっても協力できるだろう。
新工場の場所は上流階級区内だが、過去に水害で浸水した事のある川べりの地区で、ずいぶん昔の話にも拘らず不人気だったため、格安で土地が手に入ったそうだ。
そんな場所なので上流階級区にもかかわらず、小さいながら鋳造施設(反射炉)の認可が下りた訳なのだ。
当然、大雨で水に浸からないように、盛り土をし対策は万全である。
周囲にもこうした対策をしている家はあるが、それらよりも更に高くしてある。
本店にはダグラスさんとテニーさん、ニコールが残り、店番には新人のケリーさん(人妻)を雇い入れ4人体制となった。
暫くの間は混乱するだろうから、もしかしたら仕事が回ってくるかもしれないが、此方も今は仕事が溜まってしまっているので充てにはしないで欲しいところ。
その時は以前協力してもらっていた道具屋連合にお願いする事にしよう。
助けてもらってばかりだが、此方も技術提供しているのでお互い様って事で許して欲しい。
落ち着くまでは新しい事には手を出さないようにするとの事で、小型鋳造施設の稼働は少し先になるそうだ、残念。
ジーニさんの鋳造所までは頻繁に行くには遠いので、近場で対応できるようになるのは助かる。
早く稼働しないかな、楽しみだ。
竜の討伐隊も先日、目的地へと出発した。
パレード等はせず、人知れずの出発だった。
俺たち道具屋連合は前日に壮行会を兼ねて軍施設に訪問した。
武器は皆に好評で熟練度も上がっていた。
勇者一行も”勇者グッズ”を使いこなしており、亀の甲羅を割るくらいには戦力になっていた。
出発した一行は、途中訓練を兼ねて害のある大型動物を狩りながら行くので、早ければ15日程で行けるところ、倍の30日程掛けて行くそうだ。
勇者たちが実戦を経験していないが為の措置だった。
頼むから目的地に辿り着く前に命を落とすような事しないでくれよ。
ケーブさんの店は再開直後の混乱は収まったものの、依然、依頼が減る事はなく、人を雇い入れる事を検討しだすありさまだった。
どうやら軍からの依頼を受けた件が噂で流れているらしく、新規のお客さんも少なくない人数が来るようになっていた。
今から人を雇い入れるとなると育成に時間を取られるなぁ。
再開後、アイーダさん、ラーナさんも時々来るようになった。
どこで聞いたのか、期間のあいだ、依頼を控えてくれていたようだ。
細々した物の注文の他に、以前制作した杖をもう一本作って欲しいとの事だ。
安くない物なのに…… 一体どんな仕事なんだろう。
そんな日常が目まぐるしく過ぎ去って、間もなく討伐隊が現地に着くであろう頃に、首都へと天地をひっくり返すような意外な一報が入ったのだった。
良い所ですが、次から第二章です。




