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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
第一章 道具屋の日常
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1-10 依頼を考える

 ケーブさんと、軍からの依頼を改めて確認する。


 竜と戦う為の武器を提案しろ。

 期限は7日。

 剣、槍、弓を5セット、2~3種類の飛び道具の提案物を5セットづつ、勇者指定の物は2セットづつが製作数。

 製作に費やせる期間は30日。


 うわ~。なんてブラック臭漂う依頼なんだ。

 丸投げだよ、丸投げ。

 それに……

「これ、色々とヤバいですよ。この数を30日で作れなんて。竜の情報が古くて少ない。通常の武器でもこの数は多い方なのに、対竜武器だなんて試行錯誤しながらの製作だろうから、出来ても30日ではせいぜい1セットづつでしょう。討伐に失敗したら武器のせいにされ兼ねないし。それを事前に提案して見積れなんて」

 頭を整理しながら益々不可能だと認識する。


「まぁ、そうだな。時間が少なすぎる。他の依頼を止めたところで、まず無理だろう」

「数はおそらく予備を含んでいるでしょうね、勇者用が2セットづつだし。提案はするとして、余所と分担での合同製作が無難でしょう」

「問題は武器の内容か。竜に有効な武器なんて想像できないんだが」

「俺だってそうですよ。何ですか、この竜の情報の少なさ」


 竜に関する資料はたった1枚だった。




 竜

 1・各国に1ないし2の群れがあり、それぞれ4~5頭である。

 2・体長は小さい個体で2m、大きい個体では3.5mくらいあり、翼を広げると幅は10mくらいになる。

 3・体は鱗、翼は羽根に覆われ、皮膚は厚く非常に硬い。寿命は500年とも1000年とも言われている。

 4・本来、竜は温厚であり、縄張りから出る事は少ない。陸でも空でも活動する。

 5・竜の武器は鋭い手の爪と、尻尾での打撃である。

 6・50年前に軍から討伐隊が向かったが、撤退。

 7・今回の討伐対象は50年前に討ち逃した個体と思われる。




 二人で軍の資料を見るが余りにも少なさ過ぎる情報量だった。

 おそらく食物連鎖の頂点にして絶命危惧種である。

 一応動物扱いなのは、火も吐かなければ魔法も放たないからなのか、他の括りの発想が無かったのか……

 そもそもこの世界には魔法のようなものはなさそうだ。

 国に数人と言われてる術者と呼ばれる人々がいるが、魔法陣のようなものを書いて土壌改良等が出来るのが精々だそう。


 それにしても軍も自分たちの失態をぶっちゃけたな。

 ケーブさんによると、50年前、縄張り近くの村にちょっかいを出していた竜に、初代大頭領の命で軍から討伐隊を派遣。

 しかし、持って行った通常の武器では全く歯が立たず、多くの怪我人を出して撤退したという。

 当時、初代大頭領が失脚する切っ掛けとなった有名な話だった。

 知らなかったよ。

 初代大頭領も20年続いたので、いつ交代劇があってもおかしくはなかったそうだが、唯一の汚点を残す事となった大事件だったのだ。

 今では触らぬ神に祟りなしと、村には被害額に少し色をつけた補填金を毎年払っているそうだ。

 今までは不思議と人的被害はなかったとの事。


「今の武器って、当時の物と大して変わらないんだよ。竜以外になら十分だから」

「ええっ! 何も対策されてないんですか?」

「当時でも最先端の剣を使って歯が立たなかったらしい。それから新たな技術が出てきてないんだよ」

「一度その剣を見てみたいですね」

「それなら上の倉庫に一本あった筈だ。ここに入る時に本店からくすねてきたからな」

 何やってんの、ケーブさん!!


 改めて見ると西洋風の両刃剣だった。

 錆ひとつ無いそれは、悪くはないけど特別凄そうでもないように見える。

 装飾がそれなりにされているところを見ると、実戦(戦争)が前提と言うよりは抑止力に重きをおいているようだ。

 更に紐解くと、当時ジーニさんの親父さんが、弟子入りしていた鋳造所で鋳造されたらしい。

 その時のノウハウを持って独立し、鋳造所を開いたそうだ。

 ……世間って狭いね~。


 これを見る限りでは槍等も鋳造品から作られているのではと想像に難くない。

 今回は数もあれば時間も限られるので、鋳造品をベースに考えていくしか無いだろう。


「まぁ、そういう方向性でいくしか無いだろうな。ところで、防具の話が出なかったが、どう考える?」

「防具ですか。竜の攻撃は強力だと言ってましたから、それを無理して受けるより、身軽にして避けた方が良いと判断したんだと思います。俺もそう考えますし、それに……」

「それに?」

「50年前は怪我人は出たけど死者は出なかったんですよね。村にも人的被害は出てないっていうし、明らかに手加減されてますよ、それ。万一強固な守りを携えて行って、手加減が必用無いなんて思われでもしたら……」

 二人で青い顔をする。


 果たして竜を討伐なんて出来るのだろうか。

 不安が増すばかりだ。




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『カースブレイカー』シリーズ
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