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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
第一章 道具屋の日常
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1-9 癒しの湯

 軍からの依頼を頭の隅に置き、先に溜まってた仕事をこなす。

 一区切り付いたところで、ケーブさんも俺も身体が悲鳴を上げている事に気が付いた。

 このままの状態で難題に掛かっても良い案が浮かぶ筈もないので、ケーブさんと話し合って皆で郊外の温泉地に行く事にした。


 温泉ですよ温泉、銭湯じゃなくて!


 帰る時間が遅くなりそうだったので、先に夕食を食べに店に入った。

 チビッ子姉妹は美味しそうによく食べる。

 食べ過ぎる事はないので安心だ、ダイエットが~とか言わないで欲しい。

 ゴチです、ケーブさん。


 温泉まで、腹ごなしに丁度良い距離を歩く事が出来たので、気分よく施設に入ると……

 っっっ!!!

「あら、アイーナさん、ラーナさん。珍しい所でお会いしましたね」

「「サリさん! それに皆さん。こんばんは。サーちゃんミーちゃん、こんばんは♪」」

 そこには頬をピンク色に染めた美人二人が立っていたのだ!

 ふおおおおおお!!! 「湯上がり美人・・・」

 あ、声に出ちゃった。

 二人とも顔を真っ赤にして俯く姿も美しいっ!!!

 来てヨカッタ!

「奇遇ですね、こんな所で会うとは」

 あ、ケーブさんにセリフ奪われた!

「え、ええ。今日は仕事がこちらの方で、現地解散だったので。今出たところでこの後、食事してのんびりしてから帰ろうかと」

「あら、じゃあ入れ違いね、残念」

「ざんねーん」「ざーんねーん」

 うん、会えただけでもラッキーです。

 残念だけど、仕方ない。


 そうだ。

「例の杖、あとは仕上げのみなので、明日の夕方以降であればお渡し出来ますよ」

「え、そうなんですか? 思ったより早いですね」

「明日なら書類仕事だけなので取りに伺います」

「はい。お待ちしております」

「ところで、ええと、感想なんかをいただけばと思うのですが……」

「う~ん、見てからのお楽しみということで良いですか、ラーナさん」

「ちっがーーーーう!」

「え? え? え?」

「あらまぁ、うふふふふ」

 あれ? 杖の話じゃないのか? また何か間違えてしまった?


 二人と別れ、男湯と女湯に別れようとしたところで、子供たちがどちらに入るか揉めた、ケーブさんが。

 これにはケーブさん以外全員反対。

 いくらなんでも男湯に入れる訳にはいかない、余所の人の目もあるんだし。

 ガックリと項垂れて入っていくケーブさんからは哀愁が漂っていた。

 放っておいたのは間違ってない、断言する。


 子供たち同伴なので長湯しないよう程々で上がり、少し休憩してから帰途に付くと、すぐ前を二人が歩いていた。

 話を聞けば近所だった事が判明、一緒に帰る事にした。

 子供たちは既にケーブさんと俺の腕の中で寝息を立てていた。可愛い。



 ・



 翌日の夕方、予告通りに受け取りに来た二人は、出来上がった杖を見て驚いていた。

 ふふふ、二人で食い入る様に見る様がなんか可愛い。


 今回、杖を焼嵌めするに当たり、頭部分に空気抜きの穴を開けるわけにいかなかったので、軸側に溝を入れ、ついでにキー溝も掘って柄の回り止めとした。

 更に言えば、急冷したので頭の部分には焼きが入っている。

 これで人は殴らないで欲しい。

 要望にはなかったが、なんとなくやっておいた方が良いと思ったからである。

 因みに持ち込みの中にあった鉱石を、杖の頭部に埋め込むのは焼き戻し行程で行ったが、熱影響が心配された。

 結果は問題なし。

 何の鉱石か知らないけど、高価なモノだってことは分かる。


 そんな工程の説明をしたところで、女性陣にはちんぷんかんぷんな話だった。

 残念。

 試しに引っ張ったり振り回したりして確認してもらう。

 男の力でびくともしないのだから女性の力でどうとなるものではないのだが。

 金属部分の装飾加工も問題ないであろうとの事。

 ここは実際に使ってみなくては分からない部分だそうだが、経験上素晴らしい仕事をしてくれるだろうと太鼓判を押された。


 一体何の仕事でどんな使い方をするのやら、怖くて聞けませんでしたチキンでごめんなさい。







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『カースブレイカー』シリーズ
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