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願うのは笑顔  作者:
第2章 第1節【イージス学園小等部入学】
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今までのことこれからのこと


 あれこれ考えていたら思ったよりも時間が流れていたらしい。周りの生徒を見ると疲れきった顔をしているし、壇上から下りる学園長はとても誇らしげだ。

 

 隣のジークは問題なさそうだけどレペテの顔色は青いを通り越してもはや土色で、時計がないからわからないけど、一体どれくらい時間が経ったんだろうか。

 

 「…レペテ?」

 「うぅ、朝ごはん」

 

 まだ朝食の絶望から抜けられていないレペテの手を取り立ち上がらせる。この先やって行けるかとても不安になる様子だ。

 

 「そんなに引きずるもんでもないだろ、大袈裟な」

 「ジーク様って…実は舌が馬鹿だったんですか? 味覚音痴ですか?」

 「…」

 「ひっ」

 

 ジークの味覚を疑った結果貰ったのは冷たい眼差しだったレペテは肩を震わせ私の体に隠れる。

 「私は悪くない!」

 「レペテ、口調崩れているわよ」

 「私は悪くありません!!」

 

 はっと口を押さえたあと言い直すレペテに勝手に気が緩む。うん、頑張ってるなぁ。

 

 既に未来は変わりつつある。ジークは独りじゃなくて、レペテはジークの部下ではない。

 

 それが嬉しいと同時に怖いのは仕方ない。

 

 「サーレ?」

 「ジーク、私も強くなるから」

 

 ジークが作ってくれるご飯を原動力にして、もっとずっと強くなる。ご飯から魔力の強化が出来ないのはどれくらい差が出るかは分からない。

 

 でもジークがそうして欲しいと思うのなら私はそうしよう。他の強くなる術を見つけて、それで強くなろう。

 

 「…俺の方が強くなるから」

 ぎゅっといつの間にか左手を取られ握られた。辛そうに寄せられたその眉間の皺に、出かけた問いが掻き消える。

 

 ジークと私に上も下もない。身分差はあるけれど、それだけで、私はずっとジークに伝えるようにしていた。

 

 私とジークは対等だと。でも最近のジークは私よりも前で居たがる。歩く時も少し私よりも前に。私を下に見ていたりする訳では無い。ないんだけれど。

 

 「ジーク、一緒にゆっくり頑張りましょう?」

 「…そう、だな」

 

 ふと、隣を見てもジークがいないことが寂しく感じる。ずっと一緒に居たから甘えてしまっているのかな。

 

 ジークが焦っているのは私のせいだと分かってる。レヴェルと知り合うきっかけだったパーティー前にも気にしていた。

 

 “忌み子”

 “悪魔の子”

 

 この世界では書かれない、ただアルビノであるというだけなのに。こんなに傷つけられて、足掻く必要がある。

 

 それでも。

 

 それでもちゃんと先は変わっている。

 

 これからだって変えていく。ここはゲームの中ではないけれど、ゲームの中の知識は役に立つ。転生してから時間が経つにつれて昔のことは思い出せなくなってきていて、今になり思い出せることを書きまとめてみて唖然とした。

 

 ──────細かいことが思い出せないでいる。さっきの選択肢の答えのように。何度もプレイしたゲームなのに。

 

 「あ、クラス分けの表らしいですよ!」


 レペテが興味深そうな声をあげる。それにつられて、視線を上げた。二人と歩いていて自然とこの場に進んでいたらしい。

 

 「クラス…」

 名前を探すと私とレペテはAクラス、ジークはCクラスだった。

 

 「別れちゃったわね…」

 ぐっとお腹に力を入れる。大丈夫。きっとジークはもう私から離れても大丈夫。

 

 「……あいつも同じか」

 「え?」

 

 ジークのつぶやきの答えを名簿に探す。

 リトもCクラスで、レヴェルは原作通りにAクラス、それが気に食わないのか顔を(しか)めたジークに笑みがこぼれた。

 

 「どうした?」

 「心配?」

 「…いや、心配はしていない…何かあったら呼んでくれ、すぐ行く」

 

 少しだけ苦々しい表情を浮かべるジークはそう言って自然と引いていた私の手を離した。

 

 「サーレ」

 「?」

 「俺はサーレが自由に生きれているならそれでいいんだ、深く考えず思うとおりにしてくれ」

 

 どうせまた考えすぎているんだろう、とジークが私の頭を撫でる。自然と頭に浮かぶのはあのパーティーの中でジークにした質問の返答だった。

 

 

 “俺は自分のことを勝手に決められるより自分で決める方がいい”

 

 ジークは、決めた。

 私から魔力が上がるご飯を取上げて自分は魔力を強くすることを。

 自分で考えて、そうした。

 

 

 初めてジークに出会った頃も思い出す。薄汚れて、全てに絶望し、理不尽な暴力をただ受け入れているだけの子供だった彼が。

 

 一番変わったのはジークなんだなと涙が出そうになるのを目に力を入れて堪える。

 

 でも、まだだ。

 

 ジークはまだ、“忌み子”、“悪魔の子”だと言われていることに慣れている。仕方ないことだと、私たちが分かってればいいのだと。私たちを置いてCクラスに進む背中も昔よりずっと大きいけれど、まだ子供だ。

 

 「リトも一緒だし」

 丁度頼りになる親友が、Cクラスの扉の前でジークに大袈裟に抱き着いてみせているのを遠く見守っていると、不思議と緊張が抜けていた。

 

 

 「サーレ様?」

 「レペテ、私達も行きましょう」

 

 

 

 

 

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