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願うのは笑顔  作者:
第2章 第1節【イージス学園小等部入学】

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大丈夫、まだしてない


 

 騒めく生徒達が教師達の指示の元クラスにわかれ、座席について行く。私達も同じ様に指示に従い、席に着く。

 

 私、ジーク、レペテの順に座るのをジークは少し顔を顰めながらも受け入れた。

 

 うん、まぁ、わかりやすいよね。

 

 あからさまにジークを嫌がり、近くの席な事を嘆き、聞こえるように言葉をこぼしていく周りの生徒に私も流石に顔を歪める。

 

 ──「なんで悪魔が」

 ──「忌み子が貴族?」

 ──「一体どこの」

 ──「見ろ、胸につけた家紋」

 ──「ああ、“あの”」

 ──「“あの”モナール子爵家の」

 

 ──「死鬼(シキ)の、子息か」

 

 死鬼(シキ)

 

 その単語にジークがピクリと肩を跳ねさせる。手を握り宥めるけど、顔は(しか)められたままだった。

 

 死鬼は蔑称(べつしょう)だ。戦場で死に場所を探すように戦ったとある騎士に感謝の裏で共に贈られた蔑称。

 

 「…ジーク」

 「平気だ」

 「……」

 

 戦場で狂ったと呼ばれる彼の。ジークの養父となったアルの蔑称。それは成長するにつれジークや私の耳に入ることが多くなった。

 

 それはジークが公の場に出る頻度が増えたからだと、ジークは知っている。というより、周りから嫌味として聞かされたのだろう。

 

 戦場で死を探す鬼が、悪魔と手を組んだ。眉唾物だと知っている者も、本当にそうだと信じている者も皆口を揃える。

 

 まるでそうすることが当たり前のようにジークを悪魔と、忌み子と呼び、アルを狂人と呼んだ。

 

 

 「───どうも、皆さんおはようございます」

 

 不意に聞こえた澄んだ声に自然と視線を上げた。壇上でにこやかに笑みを浮かべる彼を見て在校生は目を輝かせていた。

 

 新入生は突然話し始めた存在にざわついている。そんな中。私だけは彼をじっと見つめ、ジークの手を握る。

 

 ───彼が。

 

 「うん、ご協力ありがとう…さて、新入生の皆さん、改めておはようございます、僕は…──」


 ───茶色い髪に、紺の瞳。華やかで柔らかな笑みを浮かべる彼が。

 

 「小等部の生徒会長をさせてもらっている、ルライ・ガウェインです」

 

 ルライ・ガウェイン。リトとレヴェルと同じ神緑の巫女姫のメイン攻略対象の一人だ。

 

 

 少し前のガウェイン家は特に名が有名では無い。むしろどちらかと言えば没落しかけていた。それはルライが学園に入学する頃に激変した。商売が上手く行き、新しく手に入れた鉱山から貴重なミスリルや宝石が取れたのだ。

 

 ガウェイン家はルライが幸運を運んだと自慢の息子だと紹介し、少しずつルライやガウェイン家の名は広がっていた。

 

 ルライが小等部の最高学年になった頃にはガウェイン家の名は果てまで届き、その美しい鉱物で有名になっていた。

 

 ガウェイン家の宝石は他で見ないほど純度が高く美しい。だからこそそれらを欲する者が彼に近付き、彼を担ぎあげた。

 

 元々の彼の人当たりの良い性格が功を奏してルライを崇める者も多い。

 

 

 そんな彼が──初っ端から選択肢でエンド分岐する面倒臭い攻略対象である。

 

 

 「サーレ?」

 「うん?」

 「…いや、どうした?」

 

 ジークが心配そうな顔をしているので空いている左手で自分の頬をつまむ。落ち着け。まだエンカウントした訳じゃない。

 

 上げていた視線を落として深く息を吐く。…警戒しすぎも良くないわね、どうにも目立つから。

 

 そろりと視線をジークに向けてあげるとゆっくりと微笑んでみせる。そうすると、ジークが安心した様子で少し眉を下げた。

 

 

 

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