見捨てれないモノ《レペテside》
ルトゥールが怒っている。
分かってたけど止める気にはなれなかった。逃げなきゃいけないと分かっていたけど足は出口に向かわなかった。
私がいなかったなら、ルトゥールだけだったなら、きっと逃げることは出来たんだ。あの男と戦うことなく逃げれたんだ。
ルトゥールに蹴られて扉の方に来た時に、殴られた体がくの字に曲がる時に。
ルトゥールは死ぬ気なんだってわかった。
エテルネルは捕まって生きているかも分からない。ルトゥールは私を助けるために死ぬ覚悟をして。
らしくないよ、そんなの。あの御方の子を守るためになんでもしてきたじゃん。なんでもやってのけたじゃん。この国に居るってホッとして、奴隷のままこの国にいることがわかって怒ってたじゃん。
なんで今更諦められるのエテルネル。なんで今更死んでもいいなんて覚悟できるのルトゥール。
なんで、私だけ助からなきゃいけないの。
「ふざけないでよっ」
「レペテっ」
なんで私だけ除け者なの。
『レペテ様は、そんなことしなくて良いのですよ。お子の救出はエテルネルとルトゥールが行いますので』
私だって戦える。私だって覚悟できるの。みんなを救う為に、母代わりとなってくれたあの御方の願いを叶えるために。
見たこともないあの御方の子を想像した。
白の髪に赤の瞳を持つという。美しい顔をしていたという。愛らしい笑顔を浮かべてくれれば周りのものも自然と笑みを浮かべるような、愛らしい子だったと。
そんな私の養母となったあの御方の実子。
「私だって覚悟してたっ」
だからこそ闇の眷属へ呼びかけた。闇を司る女神の眷属。闇の眷属に命じれるのは女神のみとされる。だけど、女神に近い者ならその命を持って願いを叶えるという。
死神のような。彼を呼ぼうとしていた。
「エテルネルもルトゥールも私の事を結局子供扱いしてるじゃないっ、私だって出来るわよ!命かけることぐらい!」
「てめぇっ」
ルトゥールの怒りを増長させてると分かってても口からは不満が溢れて。目からは感情が涙に溶けてこぼれる。
「あんた達が死んで私が生き残れてもっ、なにも意味ないじゃないぃっ」
勝手に涙がこぼれるんだ。どうしようもないよ。
だって死んで欲しくない、あの御方の子も大切だけど私にとっては二人も大切なんだ。
「…とりあえず休戦するか」
嗚咽をもらしながら泣いていればさっきとは打って変わって困惑したように眉を下げてぎこちなく笑ってみせた男が折れてさっき捨てた剣を拾い鞘に収める。
ルトゥールと一緒に困惑して見れば、男はばつが悪そうに頭をかいて息をつく。
「うーん、やりすぎたなぁ」
「何言ってんだてめぇ?」
ルトゥールが反射的に突っ込めばヘラヘラと男は笑う。
「君達を殺すなって言われちゃってさ、俺殺すのは得意だけど殺さないのって苦手なんだよ。」
なんか怖いこと言ってるんだけど。
思わず身を固くすれば今度はルトゥールから口を開いた。
「エテルネルを解放したのか?」
訳が分からないという表情のルトゥールに男は首を傾げて、ああと納得した様に頷く。
「会場にいた方の襲撃者か、陛下がどうしたのかは知らないけど、どうやら君はどうなったか知る術があるんだな」
ルトゥールは今度は私の方を見ずに小さな声で情報を告げる。
「…レペテ、あの野郎がガキを見つけたらしい」
「え?」
「奴隷の身分から解放され、光の女神の目を持つ娘と婚約しているんだとよ…」
闇の女神が死んだとされた時。闇の女神を殺したとされる赤い目の存在が悪魔と呼ばれた。そんな悪魔と呼ばれるあの御方の子が…生きている。無事で、奴隷でもなく。
そしてエテルネルも生きている。
「なんだったら君らもその仲間のところに行って無事を確認でもしてきたらどうだ? 」
「…どういうこった」
「陛下には絶対に殺すなとしか言われていないし、逃がした所で文句言わないだろうしね」
俺も主にバレないように戻らないといけないし。と小さく呟かれた男の言葉が一番感情がこもってて、絶対それが本音だと思う。
いつの間にか引っ込んだ涙を最後に拭って詠唱する。
「“闇は無であり有である、霧の様に広がり霧の様にながるる、それを捉えれるものはおらず、遮る手もあらず、なれば如何なる道も切り開けよう───宵霧”」
ルトゥールと私の体が黒い霧となり上に上がる。天井裏に行けば闇が多いはずだ。そこならたとえ追いかけられたとしても逃げれる。
闇の霧となり天井裏に入る時男が見送るように手を振っていた。
こうして繋がります。
さて、以上で長かった第1章が終わります。ε-(´∀`;)ホッ
次話ではキャラ紹介を。
その後に第2章学園編が始まります。
これからも願うのは笑顔をよろしくお願いします( . .)"
榊




