与えられなかった選択肢《ジークside》
俺にとって予想外のことが起きたのは魔力媒体の召喚時。
描きあげた魔法陣に魔力を流し、目を閉じてイメージをすれば魔力媒体を選択出来るというものだった。
だが、俺がいくら魔力を流しても。目を伏せても。
魔力媒体のイメージが浮かばない。真っ暗な中、もう一人の俺がただ無表情で俺を見るだけだった。
『…俺は選ぶことすら許されないのか?』
他には許されるのに、なんの弊害もない奴らは選ぶ権利があるのに、俺にはその権利が与えられないのか。
『俺が何をした! なんでいつも俺には選択肢をくれねぇんだよ!!』
思考の中に浮かぶ俺は魔力が形どったものだと言うのはぼんやりと理解出来ていた。もう一人の俺に叫んでも、憎たらしい程無表情で。
突きつけられた絶望に“黒い魔力”が滲みそうになる。身を任せればきっと望むこと全てが叶うような心地良さに、抑えていたのを緩めようとした時、肩にリトが手を置いた。
「どうしたの?ジーク」
「リト…」
「感情が落ち着いてないけど…もしかして」
「…魔力媒体が召喚できなかったんだ」
唖然としているリト。俺の言葉を聞いていた近くのやつが口々にそれをやはり呪われている、忌み子だからと結論づけていく。
「静かに」
エルバル先生が一言口にすると一斉に静まり返る。俺はただ教壇で俺を見つめてくる視線に視線を返す。
「魔力媒体が選択できないということは稀にある、忌み子だなんだは関係ない」
「…ですが先生、魔力媒体は魔法を使う上での最低条件です、それがないのに彼は魔法を学べないのでは?」
「稀にあるのだから、対処法もある。ジーク・ルーテン・モナールは、後ほど私の研究室に来なさい」
「…はい」
他の生徒達が手にする魔力媒体は様々な形と色のものだった。配られた学生証を手にぼんやりと窓の外へ目を向ける。
ジーク・ルーテン・モナール
ジョブ:
魔力媒体:
魔力操作:B
魔力:C
身体能力:A
剣術:B
体力:A
空欄が余計に自分の異常性を突き付けてくる様な気がして、ただただ不愉快だった。エルバル先生は対処法があるとは言ってくれたが、自分が望むものを手にできるかも分からない。
そして、入学試験時から変わらずの魔力量に学食に頼るしかない事も恨めしい。
サーレの結果は良かったんだろうな、魔法媒体も、ジョブも決められたのだろう。才能の多い彼女は選ぶ選択肢も沢山あるはずで。
時々、サーレと同じ力があれば良いのにと思う時がある。そうすれば隣に立っていても遜色がない筈なのにと。
守りたいと思うのに、サーレの方が上手くやれてしまう。それにさえ嫉妬する自分が情けなくて嫌になる。
『貴方は忌み子ではない、寧ろサーレ様と近しい存在な気もするのです。魔力が少なくても大丈夫です、貴方は努力することを厭わない。必ず結果が出ますから』
『サーレ、ジーク…君達はまだ子供だということをちゃんと自覚し行動しなさい。 子供の時なんて人生の中では一瞬だ、その一瞬を大切に、ちゃんと心と共に成長しなさい』
エテルネルとレルム様に言われたことが自然と頭の中に浮ぶ。
そして、呆れた様な親父の表情と言葉も。
『魔力が少ない? 俺に言ってもどうにもならないぞ。俺は全く魔力が無いし、無くてもこうして剣があれば戦えるから困ったことも無い。お嬢様はお嬢様らしくお前はお前らしくやればいいだけの話じゃないか』
魔力がない親父はこの学園にも通ったことは無いという。 お祖母様曰く、そもそも魔力があったとしても通う考えは持たなかっただろうとの事で、その言葉を思い出せばきっと誰も俺を責めはしない。
サーレを守れず、サーレに守られる俺を彼女自身も責めはしない。
俺は本当に…サーレの隣に今後も居続けることが出来るんだろうか。




