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四精霊神の幻想  作者: 水瀬 もみじ
王都へ
1/7

ep.1 規格外

 

「⋯⋯まぶしい」


 カーテンの隙間から煌々と差し込んだ光が、綺麗な淡い若苗色の瞳を照らしている。


「くわぁ〜」


 盛大にあくびをしている彼女の名前は、ティアーナ・グリズリー、15歳。

 郊外の森で養母と2人で生活をしている極普通の女の子だ。


「ティアーナ、朝ごはん出来たわよ」


「はーい、今行くー」


 ティアーナはベッドから降りて高い位置で髪を結い直し、指を一振する。

 すると、ティアーナの動作に合わせカーテンがヒラヒラと揺れながらタッセルに束ねられ、布団が綺麗に整頓された。

 風の魔術だ。

 居間に行くと、窓が開いていて少しひんやりとしていた。窓辺には綺麗な銀白色の髪を靡かせ椅子に持たれている女性がいる。養母のリゼッタ・グリズリーだ。リゼッタは数年前に夫を亡くし、意気消沈していた所に道端に捨てられたカゴを見つけた。リゼッタは力無き足をカゴへと運ぶ。

 カゴの中を見ると、中には小さな赤ん坊がいた。

 その子のよだれかけにはティアーナと名前が縫われていた。

 それがティアーナとリゼッタの出会いだ。

 そして、その時から今までリゼッタは貧しいながらもティアーナを育ててくれた。そんなリゼッタは今、風の魔術で料理を運んでティアーナを待っていた。


「おはようぅ⋯⋯」


 ティアーナが目を擦りながら言うと、


「おはよう、今日は起きるの早かったわね、普段は一回や二回じゃ起きないのに」


「太陽の光が眩しくって起きちゃったの」


「いつも一回で起きてくれてもいいのよ?」


 そんな、たわいもない会話をしながら朝ごはんを食べ、山菜と薬草を採取する為に何かの本を持ち、腰に杖を差して家を出たティアーナは、何かを採取する訳でもなく木々のない開けた場所へと歩いて行った。


 近くには滝とひび割れた崖があるが、何故が滝は崖に沿い真っ二つに割れている。

 昔滝に来た人は言った。

 大きな地響きがした後に突如滝が崖ごと真っ二つに割れた⋯⋯と。

 滝の事なんか全く気にしないかのように滝の前に来たティアーナは本を開き、手を前に出し低い声で小さく唱えた。


反射水球(ウォリクトボール)


 そうティアーナが呟いた瞬間、滝壺の上に無数の水の粒が出来た。

 少しブツブツと呟くと、再び集中するために一度目を閉じて深呼吸をし、ゆっくり目を開いた。

 すると、突然遠くの木々が一斉に倒れ始めた。


「やった!成功だわ!やっぱり、水に攻撃魔術を飛ばすと水球の反射光が屈折し⋯⋯」


 ティアーナがキャッキャと飛び跳ねながら魔術理論をペラペラと喋り喜んでいると、後ろから声が聞こえてきた。


「ティアーナ⋯⋯ここで魔術の練習はもうやめなさいと言ったでしょう?」


「あっ⋯⋯」


 少し硬直した後、ゆっくり振り返ると、そこには笑顔のリゼッタがいた。ちなみに、目は全然笑っていない。

 そんなリゼッタを見たせいか、ティアーナの額には大量の汗が滲んでいる。


「あら、そんなに汗をかいて、大丈夫?体調が悪いの⋯⋯?」


(違う違う、お母さんが怖いの!何その笑顔、絶対怒ってるじゃん!怖いからその笑顔やめてよぉ⋯⋯)


 まぁ、当然ながらこんな事は言えないので話を逸らすことにした。


「それより、どうしてよ!私が何かを頑張っているとお母さんは応援してくれるじゃない!なのに、どうして魔術はダメなの!」


 ティアーナがそう言うとリゼッタが呆れたような声で言った。


「はぁ⋯⋯どうしてって⋯⋯周りを見てみなさいっ、このままだと森が持たないわ!」


 ティアーナが周りをキョロキョロ見回すと少し焦ったように、


「わ、私すごいでしょ!水球で風魔術を反射したのよ、ここまでの威力になるとは思っていなかったけど」


「ここまでの威力になると思っていなかったてねぇ⋯⋯前も同じ事言っていたでしょう?」


「うっ⋯⋯」


 行き場のない目線をキョロキョロ泳がせながら何かを思い出すかのように目を瞑ると、そこには一つの大きな滝があった⋯⋯が、何故が真っ二つに割れた。


「あ、やっちゃった」


 そう呟いたのは聞き覚えのある声だった。そう、ティアーナだ。

 そして、その直後。低い声で、


「ティアーナ⋯⋯?」


 自分の名前を呼ぶ声を聴いた瞬間、ガタガタ揺れる体の衝動を抑えゆっくり振り返ると、そこには⋯⋯リゼッタがいた。


「あ、え、ど、どうしたの?」


「どうしたのじゃないの!大きな音がしたから来てみれば⋯⋯また魔術の練習しているの!?」


「だってぇ⋯⋯魔術楽しいんだもん⋯⋯」


「だってじゃありません、前も崖にヒビを入れていたでしょう、威力がおかしいのよ!」


 そう、滝と崖の犯人はティアーナだった。

 ちなみに、滝を真っ二つにするのは並大抵の魔術じゃできない。


「威力調節はもうできるもん、少し力んで威力が上がっちゃったけどさぁ⋯⋯」


「そもそもね、無詠唱で使えること自体おかしいのよっ!一度覚えた魔術は無詠唱で行使できるなんてこの世界で見ても"契約者様"とティアーナくらいよ!」


「え?」


 ティアーナが間の抜けた声を出すと、リゼッタは呆気に取られたような顔をしている。


「無詠唱って凄いことなの⋯⋯?」


「当たり前でしょう?!魔術は口に出して魔術式を編み体内で魔力を行使する事でやっと使えるの!それを無詠唱でやってのけるなんて普通できることじゃないのよ!この世で無契約者の無詠唱魔術の使い手はティアーナだけ!」


「そうなの?」


 そう、ティアーナはこの時まで無詠唱魔術は当たり前に使える物だと思っていたらしい。

 しかし、リゼッタの言葉を聞いて自分が普通じゃないと初めて理解した。


「無詠唱魔術の使い手⋯⋯えへへ、私って凄いんだ」


 ティアーナが口の端を少し上げて笑っていると、


「ティアーナ、何笑っているの⋯⋯」


 リゼッタの一言で、ティアーナはハッと我に返り焦り出す。

 その様子を見たリゼッタは呆れたように微笑みながらユフィーアへ魔術の練習を切り上げるよう声をかけた。


「とりあえず、今日はここまでにして山菜と薬草を採取して帰りましょう」


「私が山菜を、ティアーナは薬草を探してちょうだい」


「うん!任せて!」


 そう元気よく返事したティアーナは、薬草を採取しながらリゼッタが山菜を採取している家の方へと帰っていた。


面白い、続きが気になると思って頂けたら、ブックマーク、評価、お願いします!


他作品と並行して書くので投稿頻度は週に1回の予定。

"四精霊神の幻想"と共に"セブンス・ウィッチ〜 白銀の魔女の秘密の学園生活〜 をどうぞよろしくお願いします!


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