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悪役・追放?令嬢 短編集など  作者: 平泉彼方
7/8

令嬢:「〇〇は正義!」

 読者の皆様どうもお久しぶりです。


 さて、今回は…軽い種族差別表現が出てきますので苦手な方ご注意下さい。それでは本編をどぞ!



「クリシュナ・ファルコニア・オブ・ルーンフィールド公爵令嬢の所業について…」



 目の前に存在する無駄に輝きだけが有る物体。其れが何かを喚く様をただただ冷淡に見守るだけ……嗚呼、この時間が勿体無い。公の場である以上表情は一切弛めないが内心そういった感想を令嬢は抱いた。


 そしてその殆どを聞き流す…不敬である事は承知の上で。



 内容は全て既に把握しており対処済みでもある。婚約者等と認めた憶えの無い頭の目出度い目前に存在するこの御馬鹿な連中はやはりその残念かつ低能な頭脳ではその事実を理解出来ていないようだったが……嗚呼やはり脳の容量が極小であると批評されるだけは有る。


 以前齎された災…失礼、彼の“縁談”を断って正解であったか。冷静に分析を続ける令嬢は、回避を進めてくれた者の事をふと思い浮かべる。


 同時にこれまで悲劇を回避する為、目標へと邁進する為行った所業の数々。そしてこれから行われる『いとも容易く行われるえげつない行為』…冷徹とされる自分でもドン引く程なので、容赦の無さについては折り紙付きだと言える。


 だが反省も後悔もする予定は無い……世の中譲れない“モノ”が存在するのもまた事実なのだから。



「……よってクリシュナ、貴様との婚約は破棄する事とする!!」



 予想通りの展開……『彼』の言葉はやはり正しかった。さて、ここまで順調に来て重畳。内心北叟(ほくそ)笑む。



“反撃の時間だ”



 脳内で再生される謎のゴング音。同時に見えるのは凹々ズタボロにされた未来の“王子と愉快な仲間達”とその親。


 あの糞共を社会的に滅殺せんとする凛々しき令嬢の口撃が今、其の火蓋を切った。



「喜んで受け入れましょう…但し先程殿下の述べた私の罪は全て『冤罪』である証拠は既に陛下へ提示しておりますので後程ご確認下さい。同時に此方の会場の様子も国王陛下並びにその側近の皆様が御覧になっております。故に、今現在、私へ掛けられた冤罪並びに殿下を除く方々の『不敬罪』に相当する所業は全て映し出されておりますので証拠としては十分でしょう。


 御覚悟下さい。」



 ワンブレスで言い切った令嬢……壇上で1人の庶民を囲う“高貴”“有望株”とされていた若人共の様子に溜め息を吐いた。


 王子と宰相の息子を除く数名は状況の読めていない様子…令嬢は内心完全に呆れていた。一方は見苦しい程真っ赤な顔を、他方は間抜けな面を公衆の面前で晒していた。ああ恥ずかしい。


 今の説明で理解出来た者は何とか助命だけはして差し上げようと思いましたのに……


 令嬢は溜め息をもう一度吐く。


 彼女と重なる様に吐かれた溜め息がシンと静まり返っていた会場に響く…其の音は何処か低く、とても令嬢の声であるとは言えない。更にとても深く、深刻である事が溜め息1つで表現されていた。


 黙って『王族』への礼をする令嬢とその他貴族達………惚けた様にその様を壇上に居る連中は眺めていた。


 モニターに写った中年の美丈夫は悲しみと怒りが混ざり合った表情を一瞬浮かべた……それは誰に対してであろうか。



「…よい、面を上げよ。」



 切り替えて王族らしい、太く腹の底へ響く声を出す。


 彼の御仁は歴中でも稀に見る『賢王者』の諢名を持つ程の賢王。自国からは崇められ、他国からは怖れられる其の王の名…其れは『クロノス・タイム・フェルゼン・オブ・グランデンブルグ』。グランデンブルグ王国の名高き王である。


 残念ながら彼の息子にそれは引き継がれなかった様であるが…



「…ち、父上?」



 それでも一応自身の所業が異国外交中(・・・・・)で不在である筈の親に見られた、この事の意味を良く理解出来る頭脳は持っている様だ。


 …最低限の空気を読めるとも言う。


 そう考えれば一応この場の空気を無視して間抜け面を晒す者や狼狽する者よりは正面なのかもしれない…或いは空気を読む気も無ければこの場にそぐわない態度を取り続ける物体よりは。


 だが結局、其の物体を擁護した所業を見る限りでは結局同じ穴の狢である…それ故に王の機嫌を更に逆撫でする発言をするのだろう。



「…私の先程告白した罪が仮に『冤罪』であったとしても、私のクリシュナと婚約を解消する意志は変わりません。何より、この際支え合って国を営んでゆく相手として見る事も出来ません。」


「そうか…」



 発言を聞いていた王は寂しげな内心を隠し、只管冷静に、冷徹に発言した。だが目の奥までは、その感情が隠しきれていない様子であった。


 しかし、次の瞬間鋭利な視線となる……矛先は呟く声の主。



「え、確か王が現れるのって…でも……間違…いや、あり得……」



 ブツブツと独り言をしていたのは容姿だけ(・・)は可愛らしい(決して美人ではない)、不気味な平民のビ…失礼、少女と呼べる年齢である物体。


 常日頃から周囲の自分へ向けている視線や感情に無頓着…当然貴族階級の人々は彼女を嫌った。そんな物体も、元より自己陶酔し易い質なのか、平民であるから差別されると自分が可哀想である、貴族は冷徹な支配者であると発言していた。


 或いは『ヒロイン』たる自分はこの程度の事には屈しないと。



“電波を何処からか受信する、頭の沸いた要注意人物”



 学園では大体その様な評価を受けていた。故に正面な令嬢・令息はなるべく接触を避けて過ごしていたのだった。



 彼女は『モブ』と彼らを呼び、そして婚約者の居る将来有望とされていた見た目だけは立派な子息達へと近寄った…所詮同類だった為か、直ぐに仲間となった。


 妄想癖と妄言癖を持つ不気味な平民…だが、不思議な力も保有している可能性が危惧された……何故なら不条理を働いても何もかも許されていたからである。それも、取り巻きである令息達に頼らずとも。


 戦々恐々とした保護者達は自らの子息令嬢を早々に学園から帰宅させ、領運営の為の『事前準備』と称した自宅学習へと切り替えた。



 そうして家庭の事情でどうしても残らざるを得なかった『高貴』な無能共と一部有能な人物が犠牲となったのだった……



「…もうよい、連れて行け。王宮で裁判にかける。」



 結局弾供された令嬢の無実は証明されており、更に王子の『婚約者候補』と言う話しは無かった事となった…そう、元々婚約等結んでいなかったのだ。完全な王子(略)の勘違いであり、只の被害者であった。彼女はと言うと……其の前に加害者の事を記す。


 この後王子を待ち受けていたのは、王位継承権剥奪の上幽閉されて種馬としてだけの人生…それは決して明るい物では無くいつ殺されても可笑しく無い状態であった。更に、今まで馬鹿にしていた腹違いの兄が王位を継ぐ事となった。


 王子の取り巻きだった者達はそれぞれ家からの勘当或いは幽閉→謎の事故死。悲惨な者は公爵家へ賠償金が払えず奴隷として一家丸ごと愛好家へ売られて行った。その後の消息は不明。


 電波は彼女の持つ知識を尋問で搾取された後、口にする事も憚られる拷問を受けて獄死したと言う。



 さて、あの場で断罪されそうになった令嬢は…



「私がアレを望むとでもお思いで?」


「ククッまずあり得ん。だから此処に居るんだろ?」


「…もう」



 火照った顔を隠す様に厚い胸板に顔を押し付けた令嬢……彼女を囲むのは見事な筋肉と毛皮に覆われた片腕。もう片方に至っては、無骨な手で器用にも彼女の濡羽を漉いていた。


 色気と愛情を同時に含んだ番を映す灰色の瞳は優しく細められ、令嬢が自身の腕の中にいる事を何度も確認する様に撫でていた。



“こんな人生も、悪く無いな。”



 前世は普通の会社員であった男は、自分の過去を少しだけ振り返る……幼少期意識が戻った直後に奴隷となり、今世の家族を殺した普人族を恨む気持ちは少なからず有った。


 本格的に身につけた総合武術は今世では身を助けた。闘技場で闘奴として過ごす日々、前世の自分へ感謝しなかった日は無かった……それでも無理が祟って死にかけた事は幾度も有った。


 其した中、自分の命もここまでかと思ったあの日。



「お父様、私自分を最期まで守って下さるあの様な力強い従者が欲しいのです。」


「あの方……そう、その方がいいのです。」


「ええ、その方でなければ駄目なのです。」



 深手を負って檻に眠る彼の傍らで、優しい声が聞こえる……自分を求めてくれていることは分かる。こんな、獣以下の扱いを受ける怪我だらけの醜い哀れな戦闘奴隷を。


 意識が戻り、目を開くと強い意志を宿した凛とした印象の令嬢が1人。



「私は『クリシュナ・ファルコニア・オブ・ルーンフィールド』。私が今日から貴方の主人になりましたの、宜しく御願い致します。

 貴方の名前は?」


「……名は有るが、無い。」



 あの優しい声の主である事は分かっているが、自分を追い詰めた事のある人種であると本能が拒絶する……唯一憶えている前世の名前を告げるわけにはいかない。


 それ程信用はしていないのだから。



「……残念ですわ。ですが“信頼の証”を頂ける関係を築ける様最大限努力致します。覚悟なさい。」



 当時8歳だった彼女と11歳だった己を思い出し、懐かしむ男。そして令嬢の名前と容姿で親戚の子供が好きだったピコピコに出て来たヒールを少しだけ思い出した。


 それから暫く王子を見て彼女の運命を思い出す。


 良く親戚の子供が嘆いていた……何故彼女が死なねばならんのかと。筋書きが悪いと評判が立ち、以後其の会社の作品には悪役令嬢が出なくなった。


 自身を助けてくれた彼女へ借りを返す意味を込めて主人である公爵(父)へとその旨を伝える……昔会った狐獣人の占い師に占ってもらったと適当な嘘を言った。


 あっさりと信用はされなかったが、思い出した王宮の勢力図等を説明した結果あっさり陥落……5歳から闘技場より一歩も出ていなければそれもまあ納得であるのだろう。



 そうして様々な対策を練った上で彼女へ話しを通した後、共に様々な困難を乗り越えた。



 吊り橋効果?いや、そんな生半可なものでは無い……ただ単にこれ程いい女はいないと感じただけだ。多分『番』だからという事も理由の一部に含まれているのだろうが。


 精通して初めて彼女が“そう”であると気付き、求愛して許可を得るまでどれ程の努力を重ねたか……公爵(父)は自分の出自を知っていただけに直ぐにでも許可を出したが公爵夫人の説得が大変だった。



「……だが母親がアレなのに、何故クーは俺の毛皮を好む…未だに疑問だ。」


「あら、これ程素晴らしい銀色のモフモフは存在しませんわ?それも、この感触を私が独占出来る贅沢さと言ったら無いでしょう?」



 令嬢は凛とした見た目に反してモフモフで可愛らしいものが大好きだった……同時に男性の趣味は細身と対極を行く筋肉質な肉体。そしてその何方も味わえる『獣人』……世間一般では未だ差別が根強く残っている者の、彼女の中では奇跡の種族そのものであった。


 故に母親が嫌う獣人を彼女は深く愛していた。


 とりわけ彼女が愛す番となった男は『月光銀』と呼ばれる種族。其の特徴は優しい手触りと強度の共生が出来ているモフモフである事。



「温かくてモフモフ……幸せ。」


「グッ……」



 番の甘える声・仕草・匂いに焼き切れる寸前の理性を何とか保ちながら、男は彼女を優しく抱き締める。灰色の目は欲望を交えた優しい色をしていた。



“辛いだろうけど、もう少しだけこの至福の時間を…”



 自分の運命に打ち勝った令嬢は、其の末に得られた至高な刻を嬉しげに享受するのであった。



「もうそろそろ名前を教えてよ?」


「そうか、そうだな。俺は…













――――――『グランデンブルグ王国』で獣人への差別が殆ど無くなった切っ掛けは、ルーンフィールド公爵家のとある令嬢の逸話とは切っても切れないと言われている。


 当時王子の婚約者として押されていた彼の令嬢には奴隷が居たと言う。後に夫となったその奴隷は彼女に訪れた窮地を何度も救ったと言われる。令嬢に獣人差別意識が無かった理由が其れだと言われている。


 だが、現在最も有力な説では否定されている。根拠として令嬢の父親であった当時の公爵の証言が挙げられる。曰く、令嬢は毛の多い縫いぐるみと筋肉質で逞しい体型の男性を好んだ為、見事合致した闘奴であった男を求めたと。


 今となっては分からないが、少なくともこの男が当時公爵家を継ぐ事になった出来事は当時大騒動を起こした。今でも残る令嬢と奴隷の馴初めを描いた歌劇にその様子は良く描かれている。


 残念ながら彼らの子供は普人族であったが、何代か後先祖帰りとして獣人が生まれるという事例があった。其の頃には既に獣人差別が過去の遺物となっていた為、寧ろ武官色の強かった公爵家では狂人な肉体を約束されたものと喜ばれたと記されている。



 おにはーそと、ふくわーうち。皆様恵方巻き食べましたか?後豆まきしましたか?


 今回最初はヒーローを節分に因んでファンタジー定番の鬼人オーガにしようか悩みました。けど、気付いたら自分の趣味趣向全開のヒーローに……モフモフと筋肉は至高です。異論は認めます。


 さて、次回はいつになるか分かりませんがどうぞ宜しく御願い致します。

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