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自作ダンジョンで最終ボスやってます!【動く挿絵付き】  作者: ITSUKI
第一章:ダンジョンできました
9/59

第09話:中ボス部屋に大ボス部屋

 ダンジョン作成二日目。


 灯りの魔法石を通路と部屋に設置する仕事で、シロは別行動。

 そして、シェリルは昨日の部屋から先に続く通路を張り切って掘り始める。


 その動きに迷いはない。ソラは土塊を転送しながらシェリルを見る。


 ――なんでこんな無駄なところまで、スペックが高いんだろう。


 もう何回目かわからないが、改めてシェリルの高性能さを思い知らされる。


 ダンジョン通路や部屋を掘削するなんて、普通どうすればいいのって思うはず。

 だというのに、昨日シロも言ってたけど通路を良い感じで曲げて掘っている。

 そんなの簡単にできることじゃない。

 どう見ても何となく適当に掘っているように見えるけど今日の通路も良い感じ。


 ――まぁ、結局は御主人様だからねって結論になるんだけどねぇ。


 今日も一心不乱に土の壁を掘削している笑顔のシェリル。

 その横では、今日も不平を言わずに黙々と内壁の締固めをしているクロ。

 ダンジョン作りは順調に進む。



挿絵(By みてみん)



 そして正午間近になったころ――、

 昨日と同じくらいの長さの通路を掘り終えたシェリル。

 灯りの設置がひと段落して戻ってきたシロ。


 そこでシェリルが「ここから先を二つ目の部屋にするよ!」と宣言。


「この部屋は中ボス部屋にするから、シロ! 中ボスと宝箱作って」

「マスター、中ボスはどんな魔物にしますか。ぬいぐるみですけれど」

「うーん……サソリ。でっかいサソリでいいや。大きいのが一匹でいいよ」

「はい、わかりましたわ」


「御主人様、宝箱ならアタシが持っていますよ」とソラが横から口をはさむ。

「前のダンジョンの奴?」

「そうです」


「じゃあ、それを使って……、中身は何か武器にシロが祝福をつけてやってね」

「それはちょっと豪華すぎませんか? ワタシの祝福だと聖剣並になりますわ」

「最初だけだから、いいよ、それで」


「時々、クロの呪いを付けた剣を入れておくのも良いと思いますよ」

「ソラは極悪……」

「クロに言われたくないわね」


「あっ、そうだ。宝箱にはクロに罠を付けてもらおう」とシェリル。

「御主人もわる……」と言いつつ、クロの顔は嬉々としている。


 ――あれは、どういう罠にしようか考えている顔ね。悪だくみしている顔。


 そんなやり取りをして、昨日と同じ割り振りで二部屋目の作成に取り掛かる。

 やればやっただけの成果が目に見える作業。全員の目が輝いている。

 シェリルのやる気に引き摺られて、人形たちも楽しくなってきた。

 充実した時間を過ごすひとりと三体。


 やがて二部屋目も完成する。


 シロの大サソリのぬいぐるみも完成。

 振り上げた尻尾が地面から2mの高さがある。そして一対の巨大なハサミ。

 その姿は一体だけで十分な威圧感がある。

 シェリルも満足そうに頷いている。


 その後に一呼吸おいて、シェリルが続く工程の説明を始める。


「じゃあ、この部屋はここで行き止まり――」


 シェリルは高らかに宣言する。


「明日は道を戻って、分かれ道を掘り進めるよ!」


 シェリルの頭の中には、すでに設計図が出来上がっているようだ。

 そして、目印もない地中をその通りに掘り進める能力。

 それは、ダンジョンの最終ボスのままでいれば、絶対に必要なかったはず。

 何故そのような能力を持っているのか。


 ――御主人様だからねぇ。


 やはり、その結論に行きつくソラだった。



 ◇ ◆ ◇



 ダンジョン作成三日目。


 今日は最初の部屋に一旦戻る。

 中ボス部屋に行く通路の始まる場所。そこから分かれ道を掘り始める。

 右に行けば中ボス部屋、今日掘るのは左に進む道。


 またまた午前中だけで、その通路を掘り終えたシェリル。

 これから作る部屋の説明を始める。


「ここに作るのは大ボス部屋。ここを越えると……次は最終ボス部屋だぁ!」


 ――へぇ、もう最終ボス部屋かぁ。……でもこじんまりして丁度いいかも。


 シェリルの言葉でダンジョンの規模が判明した。

 ただ、最終ボス部屋の話をする前に、この部屋をどうするかだ。

 シェリルの昂ぶる気持ちはわかるけれど、話を元に戻すためにソラが尋ねる。


「はいはい。で、この部屋の魔物はどうするんですか。御主人様?」

「ここは……トカゲ。巨大なトカゲを一匹」シェリルが少し考えてから答える。


「シロ、巨大トカゲだって」あるじの言葉を受けてソラが担当のシロに伝える。

「わかりましたわ。ソラ、材料を出してくださいな」

「あっ、そろそろ綿わたが無くなっちゃう。こんな一度に使うのは初めてだから」


「そういえばソラって、どこで材料とかを手に入れているんですの」

「えっ、知り合いの店で買ってくるんだけど」

「人形の身体で売ってくれるのですか」

「それはもう十何年の付き合いだからね」


 ――最初はたいへんだったけどねぇ。


 今では、幾つもの町に色々な種類の行きつけの店があるソラ。


 そうなるまでには紆余曲折があった。

 人形の身体だというのも勿論だが、それに加えて人間の常識、世界の常識。

 ソラにとって、この世界に馴染むための障害はたくさんあった。


 それを克服した上で、さらに人間相手の付き合い。

 騙そうとしてきた相手は何十人。そういう奴等には必ず仕返しを忘れなかった。

 それも今ではいい思い出だ。

 

「ソラはいつも一人で町に出かけてる……ズルい」とクロが会話に加わる。

「シロもクロも常識がないから、街に連れていけないのよねぇ」

「ワタシは町に興味がありませんから、どうでもいいですわ」

「まぁ、ボクもだけどね」ズルいと言ったのに、こんなセリフを口にするクロ。


「なによ、それ。――まぁいいか。今日の仕事が終わったら買い物に行ってくる」

「お願いしますわ」「いいよー」


 そして午後の作業が始まる。

 しばらくして……、案の定、材料が足りずにシロの大ボス作成の作業が止まる。

 ソラに相談を持ち掛けるシロ。


「昨日の宝箱の中身を作りますわ。短剣か何かならありますか?」

「聖剣になるんだっけ」

「そうですわ」


 シロの祝福を受けた武器は聖属性になる。

 付与される効果は攻撃力の大幅な上昇と、呪いに耐性が付くなどの恩恵。

 それが剣であれば聖剣と呼ばれてもおかしくはない。


「じゃあ、形だけでも高価そうなやつにするね」

「そうしていただけると、うれしいですわね」


 ソラは収納空間から、派手な装飾のついた銀製の短剣を取り出す。


「これはまた、見た目だけは立派な……」その短剣を見たシロのあけすけな感想。

「そうなのよね。使い道がなかったけど、聖剣になるのなら良い感じよねぇ」

「そうですわね。そう考えれば、なかなかいい感じ」とシロ。


「ソラ! 転送おねがーい!」そこにクロの声が掛かる。

「はいはーい、――じゃ、あとはよろしく」

「わかりましたわ」


 というやり取りを挟みながら、大ボス部屋の掘削が順調に進む。

 やがてトラブルもなく大ボス部屋が完成する。

 シロの聖剣作りも無事完了した。


 ――すぐに買い物に行かないと……。


 夕食の支度もあるソラは余りゆっくりとしていられない。

 みんなの作業の終わりを見計らって、すぐに同僚に声を掛ける。


「じゃあ、アタシちょっと買い物に行ってくる。なるべく早く帰って来るから」

「はい、いってらっしゃい」とシロ。

「いってら」と簡潔に返事をするクロ。


 二体の前からソラの姿が消える。


「あれ、ソラは?」そこにシェリルが来て、ソラの行方を尋ねる。

「今買い物に行きましたわ」素直に答えるシロ。


「えー! 今日の夕飯はー!?」への字口をしたシェリルが不満そうに言う。

「すぐに戻りますから待っててくださいな」そんなシェリルをシロがたしなめる。


「お腹空いたぁ! お腹空いたぁ! お腹空いたぁ!」駄々をこねるシェリル。

「御主人……うるさい」クロが半目になって自分のあるじいさめる。


 ソラがいないと、途端にグダグダになるひとりと二体であった。



 第九話お読みいただき、ありがとうございました。


※11月4日 後書き欄を修正


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