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自作ダンジョンで最終ボスやってます!【動く挿絵付き】  作者: ITSUKI
第一章:ダンジョンできました
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第10話:回復の泉も井戸掘りから

 ダンジョン作成四日目。


 昨日の大ボス部屋から通路を伸ばしていったシェリル。

 今日は最終ボスの部屋を作るのかと思っていたら違っていた。

 いつもと同じ長さの通路を掘り終えると彼女は告げる。


「ここは最終ボス部屋の手前――回復の泉部屋にするよ」


 そう言って、今までの部屋の半分の大きさの部屋を掘削した。

 幅と奥行きが半分、高さも半分なら体積は八分の一。掘り終りは早かった。

 出来上がった部屋を見て、ソラがシェリルに問い掛ける。


「回復効果はシロに任せるとして、――泉はどうやって作りますか、御主人様」

「うふふふふ……」一本のスコップを手に持ったシェリルが嫌な笑みを浮かべる。


「そのスコップがどうしました?」

「井戸をね、掘ろうと思うんだ……」

「んっ? 掘ればいいんじゃないですか、それが何か?」

「スコップだけで掘り進んで、出た土を何処かに転移してもらわないとなぁ」

「……」不吉な予感がして無言で答えるソラ。


「ソラ、スコップと一緒に地面に潜って行って!」無慈悲な命令が下される。

「……それは、昨日夕食が遅れた恨みですか……?」

「ち、違うよ! あたしはそんな器の小さな女じゃないよ!」


 ――なら、なぜ焦る。


 慌てて否定するシェリルを見て、ソラは自分の指摘が正解だと見抜く。

 だが命令の内容はふざけている訳ではない。それがソラにもわかる。


「……わかりました……やりますよ」ソラは観念した。


「穴の壁面補強にクロも必要ですわ」とシロの無慈悲な助言。

「シロ……恨むよ……」クロも観念した。


 念のためシェリルの鋼糸を二体の人形のお腹に結んで、井戸掘りを開始する。

 掘るのは一本の剣先スコップだけ。


 ギュリギュリギュリギュリ……。


 後を追って垂直に開いた穴に、ソラとクロも降りていく。


 スコップが土を削っている閉鎖空間。

 激しい掘削音がするはずだが、そこはソラの空間結界で会話は十分にできる。

 灯りはシロから預かっている。

 しかし、その空間はかなり圧迫感があり、狭すぎて光も十分に行き渡らない。

 そして作業の都合上、背中合わせになっているソラとクロ。


「……闇はボクの世界」クロがぽつんと呟く。

「……クロ、もしかして怖いの?」背後からのクロの声に怯えの色を見たソラ。

「……そんなことない」やはり力のない声でクロの返事が聞こえる。


「片手出しなさい。握っててあげるから」命令口調でソラが言う。

「……うん」そっと手を差し出すクロ。ソラがその手を握る。



挿絵(By みてみん)



 そして数十mは掘り進んだ頃、

 二体の人形が掘り当てたのは――温泉だった。


 熱気を感じて、すぐにクロを連れて穴の外に転移したソラ。

 しかし転移が間に合わず、熱湯を浴びてしまっている。


「あつっ! 熱いってば!! シロ! 治療! 治療!」

「シロのバカー!!」

「大げさですわ、そんなやわな身体じゃないでしょうに」優しくないシロ。

「やったぁ! 回復の温泉だぁ! ソラとクロ! 偉い!」素直に喜ぶシェリル。


 穴からは湯気を出して温泉が噴き出している。

 温泉特有の匂いも部屋の中に充満してきた。


 ――確かに、アタシたちの身体は熱湯ぐらいじゃビクともしないけれど……。


「素直に喜べませんねぇ……」

「……御主人も酷いよ」


 あるじと同僚の心無い出迎えに、厳しい実務を終えた人形二体は納得がいかない。

 行き場のない感情。ここは同じ境遇同士で慰め合うしかない。

 ソラが収納空間からタオルを出して、びしょ濡れのクロを拭き始める。


「ありがと……、ソラ」大人しく髪の毛を拭かれているクロ。

「どういたしまして」と優しく答えるソラ。


 その様子を見ていたシロは二人の間に何かを嗅ぎ取る。


「むむむ……! ソラとクロの間に何かがっ!」


 何故かそんなところだけ異様に勘の鋭いシロ。

 彼女は昨日の続き、大ボス――大トカゲのぬいぐるみ――を仕上げていた。



 ◇ ◆ ◇



 ダンジョン作成五日目。


「……」作業の途中で突然うつむくシェリル。

「どうしました、御主人様」何事かと心配するソラ。

「……か……」

「んっ?」


「かーんせーい!! 最終ボス部屋できたー!」満面の笑みのシェリル。


 今日も朝からの作業。

 昨日の回復の泉部屋への道の途中から、右に分岐して道を進める。


 いつもより短い通路を掘り終えて、少し早めに部屋を作り始めたシェリルたち。

 通路に灯りの設置を終え、戻って来たシロも最後の部屋の完成を見守っている。

 みんなここが最終ボス部屋だとわかっている。


 無駄な会話もなく作業に集中する中、全員の表情が自然と高揚していく。

 そして部屋の掘削の進捗と共に着々と時間が過ぎていき……、

 しばらくして――、シェリルが部屋の完成を宣言したのだった。


「完成ですね……おめでとうございます」

「おめでとうございますわ、マスター」

「おめでと……御主人」


「ほへぇー」と息をついてその場に座り込むシェリル。笑顔のままで。


 あるじの幸せそうな姿を温かく見守る三体の従者人形。

 心に浮かんだ達成感をしみじみと感じて、全員がしばらくは無言でいる。


 最初に声を出したのは、こんな時の役目――ソラだった。


「まだ早いですが、今日はこれで作業を終えて――」

 最終ボス部屋が出来たと言っても、ダンジョンは完成ではない。

 ソラは言葉を続ける。

「いろいろ残っている部分をどうするか、そういった打ち合わせをしましょう」


「うん!」とシェリルは満足そうな顔で元気に返事をする。

 

 あるじの返事を皮切りに、人形たちはやりたいことを率先して提案する。

 今日までの作業の中で、それぞれが思い描いたダンジョンの姿を話し始める。


「ワタシはこの部屋にきれいな灯りをつけますわ。最終ボス部屋ですから」

「ボク、通路に罠を仕掛ける」


「アタシはどうしましょうかね。この広さだと転移装置も必要ないでしょうし」

「ソラは人間が最終ボスを倒した時の宝物を作ってね」

「えっ! 御主人様を倒せる相手がいる訳ないじゃないですか!」

「人間への誘惑物えさにするの!」

「そうですか、じゃあアタシの全身全霊で物凄い奴にしちゃいましょう、うへへ」

「じゃあ、それで!」


「あとは生活空間が必要ですわ」

「それはこの部屋の隣でいいんじゃない? ――御主人様、掘削をお願いします」

「いいよ」


「部屋はリビング兼管理室とキッチンと寝室と風呂場とトイレですよね」

「うん、それで。あと入口はソラの能力ちからで隠しておいて」

「はいはい」


「部屋を仕切る壁はボク作るよ。内装はシロやって」

「わかりましたわ」

「そうだ、風呂場のお湯は回復の温泉から引いてくれば良いのでは?」

「そうしよう!」


「それと料理担当としては、魔法石からじゃない普通の飲み水が欲しいのよね」

「じゃあ、温泉を冷やして浄化しましょう。クロ、仕掛けを作ってくださいな」

「うん」


「回復の泉も少し手を入れたいですわ。クロ、これも手伝いをお願いします」

「りょうかーい」

「後はダンジョンの入口と最終ボス部屋をそれっぽくしたい!」

「それは、最後にみんなでやりましょうよ」

「マスター、魔物のぬいぐるみに命を与えてください」


 そんな感じでみんなでアイデアを出していく。

 手作り感満載のダンジョン。

 完成は間近。


 もう全員がこのダンジョンに愛着を持っていた。

 熱のこもった打ち合わせも終わり、既にダンジョンの外では日も暮れている。

 できたばかりの最終ボス部屋にテーブルと椅子を出して食事の準備。

 

「お腹空いたぁ! お腹空いたぁ! お腹空いたぁ!」いつも通りのシェリル。

「はいはい」と毎回同じ返事を返すソラ。


 もうすぐ、もうすぐ。――と、ひとりと三体の期待は膨らむ。



 第十話お読みいただき、ありがとうございました。


 次回でダンジョン作成の話は終わりです。

 8月28日掲載予定です。


※11月4日 後書き欄を修正


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