近く、遠い一歩を
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「カジカワさーん、そろそろ立ち直りましょうよー」
「……」
『ピィ…』
はいどうもこんにちは。
アルマパパとの組手を終え、現在体育座りでアルマとアルマママの組手を見学しながら地面に『の』の字を書きつつ落ち込んでる最中です。
思いつく限りえげつない手を遠慮せず使いまくって、自分自身を巻き込んだ自爆戦法まで使ったが、まるで通じませんでした。
……よもやあの一瞬で【気功・発徑】を発動して拘束を解き、身体が自由になるのと同時に縮地で爆発から逃れるとは。
で、そのまま頭を木剣でパコーンされて撃沈。結局一撃も入れられませんでした。
スキル技能を使わせただけまだ進歩があったとみるべきか、今の俺の限界までやってあの程度の成果しか出せなかったと嘆くべきか。
……くっそ、すっげー悔しい。
あ、でも『悔しい』って感じるのっていつぶりだろうか。
上司に理不尽な叱られかたして、立場上なにも言い返せなかった時か。
いや、あんなドロドロした悔しがりかたじゃなくて、高校の受験の際に第一志望落ちた時とか?
それとも、うんと小さい時に喧嘩で負けて大泣きした時か。
……なんか、変に昔のこと思い出しそうになってる。ワシももう歳じゃて。
「そもそも目的がズレてるっすよ。あのお二人に勝つことが目標じゃなくて、強くなるために稽古をしてるんじゃないっすか。一回や二回相手したくらいで一撃入れられると思うほうが間違いっす」
「せやな……」
「なんすかその訛りは。まあ、普段自分がカジカワさんと組手してる時の心境を少しは理解してくれたみたいでちょっとザマーミ ゲホゲホッ、ちょっと嬉しくもあるっすけど」
本音だだ洩れじゃねーか! なに? 俺と組手するたびにこんな悔しい想いしてるのこの子?
いや、まあ、確かに俺に対してまともに攻撃入れられたことなんかほとんどなかったかもしれないけどさ。
んー、そう考えるとレイナってかなり我慢強いかもな。
スラム暮らしに比べりゃまだマシってだけの話かもしれんが。
……レイナの言うとおり、いつまでもウジウジ落ち込んでても仕方ない。
思い付き程度の技術が通用しなかったのも、冷静に考えてみれば当然のことだ。相手はLv90超えで俺の何十倍も戦闘経験のある大ベテランだし。
複数の敵相手に戦うことなんか慣れっこだろうし、自爆覚悟で突っ込んでくる相手が今までいなかったと考えるのも不自然だ。
まだまだ組手をできる回数は残っている。焦らず腐らず色々試してみよう。
「はぁああっ!」
「!? す、すごいわアルマちゃん!」
お、おおう…!? アルマママが乱射してくる炎の弾を【大地剣】で打ち返しおった。
普通に考えたら剣に当たった時点で爆発してしまうはずだが、剣の周りを【魔刃引き】の魔力で覆い、その魔力をクッション状にして弾力をもたせたのか。
あれなら巨大サイズの火球でも跳ね返せるし、魔法を防ぐのと同時に攻撃もできる。俺の魔法弾きまで真似できるようになったのか。
……てか、俺よりも魔法を弾くの上手くね? 立場無いんですけど。
火球を連続で撃ち返しながら、【二枚舌】で複数の攻撃魔法を放ちつつ距離を詰めようとしている。
アルマママも縮地やクイックステップで距離を保とうとしているが、気力操作で強化している分、アルマのほうが若干速い。
「おおお! もう少しっす! あとちょっとで当てられるっすよ!」
『ピピッ!』
「アルマ、頑張れ!」
「負けるな我が娘! ぶっ飛ばしてやれ!」
あともう少しでアルマママまで剣が届く。それを見て思わず全員声を上げた。
しれっとアルマパパまで応援にまわってんだけど。んなこと言ってあとでママに叱られませんか? 大丈夫?
「ふ、ふふ、うふふあはははっ! 嬉しいわ! 成人してまだ1年半ちょっとなのに、まさかここまで成長してるなんて!」
「『リトルノーム』! 『イフリート』!」
「さらに精霊魔法まで! どこまで感激させてくれるのかしらこの子は!」
〈こえー! なんだこのひとまじこえー!〉
〈る、ルナティアラの嬢ちゃんか。ここのところ呼ばれてなかったけど、まさかこんな形で会うことになるとはな……〉
精霊魔法を使って手数を増やし、放たれてくる火球をイフリートに任せ、アルマママが移動するのをリトルノームに妨害させている。
ん? イフリート、アルマママのこと知ってるっぽい? ってことは………。
「【クトゥグア】」
「……え」
……っ!!?
アルマママの呟きとともに、空から膨大な魔力を感じとれた。
なにかが、降りてくる……!?
その外見を例えるならば、炎の巨人。
身長100mを優に超えるほどの、超巨体。ミニマム・ヨルムンガンドよりも体高がある。
中級精霊イフリートがまるで赤子に感じられるほど、超膨大な魔力を感じられる。
おそらく、アレ単騎で黒竜をも凌ぐ力を秘めているだろう。
≪上級精霊魔法【クトゥグア】炎属性最高位の精霊を召喚・使役する魔法。上級精霊魔法を扱える者は世界中探しても片手で数えるほどしか存在しない。使い方によっては、王都規模の都市を数秒で焼け野原へと変えるほどの力をもつ、極めて強力な精霊である≫
アルマママ本気出し過ぎィ!!
どう考えても娘相手のお稽古で呼び出していいもんじゃないだろこれ! 殺す気か!? アンタ、実の娘を殺す気ですか!?
「大丈夫。手加減はするから死んだりはしないはずよ。……アルマちゃんが、ちゃんと防ぐことができればの話だけど」
「………っ!」
「……見せてみなさい、アルマ。あなたの底力をっ! 【クトゥグァ】!」
〈いいのだな? ……では〉
炎の巨人から、炎の触手とでも呼ぶべきモノが何十本も生えて、アルマに向かっていく。
あの触手一本一本から、とんでもない熱を感じられる。アルマが触れれば、即座に灰と化すだろう。
「っ……はぁぁぁっ……!!」
その触手たちを、精霊魔法と二枚舌による複数の攻撃魔法一斉発射によって、アルマはすべて迎撃し続けている。
炎弾が、水弾が、氷柱が、雷撃が、光弾が、風の刃が、闇の触手が、岩弾が、無色の魔力弾と、全属性が混じった虹色の弾に、中級魔法と思われる炎の爆弾が、触手を弾いて辛うじて防いでいる。
扱える全ての魔法を強化し、同時に発射してようやく迎撃可能。少しでも手を抜けば即押し切られる。
あんな状態じゃ、おそらく10秒程度で魔力が尽きる。
今からの10秒が勝負だ。どうする、アルマ。
「ふっ……!」
「っ!? は、速いわね!」
大地剣を解除し、【暴風剣】へ切り替えて速度特化の状態になり、とにかく距離を詰めるべきと判断したようだ。
距離が近ければ自滅の危険性があるため、アルマママもうかつに攻撃魔法を使えない。
そうなれば、近接戦闘にもっていかざるを得ないはず。その判断は間違いじゃない。
ついにアルマママを捉え、剣をその身体に向かって振るうことができた。
「っ!」
「うふふ、まさかここまで追い込まれるとはね」
杖で、アルマの剣を受け止めるアルマママ。
本来ならば、魔法使い系の職業の膂力なんか近接特化の剣士系の職業には遠く及ばない。
距離を詰められた時点で、半分詰んでいるようなものだ。
だが、アルマママの能力値を侮ってはいけない。
なにせレベルが96もあるもんだから、素の筋力がパワー特化のヒューラさんと同等以上というとんでもない細マッチョぶりなのである。
本来あくまで戦闘補助程度の威力しかない杖術が、近接特化の職業に引けを取らない、いやむしろそれ以上に強力な戦闘能力を有している。
「ああぁぁああっ!!」
「私の半分程度のレベルとは思えないくらい、速く、重い攻撃ね。でも、そろそろバテててきたんじゃないかしら?」
鍔迫り合いにまで追い込んだが、あと一歩が遠い。
アルマママも【気功纏】を使って腕力を強化しているようで、押し切ることができないようだ。
限界まで気力を消費しているようだが、それでも、あとほんの少しの力の差を埋められない。
歯痒い。なんて、近くに見えるのに、なんて、遠い一歩なんだ……。
「そろそろおしまいかしら。……よく頑張ったわね、アルマちゃん」
「……ル………」
「……え?」
「……パイル、バンカァァァァアアアッ!!!」
ズドンッ! と聞き慣れた音があたりに響いた。
毎日毎日聞いている音。俺が初めて作った、俺だけが使える技の発動音。
魔力を固め、勢いよく突き出すだけの単純な技だが、魔力操作が使える人間にしか使えない技だ。
「きゃああぁあああ!!?」
鍔迫り合いの状態から、アルマが、剣を握っている手の甲から魔力パイルバンカーをアルマママにブチ当てた。
……まさか、魔力パイルを使えるようになっていたとは……! 俺が使ってるところを何度も見ているうちに真似できるようになったのかな。
…………あれ、ホントに俺の立場無くね?
「……あたっ……た……」
か細い声で呟いて、そのまま地面に倒れた。
魔力も気力もすっからかんになったから当然か。……ここまでして、ようやく一撃入れられたのか。
「アルマ!」
倒れこんだアルマを起こし、意識を回復させようと魔力を補給していく。
よくやった。本当によくやった。キンボシ・オオキイである。
……先を越されてちょっと悔しくもあるが。
「うふふふふ………ふふふふふ………」
アカン
魔力パイルを当てられた腹部をさすりながら、こちらに近付いてくるアルマママ。
笑顔が怖すぎて直視できねぇ! まさか一撃入れられたことがショックで錯乱してるのか!?
待って、もうこれ以上は無理だから! 戦えないから!
てか、アルマママHPがほとんど減ってない!? 今の一撃でも大して効いてないってのか!
「ちょ、ちょっと待ってくださ――――」
「アルマちゃぁぁぁぁあん!! 本当に強くなったわぁぁぁああっ!!!」
満面の笑みで、気絶しているアルマを抱きしめ感激の声を上げている。
「私に一撃入れられた人は、デューク以外じゃ数年ぶりよ! さすが私の娘よ! 天才! 超天才よあなた!」
「あの、ルナティアラさん、締まってます。また締まってますから!」
「この傷は治さないわ! 記念にとっておかなきゃ!」
「傷をどうやってとっておくのだ……」
半年前のように、アルマを力いっぱい抱きしめてはしゃぐアルマママ。また呼吸停止しかねんからやめてください死んでしまいます。
アルマパパが呆れたように呟きながらも、どこか嬉しそうに微笑んでいるのが見えた。
アルマの成長を喜んでいるのか、……それとも普段頭の上がらないアルマママに一撃入れられたのを見て内心スカッとしてるのか。多分両方だな。
……俺もウカウカしてると、先を越されたまま置いてかれるかもしれないな。
こりゃ急いで強くなる方法を考えないとまずそうだ。
ウチの子たちの才能がありすぎてつらい。こんだけ強くなってもすぐに追いついてくるし。
「あと、アルマちゃんを応援するのはいいけど、ぶっ飛ばしてやれとか聞こえた件についてあとでお話ししましょうか、あなた」
「な、なんのことかなー……?」
あ、やっぱ聞こえてたんすね。
口は災いの元。生きろ、アルマパパ。
お読みいただきありがとうございます。
>一番ヤベー班って、合ってるけど…。―――
主にヤバいのが主人公、ではなく教官二人の娘だったという。
アイザワ君もアルマを自分のものにするには、アルマの両親であるこの二人もいずれ倒さなくてはいけないと考えているようだったのであえて自分からばらしたようで。
……結果、組手が地獄化。イ㌔。
>パパさん『爆破オチなんてサイテー!』
カニファン、二期ディスク販売されないかなー。
なお爆発を喰らったのは主人公だけという。
>勇者がリスポーンする祭壇は破壊されたり――
できません。破壊も移動も不可能です。神様の魔族に対する容赦のなさよ。
しかも祭壇の中には魔族が入れないのでリスキルもできないという。なんというご都合主義。
あと変な装備を持たせるのはラディア君の予定ですが、勇者君にももたせたほうがいいのかな……?
>ヒカルのところだけ班名が班名じゃない…―――
それでも通じる不思議。ナンデダロウネー。
アルマパパには結局一撃入れられず。そしてアルマに先を越されるという。
多重〇分身……今思うとあの術も大概チートですよねー。というか最終的にアレ抜きでも主人公が強すぎる。
他の班の覗き見は近いうちに書きます(断言)
>本編ではなく、下の欄外?感想に対する返事のところで誤字発見です。――――
ウギャァァアア(;´Д`)
誤字報告できない部分のご報告、誠にありがとうございます……!!
>いつも更新お疲れ様です。やっぱ大変すか修行パート?―――
大変なのは修業パートの執筆ではなくリアルの書類製作な件について(;´Д`) おのれIS〇(伏字の意味なし)
ですが頂いたご意見は非常に助かりました。執筆の際にとても参考になります。
気が向かれましたら、遠慮なくバンバンご意見を送ってくださると嬉しいです(*´∀`)ありがとうございます!
>自爆はないっすわー、いや、強者との対戦で覚醒して強くなるのオカシイ―――
なお、自爆してもまだ足りなかった模様。
変な装備に関しては、……魔石地雷と大差ないものとだけ言っておきます。というかほとんど変わらな(ry




