各班の組手実況
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今回はアルマパパ視点です。
――ラディア班――
「がっは!…………ま、だ、だぁ…ぁぁ……!!」
「……まだ折れないか。いいぞ、そうでなくてはな」
組手の際に、ラディアスタことラディア君のみぞおちに勢いよく木刀を叩き込んだが、呼吸困難に陥りながらも掠れた声を上げながら立ち向かってくる。
痛みに慣れているのか、多少の打撲や骨折程度ではまるで怯まず戦い続けようとする。
ううむ、この根性は死にやすくなる短所でもあるし、予想外の動きで勝利を引き寄せる長所でもあるな。
多少のダメージは覚悟のうえで、相手の攻撃をあえて受けながら相手の急所を狙ってくるスタイルのようだ。
過去の勇者が『肉を切らせて骨を断つ』という言葉を残したらしいが、まさにそれだな。
問題は、致命傷を受けることすら厭わず突っ込んでくるものだから肉を切らせるどころの騒ぎではない、ということだが。
せめて内臓や重要な血管などを傷つけられないようにする術を身につけなければ、この子は早死にしてしまうだろう。
まったく、教えがいのある生徒だな。
死にやすいという弱点を克服した時に、ラディア君はあらゆる攻撃を無視して相手の喉元を刃でかき切ることができるようになる。
その刃は、おそらく魔族に対する大きな武器となるだろう。……ふふふ、将来有望でなによりだ。
「シッ! しゃぁっ! でぇぃっ!!」
「おおっと、やるじゃないか! いやぁ危ない危ない!」
「余裕そうに言ってんな!」
短剣術と拳法がこの子の攻撃の要だが、靴の底にナイフを仕込んで伸魔刃で攻撃してきたりと型破りな工夫もしていて実に面白い。
この子は伸びる。修業を終えた時にどれほどのものに仕上がっているのか楽しみだ。
「スゲー戦い方してんなアイツ」
「……私たちも負けてられん。ラディアが倒れたら、もう一度やるぞ」
傍で見学しているバレドライ君とラスフィーン君も、ラディア君の根性が伝播したかのように疲労困憊の身体に鞭打って再び私に挑もうとしているな。
基礎レベルこそ低いが、この班は決して足手纏いにはならないだろう。
……私相手に力を使い果たしてルナティに殺されなければの話だが。生きろ。
――アイザワ班――
「うおおおぉぉおおおああああああ!!?」
「ほらほら、足を止めちゃだめよー? あと、スキル技能は使い過ぎるとすぐにスタミナ切れになるから使いどころを考えなさーい」
「……剣王様よ、向こうが地獄絵図なんだがアイツ下手したら死ぬんじゃねぇか?」
「大丈夫、ルナティはうっかりで生徒を殺すほど教え下手じゃないさ。多分」
「多分……?」
ルナティがアランシアンことアラン君に向かって攻撃魔法の豪雨を降らせている。
降っているのは水滴ではなく特大サイズの火球だ。あの一発一発がただのファイアーボールというのだから恐ろしい。
ルナティの使えるマスタースキルの中に【パラレル・マジック】というものがある。
同じ攻撃魔法ならば何発でも同時に放つことができるという瞬間火力特化のスキルで、その気になれば攻撃力5ケタを軽く超える火力を叩き出せる反則技だ。
さすがにそこまで極端な使い方はしていないようだが、それでも中堅職には荷が重い威力だろう。
アラン君の【マギ・バニッシュメント】の効果を貫通して、次々と魔法が命中していく。
……大丈夫だよな? ちゃんと死なないように加減しているんだよな? 手足が火傷通り越して炭になりつつあるように見えるのだが本当に大丈夫なのか……?
「はっ……こんな、もんかよ。ジジイの、しごきのほうが、まだ何倍もきつかったぜ……」
「あらあら、頑張るわねーうふふ」
「この程度で、へこたれてちゃ、……アルマを……」
「んー? アルマちゃんがなにかしら?」
ほほう、続けたまえ。
「アルマを、手に入れるには、まだ足りねぇ……!!」
「あら、あなたアルマちゃんを狙っているのかしらー?」
…………………。
うむ、さすが私の娘だ。
彼が魅了されるのも無理のない話なのだろう。うん。
「ルナティ、手ぬるいぞ。今の2、3倍のペースで撃ってやれ」
「うふふ、もちろんよー。それじゃあアルマちゃんにふさわしくなれる逸材かどうか、試してみましょうねー」
「じょ、上等だ、きやがれ……!!」
十数秒後、派手に吹き飛ばされて宙を舞うアラン君の姿が目に映ったが不思議と心配する気持ちは薄かった。なぜだろうね。
――勇者班――
今日はパーティの連携を鍛えるために全員で挑んでもらっている。
この班は特に連携が大事だからな。他の班はパーティじゃなかったりするし。
「しっ、はっ! てぃっ! せやっ!」
「ほほう、さすが勇者というべきか。まるで刃を交えるたびに強くなっていくかのようだ」
「そりゃどーも! 真剣相手に木剣であしらわれてる身としちゃ嫌味に聞こえるがな!」
「グレイブ・ランス!!」
「こらこら、マスタースキルを使うタイミングが雑過ぎるぞ。これでは足止めにもならん」
「ぶ、ブラックボ――」
「遅い。魔法使い系の職業にしてはよく動いているほうだが、魔法を使う度に動きが鈍くなっていては意味がない」
「ネオラ! オリヴィエが魔法撃とうとしたら遠当てでまた死んだわ!」
「なら切り替えろ! 戻ってくるまで二人でしのぐぞ!」
うむ、悪くない。
アイツェリーナさんに鍛えられただけあって、なかなかどうしてよく動く。
オリヴィエ君はとにかく動き回りながら自分が狙われないように立ち回り、機会を見て遠距離から魔法を撃つ役目が主なようだ。
そこそこいい動きをするが、魔法を撃つ際に照準をつけるためか動きが鈍る。
そこを魔刃・遠当てで狙われたりしたら、ご覧の有様というわけだ。
クイックステップや縮地を使いながらでも、魔法を任意の場所へ撃てるくらいの器用さを身につけたらとても厄介そうだが、短期間の修業ではちょっと厳しいかもな。
レヴィアリア君は戦いの状況をよく見る能力に優れている。
いち早く状況の変化に気付き、それに対処するために情報伝達を欠かさない。ネオライフ君よりもリーダー向きかもしれないな。
ステータスはまあまあといったところだが、妙な動きで意表を突くことがあり実力以上の成果を出すいい戦士だ。
欠点は少々攻撃の決め手に欠けることか。まあ火力担当は他二人が務めているようだし、サポート特化としてみれば問題ないか。
そして肝心の勇者ネオライフ君だが、可愛らしい見た目とは裏腹にステータス自体はかなりのものだ。
戦闘用スキルの種類が豊富で、特に剣術と拳法と攻撃魔法が優れている。
それらを組み合わせて、他にはできない戦術を編み出すのがこの子の課題だな。
既にマスタースキルを4つ獲得しているだけでも大したものだが、この子の才能はこんなものではない。
ジョブチェンジでさらに修業を重ねれば、いずれ私を超えるだろう。
「がはっ!?」
「……問題は、死ぬのに慣れ過ぎて致命傷を負いやすくなっていることか。それはそれである意味すごいが」
「ネオラまで!? ち、ちょっと! 私一人でどうしろっていうのよ!?」
「戻ってくるまで一対一で組手を続けよう。ああ、なるべく死なないように加減はするから大丈夫だ」
「なるべくってなによ!?」
近くに再召喚用の祭壇があってよかった。
さて、今日は何回彼らを死なせてしまうのか……。
――一番ヤベー班――
ヒカル君との組手が一番神経を使わずに済むな。
なにせどれだけ打ち込んでもケロッとしているものだからうっかり殺してしまう心配がないのだから。
「うらぁぁあああがぁぁああああっっ!!!」
「ふふはははっ! なかなかの気迫だが気合だけじゃどうにもならんぞ! ところであの大槌は使わないのかね?」
まるでSランク上位の魔獣の如き気迫と膂力で手足を振り回し、同時に目に見えない魔力の杭を撃ち込んでくる。
スタミナを消費し、一時的に膂力を大幅に強化する術を編み出したらしく、まともに打ち合えばおそらく力負けするだろう。
レベル40台のアルマやレイナ君ですら、その術を使えば特級職に引けをとらない攻撃を繰り出せる。
ましてやヒカル君はその術の開祖だ。おそらく膂力だけならばあの鬼神にも迫るとみた。
だが、いかんせん実戦経験が乏しいせいかどうにも動きがぎこちない。
正面から攻撃がかち合うことになれば向こうが押し勝つだろうが、受け流すように少し軌道をずらしてやれば問題なく捌ける。
ヒカル君が魔力パイルと呼ぶ不可視の杭を撃ち込む技も、よく観察すればなんとなくどこから繰り出されるのか察知できる。
思考中、不意に爆発音が耳に響いた。
「おおぅっ! 危ないな!」
近接攻撃だけではなく、私の周りにはヒカル君の魔力と思われる見えない『何か』が常に飛び回っており、そちらにも意識を向けていないと隙を見せた途端にそれが爆発を起こして攻撃してくる。
その威力たるやルナティの魔法に引けをとらないほど強力で、まともに喰らえばただでは済むまい。
常に複数の標的を警戒せねばならないので、なんとも戦いづらい。
だが、それでも対処できないほどではない。
ルナティと喧嘩する時など、近接の杖術と攻撃魔法を同時に繰り出してくるのが当たり前で、それらを捌くことに比べればまだ容易い。
初日とは少し戦い方を変えてきたようだが、正直言って劣化しているように思える。
その大きな要因はやはりあの大槌を振るっていないことだろうな。
槌頭が爆発を起こし、その勢いを推進力に変えて振るわれる大槌は、正直言ってかなりの脅威だ。
剣術スキルの【魔刃・疾風】に近い効果が得られるが、比較的軽い剣ではなくあの超重量の武器が勢いよくこちらに振るわれるたびに肝が冷える思いだった。
空振りに終わってもすぐに爆発を起こし軌道を修正し、慣性を無視して追撃を放ってくる。
魔刃・疾風と違って次の発動までのタイムラグが全くないうえにあの威力。言うならば一撃必殺の攻撃を連続で放ってくるようなものだ。
その武器を振るわず、魔力と気力の操作のみで戦うのは正直言って悪手だ。決め手に欠ける。
それとも、武器の扱い以外の部分を鍛えるためにあえて無手で挑んでいるのか?
「シィァァあああっ!!」
と思っていたら手元から急に大槌が現れて、そのままこちらに振り回してきた。
まるで装備を切り替えながら振り回してくるネオライフ君のように。
本来、勇者のみが使えるメニュー機能とやらを彼も使えるというのは本当のようだ。
異世界では誰もがこのような能力を持っているのだろうか? 便利なものだ。
「やっと武器を出したな。先ほどまでの戦い方ではダメだと気付いたのかね?」
「いえ、基本は変わりませんよ」
? なにを言っているのかな?
……っ!?
「はぁああっ!!」
「くっ……ははは! 面白い!」
ヒカル君が素手で攻撃を繰り出すのと同時に、大槌がひとりでに飛び回りこちらに攻撃してきた。
まるで見えないなにかが大槌を振り回しているかのようだ。というか実際そうなのだろう。
まさかあれほどの重量物すら浮かばせて操ることができるとは。
爆発も問題なく発動できるようだし、実質ヒカル君を二人同時に相手しているようなものだなこれは。
魔力操作を自分の手足を動かすようにできる彼だからこそできる戦い方だ。
無手の素早さと大槌の破壊力。両方を織り交ぜたいいところどりの戦法。なんともえげつない。
ヒカル君の猛攻に徐々に追い詰められていくのが自分でも分かる。
魔刃と魔刃引き以外の技能を使うつもりはなかったが、こうなるとそうも言ってられんな……!
魔力の剣を作り出す天剣術スキル技能【魔造剣】を使い、木剣と同時に振るう双剣術に切り替える。
「ぎいぃぃぃいっ……!!」
「ふぅぅっ……!」
……彼との組手はまだ二回目だ。
だというのに、まさか早くもここまで本腰を入れることになろうとはな。
これは、ルナティと二人がかりで相手をしなければならない日も遠くないかもしれない。
「かぁあっ!!」
「はぁっ!」
彼の手刀と魔力の剣がかち合い、金属音を響かせながら火花を散らす。
私の攻撃力の半分ほどの攻撃力補正をもつ剣を手刀で受け止めるあたり、どれほど異常な能力値かが窺える。
大槌や不意打ちの攻撃を考えると鍔迫り合いもできないし、本当に厄介な相手だな。
やれやれ、この班が一番体力を使うな。
一番組手が楽しい班でもあるのだが、とにかく余裕がない。
息切れしそうになるのはいつ以来だろう。
……そろそろルナティと交代するか。ここまで疲れたのは久しぶりだな。
「っ!!?」
私とヒカル君の動きが、急に止まった。
ヒカル君が、自分ごと私の身体を魔力で縛り付けているようだ。
なにをする気……まさか。
「すみません、デュークリスさんに一撃入れるのにこれくらいしか……」
動きの止まった私とヒカル君の間に、閃光が走った。
……まさか自分ごと爆発に巻き込む道連れ攻撃とは、な。
お読みいただきありがとうございます。
>言っちゃった。これはもうラディア君に強化外―――
……近日中に当たらずとも遠からずな物を渡す予定な模様。
さすがにそこまで極端な物ではないのですが。
>エグい技かぁ…次はどんな技が出てくるのやら楽しみ?です―――
といっても大槌を魔力操作で振り回すだけの技な模様。
ただし、両手がフリーになった状態で高火力の武器を叩きこめるのはなかなかヤバいかと。
……もっと派手な技を期待されている方は申し訳ない。それもう少し後の話なんですよ。
作中時間が半年でも、現実じゃその3倍経っているという恐怖。
>だめですよそんな殺すなんて―――
そっちのがヤバい。というかえぐい。
そこまでするのはよっぽど腹が立った相手にしかやらないでしょうねー。
>ラディア君、そのうち片目が赤くなって眼帯を―――
目覚めちゃいけないモノに目覚める予定はないです。
龍〇伝の技も使えません。ただ主人公から変な装備を渡される予定があるだけです。
>え?魔力爆発を応用し爆発力と遠心力で大地さん―――
今はまだ大槌頼りの戦法しか開発していませんが、後には……
あと〇裂拳とか器用な技も使えません。天〇活殺は飛び道具じゃありません。
>いっその事、若き日のアルマのご両親が鬼先生に挑んだ閑話的なのを読んでみたいです。
閑話の課題が溜まっていく(;´Д`)
いつか書いてみたいですが、面白く書けるかどうか……。
>アルマにあいざわについて聞いたら女性陣からジト目でにらまれると思う―――
というかちょっとした逆ハー状態。
勇者はもう諦め気味のようですが、アイザワ君はまだ手に入れる気満々のようで。




