地獄開始
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……黒竜が殺されなかったのは運がよかったというか、あのお二人にまだ話を聞いてくれる理性が残っていたからだな。
『黒竜の飼い主のせいでアルマが危険に晒されたのは、アルマに協力を要請した自分の責任でもある』
『ならば、その俺が直接黒竜とケリをつけるべきです。ここであなた方が仕留めたら筋が通らない』
『あと、あんまり勝手なことしてるとアルマが怒りますよ』
などと必死に説得した結果、なんとか俺も黒竜も半殺し程度で済んだ。
ていうか、アルマに怒られるって言った瞬間にピタッと止まった。ちょっと娘に甘すぎませんかね。
なお、いつまでも口喧嘩をやめない俺と黒竜をアルマが直々に注意した際に、黒竜の口から御両親が俺までボコったことをチクられた模様。
それからしばらくお二人に対して口も利かずに静かに怒っていました。
御両親、娘に無視されることに耐えかねて腰をほぼ直角に曲げて俺に謝ってきたけど、かえってリアクションに困るんですが。
この二人が頭を下げて謝罪するのはこの子が絡む時ぐらいじゃなかろうか。
……正直、お二人にボコられてちょっと気が晴れた部分もある。いや痛いのが好きとかそういう趣味があるわけじゃ(ry
アルマに危害を加える奴は誰であろうと許さない。そう決めた俺自身が彼女を殺しかけたことを、どうにも引き摺っている部分があった。
アルマは許してくれたけれど、俺自身が俺を許していなかったんだ。ボコられて罪が許されるわけでもないけど、そのことを清算するために誰かに思いっきり殴ってほしかったんだと思う。
言ってしまえば単なる自己満足にすぎないんだけどねー。
別に望んでボコられたわけじゃなくて、単に口を滑らせた結果自滅しただけだし。
あと、黒竜と慣れ合うつもりは微塵もない。
あの件に対する詫びは一切受けていないし、たとえ御両親にリンチされた末に謝罪なんかされても困る。
俺があのクソトカゲをボコってケリをつける。……でなけりゃあんな奴を庇うような真似したくないわクソが。
そしてできればもっと『採って』おきたい。尻尾だけじゃまるで足りん。
尻尾だけでもウチのパーティ全員が厚切りのステーキを食えるくらいの肉は充分あるだろうが、次に戦り合う時はモモ肉とかリブロースとかサーロインとか手に入れたい。
肉だけじゃなくて、たとえば鱗なんかは装備品の材料になりそうだな。尾の先の部分なんかは短剣の材料によさそうだ。
採る時は死ぬほど痛いだろうが、それも報いということでひとつ。
で、今後についての話だが、なんか知らん間にアルマの御両親の下で鍛錬をする流れになっているそうな。
黒竜とじゃれあっている間にそんな話になってたの?
いや、御両親が言うには元々勇者君たちを鍛えるついでに、見込みのありそうな人材も何人か育てるつもりだったらしいが。
あの大会も、言ってしまえば魔族に対抗し得る人材を集めるための大々的な宣伝に過ぎなかったらしい。
王都に攻めてきた魔族軍は総数100人程度だったが、そのどれもがLv50を超える強敵揃いだった。
魔獣と違って人間並みの知能があり、さらに武器と魔法どちらも使いこなす厄介な軍団だ。
極端な話、魔法剣の使えないパラディンの上級職クラスが集団で攻めてくるようなもんか。…なんかそう言うと強いか弱いか微妙だな。
レイナの仕掛けた魔石地雷や、あの白魔族の攻撃で散り散りにならなければ相当な脅威だっただろう。
……今考えるとあの白魔族、相当アホだったんじゃなかろうか。せっかくの戦力を自分で削ってどうするよ。
たしか、近接戦闘関連のスキルも拳法と格闘術しかなかったしな。……あいつ、落ち着いた印象とは裏腹に中身は脳筋だったのかもしれない。アホス。
まあそんなこんなで今後しばらくは御両親に鍛えられることに。
と言っても毎日御両親相手に鍛錬するわけではなく、組手→レベリング→レベリング→休み→組手という具合にローテーションを組んで鍛錬するそうな。
筋トレなんかの基礎錬は各個人ごとのペースに任せるらしい。要するにそんくらいは自分でどうするか考えろってことか。
組手をする際はグループを大きく4つに分けて鍛錬することになるらしい。
まず勇者一行の3人。
次にアイザワ君・ヒューラさん・ガザンギナンドさんの3人
そしてバレドライ・ラスフィーン・ラディア君の3人。
で、最後に俺たち3人+1羽といった具合だ。
内容としては、アルマパパが近接戦闘を徹底的に鍛えてスキルをレベルアップさせるだけではなく、むしろスキルではフォローしきれない部分を重視して鍛えるつもりだそうな。
スキルに頼りきりになると、直感で自然と無駄な動きをなくした立ち回りをするようになってくるらしいが、ある程度強力な相手になると直感に頼り切るのはかえって危険だかららしい。
元々スキルを使えない俺にとっては、渡りに船とも言える鍛錬だな。……鬼先生は教えるのが壊滅的に下手だし。つーか喋れねぇし。
で、アルマママは対魔族相手の立ち回り、すなわち魔法と近接戦闘の複合攻撃に対応できるように鍛錬するらしい。
魔法使い系列の職業だし、近接戦闘なんか大したことないとか思う人もいるかもしれないが、この人は別だ。
なんせ筋力が1200を超えてるからな。パワー特化のヒューラさんと同等とかどういうことなんですかね……、
さらに知能は素の状態で3000近い。単純計算でアルマの約6倍だ。
しかも補助魔法を使えばもっと強化されるという恐怖。多分、御両親がサシでやり合っても魔法が使える分有利なアルマママが勝つんじゃなかろうか。怖ひ……。
……鬼先生と同じLv96というのは伊達じゃないな。ちなみにアルマパパはLv94だった。
ギルマスめ、なにが今じゃLv70超えてるだ。その二回りも上じゃねーか。
いや、まあ、まさかこんな怪物になってるとは予想できなかったかもしれないし、責めることはできんな。うん。
レベリングはグループごとに違う場所で行う予定だ。
勇者一行とアイザワ班はLv50~70、ラディア班はLv30~60、俺班はLv60~80くらいの魔獣を狩ることを目標にレベリングする。
最終的には上限クラスの魔獣を安定して倒せるくらい強くなることを目標にレベリングする模様。
死に戻りができる勇者一行はともかく、他の班は大丈夫なんですかね。特にラディア班。死ぬな。
勇者君はレベルキャップに達した時点でジョブチェンジできるように、色々面倒くさい準備に取り掛かると言っていた。
御両親いわく、ジョブチェンジに必要な称号を獲得できるように既に手は打ってあるらしい。
……どんなエグい魔獣と戦わされるのやら。頑張れ勇者、負けるな勇者。
「ああ、あと途中からヒカル君には私とルナティの両方と同時に戦えるように鍛錬してもらうから、頑張ってくれよ」
「……はい? え、いや、はい? え?」
……脳が理解することを拒否しているのか、素っ頓狂な返事しか口から出てこない。
それはもしかしなくても死刑宣告じゃありませんかね。俺まだ死にたくないんですが。
「それだけヒカルさんに期待しているんですよ。大丈夫、あなたの成長の早さならきっとすぐに強くなれますよ。ウフフ」
いや無理だろ。 どう考えても命の危険しかないだろ。
嫌でござる! 絶対に嫌でござる!
あああ! ちょっと、引き摺らないで!
タスケテ! アルマ助けて! ヘルプ! ヘェェェェルップ!!
お読みいただきありがとうございます。
>急所蹴りで止めるのかな?
ゴスッ!! はやめて差し上げろください。
何気にアルマは主人公に一度も急所蹴りをしていないという。なおレイナ。
>なお、強さがあって料理が非常に上手いと―――
勇者君が鬼先生に師事するにはジョブチェンジするのが最低条件でしょうね。気力操作でも使えれば話は別ですが。
あとだからこれモンハンじゃねーから! 天麟も宝玉も出ないから!
でも逆鱗はいい素材になるという。剥がす時に死ぬほど痛いけど。
>ギャグで終わらそうとするあまり登場人物が―――
ご意見ありがとうございます。
前話だけ見ていると筋違いな言動や行動が目立つので、そう思われて当然ですねー(;´Д`)
一応、大会当日はほっとくとヤバい依頼を受けていたので来たくても来られなかったという理由があったりします。
あと洗脳対策に関してはよく聞かされていたのに、対策を怠っていたアルマにも落ち度があるとも言えますね。
対策の付呪装備はかなりの値段になるのでなかなか手が出なかったけど今後はそうも言ってられないと洗脳されたヒカルを見ながら言っていたり。
>威圧描写って何気にすごい表現力を求められるよね。―――
天丼するとあんま凄さが伝わらないという事実。
しかしあの場で暴れさせるのも難しく、泣く泣くあんな二番煎じの描写に。
アルマ両親のヤバさは今後のお話で上手く表現できたらなぁと思いつつもその自信が無いという(;´Д`)ドウシヨウ
>仮面が練習を兼ねて黒龍に正拳突きを放つも―――
あの後、普通に止められた模様。
お互いに不完全燃焼なので、いずれ決着はつけるつもりのようですが。
>いやぁ、黒竜は強敵でしたねー(目逸らし)―――
過去形になってて草。霧が出てきたな……。
決着はまた後日ということで。




