瞬殺試合
新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。
お読みくださっている方々に感謝します。
今回始めはアイザワ君視点です。
「それでは、中堅職の部第三試合を開始します! チャラゴウバ選手と、アランシアン選手は定位置まで移動してください!」
……クソ、時間短縮のために他のリングで第四、第五試合も同時進行してやがるな。
アルマの試合を見物したかったのに、タイミングが被っちまいやがった。
「ヒヒヒィ……神様にお祈りは済ませたかぁ、坊ちゃんよぉ……!」
正面でブツブツなんか言ってるけどどうでもいい。
モタモタしてると、向こうの試合が始まっちまう。
「あ、あの、準備は――」
「いいぜぇ」
「早く始めろ」
「ひっ、は、はい!」
確認する必要なんかないだろ愚図が。
さっさと開始の合図をしやがれ。
「で、では、試合開始ぃっ!!」
複数のゴングが同時に鳴ったのが聞こえた。
向こうのリングも試合が始まっちまったみたいだな。……仕方ねぇ、さっさと終わらせてからじっくりアルマの試合を観戦するか。
「どこ見てんだぁ!? 隙だらけだぜガキがぁ!!」
モヒカン野郎がクイックステップと【魔刃突穿】を使いながら突進してきた。
狙いは俺の心臓か。
牽制もフェイントも無し。避けられたり攻撃を防がれたりした後のこともまるでイメージしてねぇようだ。
こんなクソみてぇな一撃で、俺を仕留められると本気で思ってんのか?
美点がまるで見つからねぇ。ゴミクズに相応しい攻撃だな。……いや、一つあった。
無駄に時間をとらせずに終わらせたことだけは褒めてやるよ。他は全部ゴミだけどな。
突きの剣身の側面に俺の剣を滑らせ、軌道を変える。
「おおっと! まぐれにしちゃやるじゃ――」
突きを逸らされ体勢が崩れて、隙だらけのモヒカンの首を刎ねた。
モヒカンはなにが起こったのかも分からなかったようで、間抜け面を晒したままの頭と泣き別れになった身体を地面に預けた。
話にならねぇ。これなら雑魚のゴブリンでも狩ってたほうが訓練になる。
「え……? あ、え、ち、チャラゴウバ選手の、死亡と蘇生を確認! 勝者、アランシアン選手!」
数秒遅れて審判が判定を下したのが聞こえたが、分かりきった結果だ。クソどうでもいい。
それよりアルマの試合は――
「………あ?」
アルマが、リングにいない?
いや、よく見るとリングから控室に向かっているのが見える。
おい、ちょっと待て。さっき同時に戦い始めたはずだろ? まさか、棄権? なにか問題でもあったのか?
「す、すげぇ、アランシアン様も、あのアルマティナとかいう女の子も、一瞬で勝負を決めちまった……!」
「あの女の子、いったいなにをやったんだ? 剣を構えたかと思って、気が付いたら相手の後ろまで移動してて、相手の首が落ちてたんだが……」
観客の呟きを聞いてみたが、どうやらアルマは棄権したわけじゃなくて、相手を瞬殺して試合を終えていたようだ。
速攻で勝負を終わらせた俺よりも、さらに早く。
「……マジかよ」
思わず声が漏れた。
お前は、そこまで強いのか。
お前は、どこまで俺の気を惹かせるつもりなんだ…!
やはりお前は興味深い。
ああ、クソ。早くお前と戦いたい。こんなにもどかしく待ち遠しい気分は初めてだ。
もう、他の試合なんかどうでもいい。……我ながらガキみてぇだな。
思考に耽りながら控室に戻っていると、誰かが駆け寄ってくる足音が聞こえてきた。
「死ねぇっぇぇええええああああ!!!」
なんだ、さっきのモヒカンか。自分の負けを認められずに逆恨みでもしてるのか、血走った目を見開き剣を振り回しながら突進してくる。
ここはリングの外だ。つまり、もう合意のうえでの決闘とは認められないし、死んでも蘇生はできねぇ。
それを分かったうえで、俺に襲いかかってきてるんだよな?
「そんなに死にたいなら望み通りにしてやる」
「か、かひゅっ……!? かっ……あっ……」
もうコイツの剣に障るのも面倒だし、剣をこっちに振るう前にすれ違いざま速攻で喉を切り裂いた。
まるで食用の家畜を血抜きするかのように、首から血が噴き出した。
こいつの肉なんざ食う価値なんかまったくねぇがな。つまり、こいつは家畜以下ってわけだ。
せいぜい長く苦しめ。運がよけりゃ回復魔法が間に合うだろうよ。
~~~~~勇者視点~~~~~
≪あ、さっき斬られたモヒカンさん、神聖職の人に大慌てで回復魔法かけられた甲斐あって間に合ったみたいですねー≫
チッ よかった、死なずに済んだのか!
≪今心の中で舌打ちしませんでしたか!?≫
きのせいだよー。ほんとほんとー。
≪……手心を加えて瞬殺しなかったあの子のほうがまだ勇者っぽいですよ≫
あんな口の悪い勇者がいるか。
≪ネオラさんも怒ったら大差ないですけどねー≫
ああ、緊張するなぁ。トーナメント表じゃ一番端っこの試合だから、待つ時間が長い。
そのせいで、ソワソワする時間が長くて逆に落ち着かない。
≪レヴィアさんとオリヴィエさんの試合でも応援してたらどうですか?≫
そう思ったけど、よくよく考えたらあの二人が勝ち進むってことはいずれオレと当たるってことじゃん?
そう考えると素直に応援できないというか、なんか気まずいというか…。
≪つまり負けてくれたほうが安心できると? 酷いです。鬼です。ドSです≫
やかましいわ! そこまで言ってねぇし、そこまで言われる筋合いねぇよ!
≪勝ち上がってきたのなら、本気でぶつかってあげればいいんですよ。死んでもすぐに蘇生されますし、遠慮はいりませんって≫
いや、死んでも生き返るのはいつものことだろ。
≪そうですねーアハハ。………あれ!?≫
ん、どうした?
≪お、オリヴィエさんが、負けてしまったみたいです……≫
え。……そ、そうか。まあ魔法専門の職業だし、前衛無しで戦うのは厳しかったんだろう。
≪ほら、ネオラさんが負けたほうがいいなんて言うからー≫
言ってねぇっつってんだろ! なんかすごく申し訳ない気分になるからやめてくれ!
にしても、オリヴィエに勝ったのは誰だ? 後衛職で不利とはいえ、そう簡単に勝てるほどオリヴィエは弱くないぞ?
≪対戦相手は、『レイナミウレ』さんだそうです。こないだの騒ぎの時に、アルマさんと一緒に食べてた人ですね≫
レイナミウレ……あの金髪幼女か。
『毒華くノ一』って職業だったけど、あれってどんな職業なんだ?
≪忍者系列の職業です。アサシンに近いスキル構成に加えて【忍術】スキルや【罠】スキルを取得しています。特に忍術スキルはトリッキーというか、初見じゃ対応が難しい技能が多くて下手したら秒殺される可能性もありますねー≫
忍者かぁ。忍術スキルはオレは獲得できないレアスキルだし、そのことを踏まえても是非仲間に加わってほしかったんだがなぁ。
……見た目が幼すぎて、正直、異性として見るのは背徳感を覚えるけど。
≪衛兵さん、この勇者ロリコンです。ペド野郎です。逮捕はよ≫
誰がペドだゴルァ!! つーかあの子オレと同い年だろうが!
って、メニューと脳内会話してるうちにオリヴィエが戻ってきたな。
ああ、ほらほら、泣かないの。オリヴィエはよく頑張ったよ。こんな日もあるさ。
……いずれその子とも当たるだろうし、敵討ちとは言わないがオリヴィエの分も気張っていきますかね。
おっと、もうオレの出番か。あー、やっぱ緊張するなぁ……。
お読みいただきありがとうございます。
>こんだけ濃いのに主人公が一振りしたらほぼ壊滅するんだろうなぁ…三下臭がしてきたぞ…
それは子供たちが必死に頑張ってるところに大人が割り込んでくるようなもので(ry
>なんでこんな覚悟完了してんのラディアスタ君…――
初戦敗退ではまぐれで本選に上がったと思われるでしょうから、最低でも一勝はしなければならないと思って、あんな無茶をしたようです。
あくまで目的のための手段ですが、大会主催の王国に自分の実力をアピールしたかったんですねー。
>栄養不足はいかんよ、特にカルシウムやビタミン不足は。――
そうそう、やがて肌から粉ふき芋の如く乾いた皮膚が撒き散らされ骨もちょっとしたショックでバキバキと(ry
新技案ありがとうございます。魔法っぽい技を色々開発して試してはいるようですが、制御が難しく実戦で使うにはもう少し時間が必要みたいです。
>ふーん歪んだ愛情を抱いてますねぇ…――
激おこでしょうね。両隣にいる女傑に止めてもらうしか。




