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閑話 ヒミツのおしゃべり

新規の評価、ブックマーク、誤字報告、感想をいただきありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。


今回も始めは勇者視点です。



……いや、まあ、断られる可能性も考えてなかったわけじゃない。

最初にメリットばかり言って、パーティに入った後で「思ってたのと違う」ということにならないように、きちんとデメリットも言っておいたしな。


よくよく考えたら、レヴィアは自分から同行を申し出てくれたし、オリヴィエはオレたちに命を救われたことに恩義を感じているのか、快く同行することを受け入れてくれた。

でも、この子たちにオレがやったことといえばメシ奢ったぐらいだし、そもそもそれは助けてもらったことの礼だし。

やっぱ、勇者のパーティに同行することなんか面倒事ばかりで嫌なのかな。



「別に嫌なわけじゃない。ただ、うちのパーティにはもう一人、リーダーがいるから」


「さっきの話じゃ、勇者さんのパーティに同行できるのはあと二人っしょ? そうなるとリーダーとヒヨコちゃんの枠がないからダメっすよ」


『ピピッ』


「パーティから誰が抜けることになっても嫌だし、リーダーも嫌がると思う」


「……リーダーを説得してから、お二人に入ってもらったりするのはどうでしょうか?」


「だから、リーダー以前に自分たちが別れるのが嫌なんすよ。……まあ、自分たちがどうしても勇者のパーティに入りたいっていえば多分許してくれそうな気もするっすけど」


「でも、内心すごく悲しい想いをさせてしまうと思うし、私たちも別れるのは嫌」



オリヴィエも色々提案しているが、二人ともリーダーと別れることを嫌がっていて説得は難しい。

この二人、そのリーダーのことが本当に好きなんだな。

そして金髪少女ことレイナの口ぶりからして、この二人の頼み事なら自分を押し殺してでも聞いてあげてしまうくらい、優しい人みたいだ。

……うーん、そうなると無理やり同行させるようなことをするのは気がひけるなぁ。



「……そうですか、残念です」


「ごめん、こればっかりは無理」


「………ちょっといいかなー?」



交渉は決裂、そう思った時にこれまで黙って話を聞いていたアイナさんが口を開いた。

…あれ? 口元は笑っているのに目が笑ってないですよ? どしたの?



「ごめん、この二人にちょーっと確認したいことがあってねー。ごめんけど、先に店から出てもらえないかな?」


「え? オレたちも一緒に聞いちゃ――」


「おねがぁい、女の子同士の秘密のおしゃべりなのー」


「ちょ、ちょっと! アイナさん、ハグやめて! 当たってるから!」


「ネオラ、こっち来なさい! 嫌がってるようなこと言いながらなにニヤついてんのよ!」


「……ネオラさんは本当に女性の胸がお好きなんですね……なんなら私が、いえ、なんでもないです……」


「え、なんか言った? いだだだだ!! 耳! レヴィア耳引っ張るのやめて! 千切れる!」


「それじゃあ、お願いねー」




アイナさんから引っぺがされて、二人に引き摺られながら退店。

レヴィアもオリヴィエも、アイナさんが過剰なスキンシップをするとすぐに引きはがそうとするけど、これは助けてくれているのか?

引っ張られてる耳と腕が超痛いんですけど! あ、でもオリヴィエに引っ張られてるほうの腕になにか柔らかい感触がいや引っ張る力が強すぎてそれどころじゃないいだいいだいだい!!


……もう支払いはアイナさんに任せよう。

それにしても、秘密のおしゃべりってなにを話すつもりなんだろうか。

……まさか脅迫じみたこと言って、無理に勧誘するつもりじゃないよな?









~~~~~アルマ視点~~~~~






「ふう、なんとか行ってくれたね」



アイナさんと呼ばれていたエルフの女性が、安心した様子で店の外に引き摺られていく勇者を眺めながら呟く。

……彼ら抜きで私たちと話したいって言ってたけど、なんのつもりだろう。



「いやー、君たちすごいよ。本当ならどんな手段を使ってでも強引にパーティに加入させたいくらいの逸材なんだけどねー」


「……!」


「そう警戒しないで。パーティに無理に誘ったりするつもりはないから。ああ、話したいことなんだけどね?」



笑みを浮かべた表情から一変、真剣な顔つきになってから、なぜか、アイナさんが頭を下げながら、口を開いた。



「ヴィンフィートでイヴランちゃんを助けてくれてありがとう。アルマティナさん、レイナミウレさん。そして、この場にいない飛行士さんにも、礼を述べさせていただきます」


「……え」



そのことを知っているのは、ヴィンフィートのギルマス二人と領主様くらいしかいないはずなのに、なぜ?

頭をゆっくりと上げて、微笑を浮かべながら言葉を続けた。



「ど、どうして、自分たちのことを知ってるんすか?」


「イヴランちゃんはアタシの妹でね。2、3ヶ月前、魔族の手によってヴィンフィートの古代兵器の封印が解かれた騒ぎの際に、君たちにすごく助けられたって言ってたよ」


「い、妹ぉ!? マジっすか!?」



アイナさんは、ギルマスの姉?

……よく見たら、目元とかすごく似てる。種族もエルフだし、嘘は言ってないと思う。



「ギルマスから、話を聞いたの? 極秘情報扱いのはずなのに」


「ああ、アタシだから君たちのことを話してくれたんであって、公式には全部飛行士が解決したってことになってるから安心していいよ。もちろんアタシも言いふらすつもりはないから」


「ふわぁ……ギルマスさんに姉がいたなんて初耳っす。しかも、勇者さんのパーティに同行してるなんて」


「うん、そもそも勇者君たちを鍛えてほしいって依頼してきたのはイヴランちゃんだからねー。『どうでもいい時にばっか顔を出して、肝心な時にいなかったんだからそれくらい役に立て愚姉』ってアレ目から汗がヨヨヨヨ……」



……良かった。もしも言いくるめられたりして、勇者のパーティに入らないといけないような状況になったらどうしようかと思った。



「ところで、その飛行士さんは今どこに?」


「獣車酔いが酷くて、宿で寝込んでるっす」


「自分で空を飛ぶのと、獣車の振動は勝手が違うって死にそうな顔で言ってた」


「そっかー、残念。是非直接会って礼を言いたかったんだけどねー。……いや、待てよ? ねえ、アタシは勇者君たちを武術大会に出場させるためにここまできたんだけど、君たちも出るの?」


「うん。今の自分が、どこまで通用するか試してみたいから」


「優勝はおぼつかないでしょうけどねー。あの勇者さんも相当強そうだったし」



多分、勇者の素の能力値は私より数段上。

隣にいた二人の女の子も、私たちと大差ないレベルだと思う。

……ヒカルのレベリングのやり方は相当無茶だと思うけど、この人の修業もかなりヤバそう。



「その大会、飛行士さんも出るの?」


「ヒカルは出ない。悪目立ちするのを嫌がってたし、そもそも職業が分からないから」


「まあ、応援しにきてくれるだろうし、会いたいならその時が丁度いいんじゃないっすか?」


「そうさせてもらおうかなー。でも応援席で探すの苦労しそうだねー……」



苦笑いしながらアイナさんが呟く。

ヒカルならメニューを使えばすぐに見つけられるだろうし、ヒカルのほうから探してもらうように言っておこうかな。



「次会う時は、大会?」


「そだねー。……自慢になるけど、ウチの子たちは強いよー? 実際のレベルより一回りも二回りも上だと思ったほうがいい。ネオラ君は特にね」


「やっぱ異世界人は特別なんすねー。……いや、カジカワさん見てれば分かることなんすけど」


「……でも、負けるつもりはない。ヒカルはともかく、勇者にはそこまで絶望的な差は感じられないから」


「なら、実際に戦ってみて白黒つければいいさ。ああ、大会が待ち遠しいなー。……ところで、飛行士さんってそんなに強いの?」


「滅茶苦茶強いっす。すごいスピードで強くなっていってるし、ひと月経てば別人レベルっすね」


「……正直、私とレイナとヒヨコが束になっても勝てる気がしない……」


『ピピッ!』


「そっかー。そういう人にこそネオラ君と戦ってほしいんだけどなー。修業を終えてオレつえー! ってなってるのを戒めるカタチにもなるしさー」


「大丈夫。大会で私が勝つから」


「おおっ! いつになく強気な発言っす!」



ヒカル以外の人なら誰にも負けないっていうほど自惚れるつもりはない。

でも、勇者相手だからって尻込みなんかしていられない。



「さて、あんまり待たせるのも悪いし、そろそろおしゃべりもお開きにしますか」


「そうっすね。ごちそうさまでした」


「ごちそうさま」


「ああ、最後にひとつだけ聞いていい? 飛行士さんも勇者と同郷の異世界人って話だったけど、勇者のことどう思ってるかとか聞いたことある?」


「特に聞いたことないっす」


「あんまり興味なさそうだった」


「そ、そうかー。……黙っといてあげたほうがよさそうだねこりゃ……」


「勇者さんは、カジカワさんのこと知ってるんすか?」


「んー、こっちの世界に事故で飛ばされた可哀想な人がいるらしいから、見つけたら自分にできる範囲で助けてあげたいって言ってたけど、その口ぶりじゃ必要なさそうだねー……」



うん。助けはいらないと思う。

勇者からはかなり強い力を感じたけど、それでもヒカルほどじゃないし。





お勘定を済ませて、勇者たちに挨拶してから宿に戻ろうとした時に、ふと気付いた。



赤髪のレヴィアリアって子の顔をじっと見ていると、誰かの顔がダブって見える。

顔を見られているのに気付いたのか、こちらを訝しげな表情で見ている。



「……なに? 私の顔になにかついてる?」


「…………フィフライラ?」


「っ!!?」



ダイジェルで別れた赤髪の子によく似ていたから、名前を呼んでみると跳び上がりそうな勢いで驚いていた。

反応からして。フィフライラの妹さんかなにかかな。なんで勇者と一緒にいるんだろうか。



「な、ななななんで、フィラ姉を? し、知り合いなの? ちょ、お、お願い! お願いだからフィラ姉には黙ってて! もしもバレたら激怒されるから!!」



顔を青くしながら大慌てで懇願してくるレヴィアリア。

……この様子じゃ、黙って家を飛び出しでもしたのかな。

自立するなら、ちゃんと家族に相談しないと。でないとすごく心配させてしまうから。

……いや、相談してもウチの両親はものすごく心配してたけど。


お読みいただきありがとうございます。

勇者と主人公のやりとりを楽しみにしてくださっているコメントを多くいただいておりましたが、いましばらくお待ちを(;´Д`)



>あらら、勇者ちゃんさん振られちゃったね〜――


特に両親がヤバい模様。今の主人公でもまだ勝てないレベル。

寝起きの反応はまた次のお話にて。


>シリアスな話が少ない日常?の話が多いのでまったりと読めます――


先にお伝えしておきます。ゴメンナサイ、大会からちょっとした山場があったりなかったり(ry


>勇者ちゃ。。勇者くん逃げてー!!


感想欄で勇者が軒並みちゃんづけされてて草。

そんなキャラ付けしたのが悪いのですが。


>今現在の勇者のレヴィアとオリヴィエの好感度ってどんくらいなんですかね?


アイナさんの地獄の特訓をともに乗り越えたこともあって、実はかなり好感度は高かったりします。

見た目が男っぽくないこともあって、恥ずかしがることはあってもさほど嫌悪感はないみたいです。


>勇者が登場したッ!?今からでもカジカワ達に困惑する未来が――


なお主人公と直接会うことがあるかどうかは定かではない模様。

少なくとも今すぐってわけではないようです。


>これからも頑張ってほしい。―――


ありがとうございます。こういった温かいコメントをいただくたびにモチベが上がるのを実感しております。

これからもお暇つぶしに気が向かれた時にでもお読みいただければ幸いです。


>さて、カジカワさんとの遭遇が楽しみだ。――


メニュー同士の絡みというか牽制についてはちょっと考えていたり。

恐縮ですがそれもまた後の話までしばしお待ちくださいませ。


>ついに勇者と合流した。――


上級職へのジョブチェンジはLv50に達することが条件ですので、もう少し後になります。

主人公はLv47ですが、職業のジョブチェンジもマスタースキルも獲得できませんけどね。





すみません、227話『黒い果実』で公開した主人公のステータスに一部誤りがありまして、Lv48ではなくLv47、抵抗値と幸運値の値は1135ではなく1127でした。この場にてお伝えさせていただきます。

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 9/5から、BKブックス様より書籍化!  あれ、画像なんかちっちゃくね? スキル? ねぇよそんなもん! ~不遇者たちの才能開花~
― 新着の感想 ―
[一言] あーそういや勇者まだアルマのご両親には会ってなかっけ? 恐らくこの二人もいずれ勇者を扱きに来るんだろうな…アイナさんの百倍キツそう
[気になる点] メニューさん達のやり取りか、メニューさんかなり好きなキャラだから早く見たいなぁ
[一言] カジカワのあとはご両神も降臨なさるから…ハーレムとか言ったらもがれるな…
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