登録を済ませて
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おはようございます。獣車酔いもスッキリ治って清々しい朝ですね。
とか思ってたら昨日の夜、俺がいない間にちょっとしたイベントが起こってたらしくて朝から驚くハメに。
まさか、外食に行った先で勇者とエンカウントするなんてな。
いやまあもう数日後には武術大会が開催されるから、それに出場する猛者と遭遇する可能性は低くはないんだろうけど、よりによって勇者かー。
しかも、店内で暴れていたバカをシメた腕前を見込まれたのか、アルマとレイナがパーティに誘われたとか。
事情を説明して断ったらすぐに退いてくれてトラブルになったりはしなかったらしいが、もしも無理やり連れていくようなクソ野郎だったらどうしようかと。どうしてやろうかと。
だが勇者君もそこまでバカな子じゃなかったみたいでひと安心。
むしろ理不尽な暴力やトラブルを積極的に解決してくれるイケメンみたいだな。眩しいわー。
自分からわざわざ会いに行こうとは思わないけど、もしも顔を合わせる機会があったらお喋りでもしてみようかな。
「ええ? なんで会おうとしないんすか? この世界で唯一の同郷の人でしょうに」
「あー、確かに地球人、いや俺と同じ世界の人かもしれないけど、同じ国出身の人間とは限らないじゃん? 別の国の人だったら文化が違って大して話もはずまないだろうし。なんかどの国の人か分かるような情報とかないの?」
「勇者の名前から分からない? ネオライフ、略してネオラって名前だったけど」
「ネオライフ……日本人っぽくない。いや、直訳すると『本当の人生』とか『真の人生』って意味だし安直に新しい名前でやり直そうとしたとか? 名前だけじゃ分からんな」
「容姿は、金髪の美少女、いや美少年だった。……綺麗な顔立ちで、どっちかというと女の子に見えるけど」
「金髪ぅ? 日本人は黒髪が基本なんだけどなー。やっぱ外国人か?」
≪転生する際、元の身体から容姿を変えることは可能。過去の勇者も何人か容姿を変更して美形にした者もいる模様≫
あー、いわゆるshowracemenuみたいな感じか?
……要するに、元のまんまでも美形に調整することもできるからあんまりあてにならないわけね。
ということは、その子は男の娘になりたかったのか? 勇者の性癖、業が深いなオイ。
「あと聞いたこともないわけわかんない言葉も口にしてたっすね」
「どんな?」
「『ショウガッコウ』とか『コドオジ』とか」
「あ、多分日本人だわその子」
「いやいやいや、容姿や名前を聞いても分からなかったのになんで今の意味不明な単語で分かるんすか!?」
『小学校』は外国でも使われてる言葉だろうけど、『こどおじ』なんて言葉は日本人の造語だからな。
メニューが変なふうに翻訳した可能性も否定できないが、日本人の可能性が高まったと見るべきか。
まあどっちにしろ積極的に会おうとは思わんけど。メンドイし。
他にも、ロリマスの姉が勇者たちを鍛えている師匠やってたとか。
三人娘の赤髪の子の妹が勇者パーティの一員だったとか。
なんか微妙に関わりのある人が勇者パーティに集まってる気がするな。世間は狭い。
朝食を済ませてから、武術大会が開かれるというコロシアムへエントリー登録に向かった。
でかっ。東京ドーム2、3面分くらいの広さはあるんじゃないかこれは。
これを重機無しの手作りで作ろうとする狂気よ。完成までいったい何年かかったのやら。
いや戦闘職の能力値の高さや魔道具なんかの有用性を考えると、それほど地球と建築技術の差はないと考えるべきか? 分からぬ。
受付へ向かい、参加登録をしてもらう際にアルマとレイナを見て受付嬢が困惑していた。
「ええと、駆け出し、いえ、見習いの部の登録ですか? でしたら二つ隣の受付になりますが」
「中堅で合ってる。鑑定すれば分かる」
「……れ、Lv42と、Lv35……!? そんな、その若さであまりにも高すぎる……!」
「年齢制限でもあるんすか?」
「い、いえ、成人していれば年齢は不問です。参加するうえで基準となるのはレベルと職業のみですので、お二人は中堅の部に参加する資格が充分あります。…取り乱してしまい、申し訳ありませんでした」
見た目とステータスのギャップに狼狽えていたが、特に問題なく登録できたみたいだな。
あ、俺は参加しませんよ。代わりに当日観客席のチケットをくださいな。
え、一番安くて一枚10万? 高すぎへん? あ、そこそこの席はもう大体売れてしまって、もうクッソ高い席くらいしか残ってないのね。……また財布が軽くなるなー。
「おお! アンタらも来てたのかい?」
登録を終えた後、会場を見て回っている最中に横から誰かに声をかけられた。
この声は……
「ああ、ヒューラさん。どうも」
「港町以来っすね!」
「やっと野暮用が片付いてね。急いで王都までやってきてなんとか間に合ったよ」
「元気そうで、よかった」
「アンタらもね。……気のせいか、ちょっと見ない間にさらに強くなってないかい? ひと月足らずの間になにがあったのやら」
「エリクサーの材料目当てになんかおっきなヘビ倒したりしたっす」
「ヒカルが中級精霊を脅迫、じゃなくて説得してくれて中級精霊魔法を使えるようになった」
「待ちな。今の一言二言の情報量が多すぎて頭が理解するのを拒んじまってるから」
考えるな、感じろ。そして受け入れろ。
……こうして聞くとホント意味分からんことやってんな俺ら。
「今回の大会は勇者も参加するんだってね。どんな豪傑なのか楽しみだよ!」
「ええと、女の子みたいな美少年だったっすよ?」
「……人の期待をぶち壊すような情報をありがとよ。まあ、召喚されてからまだ数ヶ月だし、その間に鍛えるにも限界あるだろうからナヨっちいやつでも仕方ないか……」
「それでも、かなり強そうだった。多分、能力値は私よりずっと上」
「へぇ、もしも上級職のほうに参加するなら、いっちょ揉んでやるとするかねぇ!」
「勇者、中堅レベルらしいから多分無理」
勇者君にちょっと興味あるみたいだけど、なんか変にすれ違ってて関わる機会はあまりなさそうですね。
まあどうしても戦ってみたいなら、大会とは関係なく勝負の申し出でもすればいいんじゃないかな。
「それにしても、今回の中堅職の部は荒れそうだねぇ。若いのにどいつもこいつも生き急いじまって」
「ん? 他にも誰かいたんすか?」
「ああ、さっきも受付に成人したてっぽい緑髪の男の子がいてね。短剣使いで、見習いかなんかと思ったら短剣剣士で驚いたよ」
「緑髪の、短剣剣士?」
「……まさか、ラディアさんっすかね?」
……メニュー、この都市にラディア君がいるかどうか分かるか?
≪登録を済ませた直後らしく、コロシアムの近辺にいる模様≫
おいおい、別れた時にはまだLv20にもなってなかったはずだぞ。もうLv34にまで上がってるじゃないか。気力も魔力も操れないのになんちゅー無茶してんだ。
……やっぱ、ラディア君も才能あるなぁ。今度パーティに誘ってみるか?
メニューに頼んで、さらに知人がいないか検索してもらったが、なかなか懐かしい顔ぶれが集まっているようだ。
ダイジェルのスタンピードや、ランドライナムの狩猟祭で活躍した冒険者たちもちらほらいるな。
おお、バレドとラスフィーンもいるじゃないか。Lv20から一気にLv33まで上がっている。
こうして他のパーティの成長を見るのもなかなか楽しいな。他には誰がいるかなー。
……ん? 誰だこの『ライザカレン』って。こんな名前聞き覚えないぞ? てかLv59って高いなオイ。
≪……ランドライナムの冒険者ギルドマスターが該当≫
ランドライナムの、ギルマス?
……ってコワマスのことか!? あの人戦闘職だったのか!?
なんでわざわざこんなところまで来ているのやら。てか、状態表示を確認してみたらなんか重傷っぽいけどなにがあったんだ?
近くの治療院にいるみたいだし、後で顔を出してみようかな。
んー、ヒューラさんの言う通り中堅職の部はかなりの数みたいだなー。
魔王が誕生してから、自衛のために急いで鍛えている人が多いからなのかな。やっぱ考えることは皆一緒か。
……面白くなってきた。ウチの子たちにとってもいい経験になりそうだ。
あとは、いらんちょっかい出してくるであろう魔族どもにどう対応するか考えておくとしよう。
今は影も形も見えないけど、どうせ平和な大会なんかにするつもりはないんやろ。騙されんぞ。
お読みいただきありがとうございます。
>よかった、勇者ちゃんさんに良識があって。――
勇者ちゃゲフンッ 地球から誰かを転生させる際に、勇者もそこそこ良識ある人が選ばれるらしくどこぞの成金デブたちのような強引な手段はとりたくないみたいです。
六式は……似たようなことできるし使えなくても問題ないかと。
>カジカワのあとはご両神も降臨なさるから…――
そして本当に女の子に。いのちだいじに。
>メニューさん達のやり取りか――
やりとりって程のものになるかは分かりませんが、近々干渉しあう模様。
>あーそういや勇者まだアルマのご両親には――
なおアイナさんから『あの夫婦ヤバい超ヤバい』と聞かされてはいる模様。
アイナさんの修業がハードなら、あの夫婦の修業はエクストリームになるかな。




