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小路流のプログラミング  作者: しげる
彼と彼女の事情
5/6

04方針決定の後に

※この作品に出てくる固有名詞は、一部の地名などを除けばほぼフィクションです。

『4週間だな。それで通してやるから急げ、もうあまり時間は無いぞ』

「げ、あとどれぐらいっすか?」

『10分だな。うまく行くことを祈ってやるから俺の胃が痛くなる前に帰ってこい』


 俺は切れた内線を置いた。

 とりあえずまずは時差を合わせなきゃどうにもならん。俺はシステムにロックを掛けて呆けている彼女に近づく。


「春日課長。まず移動しますよ」


 風が彼女の髪をなびかせるがそれっきりだ。声をかけてもまったく反応がない。

 俺は、彼女の腕をつかんで先を急ぐ。とりあえず一階の受け付けで空き部屋を確認しなきゃならない。彼女の手を引いたまま、足早に部屋を出た。


 両側に扉の並んだ廊下を進んでいく。

 廊下は、いや壁も天井も扉もだが全て木材製だ。この世界というか、この辺り、サーリャス世界のマハの町の近辺では一般的な土や石の建物は見かけない。年中を通して穏やかな日本で言うところの初夏の陽気で、豊かな自然の恵みを受けとってきたこの地の人々は、木工中心とする文化を作り上げてきた。今わかってる範囲では、土器に相当する物も無い。殆ど木器だと言って良いだろう。ここは木で発展した地方なのだ。

 その町の中でも、そこそこ大き目だが表通りからはちょっと離れた所にあるこの旅篭をうちの会社が一番奥の一角を長期で契約している。時間がごちゃ混ぜになっても問題ない所を確保しておく為の措置だ。


 そして、いきなり手を振りほどかれたのは、長い廊下を階段まぎわまで進んだ所でだった。



             ◆



 正気に戻ったんだと思う。

 その瞬間に私はそいつの手を振り払った。何がなんだか分からないけど、自分が何処かに連れ込まれたんだと言う事は何となく自覚する。


「ようやく目が覚めましたか。とにかく急いで下さい。かなり時間が押しています」


 そんな事を言うそいつから、後ずさる。

 何がなんだか分からないが、ただそいつが怖かった。


「春日課長?」


 そう呼び掛けられて、ようやくそいつが、小路主任である事に気付いた。

 それなのに、一行に恐怖は収まらない。解らないけど彼が怖い。解らないのはとても怖い。


 それでも無理やり恐怖を抑え込んだ。そうしないと解らないままになってしまう事は、色々と経験済みだ。


「小路主任。説明して下さい」


 彼の目に視線を合わせると、特に怖い感じはしなくなった。


「説明はしますから。急いで下さい。あと10分も無いんです」

「説明が先です」


 何の事か解らないが、私も行かなければならないような用事で、5分、10分に絶対間に合わせないとならない用事など無いだろう。


「説明出来ないのなら、まずそれを終らせて来て下さい。それまで待ってますから」


 下手な会議に何も知らずに出るとろくな事が無いのは経験済みだ。



             ◆



 めんどくさ。

 それで間に合うなら先に説明してるわ。

 そして俺だけ巻き戻っても何の意味も無い。


 ふふ、俺が決めて良いなら速攻で置いて行く所だけどね? 意外と仕事には熱心な自分が憎い。

 どうするかって考えるまでも無いな。

 俺は、逃げる間も与えず春日課長を捕まえると担ぎ上げた。


「ちょっと何するの! 離しなさい! 離せ!!」


 ジタバタと暴れる彼女を無視して階段に向かう。何か背中を叩いているっぽいが、渡りと同時に身体強化された身には、子供がじゃれついてるようなものだ多分。じゃれつかれた事が無いのでわからんけど。

 ともかくそのまま階段に向う。本当に時間がまずい。

 急いで降りようとすると、ちょうど目的の猫耳メイドが登ってくる所だった。


「まったく、相変わらず仲が宜しいですねぇ~」


 彼女の呆れたような声に合わせて、黒い猫耳が伏せる。


「悪いカナさん。儀式の問題で急いでるんだ。4週間使ってない部屋ってどこかな」

「10号室は大丈夫ですよ~」


 彼女の答えに、軽く手を挙げて挨拶して踵を返した。



             ◆



 振り回されると、目の前に猫耳メイドの笑顔があった。

 大学生ぐらいの可愛い子だ。綺麗な黒髪の上に黒い耳がある。


「美咲さんは、もう少し素直になった方が良いと思いますよ?」


 一瞬何を言われたかわからなかった。

 と言うか、知り合い?

 ・・・知合いにこんな所見られた!?


「ちょっ、ちょっと待って。助けて!」

「行ってらっしゃいませ~」


 私のヘルプに、手を振りながら笑顔で無視してくれた彼女の姿は直ぐに扉の影に隠れて見えなくなった。


 ようやく放してもらえたのは、部屋の中のベッドの上。

 泡を食って後ずさる私を無視して、あいつは腕に付けたキーボードっぽいものを操作していた。

 そして部屋が真っ白に塗り潰されたのと、私が、あいつに声をかけようとするのは同時だった。



カナさんは、春日課長と顔見知り。春日課長はカナさんと初対面です。


異世界行っても異世界らしく無いですねぇ。

短いのでなかなか進みません。


序章っぽいあたりが終わったらそれどれのキャラクタを掘り下げる予定ですが・・・。

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