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小路流のプログラミング  作者: しげる
彼と彼女の事情
4/6

03異世界転移の後に

※この作品に出てくる固有名詞は、一部の地名などを除けばほぼフィクションです。

 パニックにはなっていたと思う。

 その上で、ひどく冷静な自分もいた。


 四角く描かれた壁の模様は瞬きの間にぶち抜きになり、外からの光と風が部屋に流れ込んでくる。


 ───会議室の奥のサーバルームに。


 なんの冗談か、鳥の声や、人だけが集まる学校の中のようなざわめきが聞こえる。


 ───このぶちぬきの先はさっきの会議室のはず。


 空気が濃い。深呼吸ができない。あきらかに都会とは一線を画す空気のにおい。


 ───空調管理されたビルの中で。



「春日課長?」



 小路主任の声に自分で思った以上に体が驚くのがわかる。



 部屋の奥には、彼がいるのは当たり前なのに、目の前の風景と、そばに彼が居る事がつながらない。


 ───部下で講師で先輩で・・・



「おい、まさか初めてとか言わないよな?」



 ───初めてって何の初めて?



 私は、ただ茫然と日に照らされるビル一つ無い屋根だらけの風景を見つめていた。




              ◆



「どういう事っすか! ド素人じゃないっすかっ!!」


 俺は内線がつながると同時にどなりつけた。

 どなりたくもなる。

 少なくとも、ここは、サーリャス世界は、現代日本みたいな近代法律と国家権力に守られている世界じゃない。そんなところでの至急案件に、ド素人連れとか、どんな死亡フラグだってんだ。


『・・・まぁ落ち着け。この内線って事はあっちの問題だな? 春日課長もいるのか?』

「あたりまえでしょ。うちに所属する人間を置いてくなんて勿体ない事するわけがない」

『つまり、ド素人と言うのは、彼女の事か?』

「・・・そうです。ワー・コンを、質問もせずに普通に装備してた彼女の事です」


 部長の完結な言葉につられるかのように落ち着いていくのを感じながら、とりあえず現状に至った原因を完結に報告する。


『ちょっと待ってろ。社長に聞いてみる』


 保留音になった電話を耳に当てながら振り向くと、そこには相変わらずかなりの美人が茫然と窓の外を見たまま窓の外に手を出した状態で固まっていた。


(まったくどうしたもんかなぁ。)


 春日課長を見ながら声に出さずため息をつく。

 現状はともかく、落ち着いてみれば今後については容易に想像がつくのだから仕方がない。つまり、実戦投入か口封じかの二択である。


 前者は、苦労が多く俺の命にもかかわるかもしれない。後者は、苦労はまったくないが、日本人としての俺の心にもの凄く傷跡を残すのはかたくなにない。

 無罪放免? それはありえない。それは一番俺が命を失う可能性が高い選択肢だからな。


『────またせた。小路、聞こえるか?』

「あ、はい。聞こえてます。それで?」


 俺は彼女から視線を話さずに続きを促す。現状説明聞いても現状はどうともならんのだけど、判断材料が増えるなら知っておくにこしたことはない。


『社長の娘さん総務に居るんだが、直轄開発チームの事なんも知らないド素人らしくてな。いつも人が足らん足らん言ってる開発部人員として転職したがってた友人を引っ張ったんだそうだ。

普通の人事手続きで直轄開発に異動って初めてだったらしくてな、社長も新しく開発部への増員としか把握してなかったんだそうだ』

「あー、もしかして俺たちって今まで社長権限での配属だったんすか?」

『だな。ただ社内への辞令的に一度総務を通してたので、俺の所では区別が付かんかったってわけだ』


 まぁこんな異世界での泊まり込み仕事用人員、総務で管理できるわけないか。

 それはそれとして問題はこれからどうするかだが。


『でな、そういった経緯なので、選択肢は無い』

「は?」

『使えるレベルまで育てろ。死なすな。その為にあらゆる手段を許可する』

「・・・・え? 俺に選択権無いんすか?」

『無い。ちなみに社長からの一筆付きの命令書書いてもらったから。2週間前に戻れ』


 え?いやまてよ?たしかに異世界渡るんと違って、異世界のおける短期間の時間移動は渡って直なら可能だが。それ無茶苦茶金掛かるよね?


「赤字は『研修費で補填する』・・・はぁそうっすか」


 いや待てって。たとえ赤字じゃなくても、普通にド素人抱えてって何かあった時の致死率半端ないよね?


「いやいやいや、死にますよそれ!?」

『そんな事はわかってる。だがそれ以外は、“そこ”との契約に抵触する可能性があるんだよ』


 うん。詰んだ。

 それを持ち出されると、何も言えない。世界と法人の契約だ。ばれなきゃ良いようなちゃちな契約じゃない。


「・・・つまり、二週間でものになるレベルまで教育してこの至急案件こなせって事っすか? 無理にきまってるじゃないですか!」

『無理なんて物は俺らにはない。やりたくない事ならいくらでもあるがな』


 頭に血が上っていたはずなのに、一瞬で冷える。いちいち言葉が芝居かかっていて気に食わない。


『彼女にとって死ぬよりはマシである事を祈ってる』


 生半可な事ではすまない事を良く知っているがゆえの言葉だとわかる。結局職種がなんだろうが、生きてくためには無茶ぐらいするしか無いなんてわかりきってるんだが、


「・・・4週間ください。それで何とかします」


それが俺の出した答えだった。


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