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プロローグ~白夜オリジンズ~ 

 平安の世。名もなく生き、傷だらけで倒れていた一匹の子狐は、心優しい少女・香代に救われる。孤独と不信に満ちていた子狐は、香代や妖怪たちとの穏やかな日々の中で少しずつ心を開き、自分にも居場所があることを知っていく。幸せな時を過ごしていたのだが・・・

 平安の世、九五〇年。満月だけが闇の森を白く照らしていた。森の中には月夜に照らされ白く光る毛並みを有した子狐がいた。しかし、その毛並みに対して、その子狐は胴体は傷と泥、血によって汚れ、頭から血が出ており瀕死寸前だった。今にも息が絶えそうだった。


「チキショー・・・チキショー・・・オイラは弱くねえんだ。・・・あいつらなんかに負けねえんだ。変化の術なんか・・・ろくにできなくたって・・・勝てるんだ。」


 その子狐は妖狐のようだ。その妖狐は変化の術をしようにも体がぐにゃぐにゃになり、ろくにできないようだ。それが理由でいじめられ、子狐は山の中で妖怪たちと縄張り争いをして敗走した後だった。


「なんかクラクラしてき・・・た。オイラ・・・もう死ぬのか・・・」


 子狐は倒れそうになった!


 そのとき、茂みから一人の少女が駆け寄ってきた。茂みの中を走り回ったからなのかうちきの裾を泥で汚して息を切らして駆け寄ってきた。


「あなた大丈夫!!?随分ボロボロじゃない!?」と少女は心配して駆け寄ってきた。


 子狐は視界がぐらついた中、一人の少女の方に目を向けて敵意むき出しでこう言った。


「だ・・・誰だよオメー?・・・オイラを殺そうってのか?・・・殺るなら早・・・く・・・」

と言った子狐の意識は途絶えた。


「大丈夫!?お狐ちゃん!?しっかりして!!」という少女の声が森の中に響いた。


 子狐は目が覚めた。そこは森の中ではなかった。なんと人間の屋敷の中だったようだ。


 辺りを見回すと障子と畳であり、自分の体周辺を見ると体には包帯が巻かれ、布団にくるまっていた。子狐は周りを見渡した。

 冷静になってよく見てみると、豪華さはなく、ところどころ畳や障子に補修したような跡が見られた。

 先ほどの女の子は貴族の家出身のようだったが、そこまで位が高いわけではないのだろう。年齢はだいたい10歳前後ぽかった。


 気を失った前後の経緯を思い出していると、例の少女が現れた。


「あ!お狐ちゃん、ようやく目が覚めたのね!よかった!あなた一週間も寝てたもんね。あんな暗い森で独りぼっちで死ぬなんて嫌だもんね。」

と少女は安堵したような声で話しかけた。


「テメーは・・・いてて・・・オメー誰だよ。」

とまだ敵意むき出しで子狐は言った。


「私は源 香代というの。私のことはカヨちゃんと呼んでね。」

と優しい笑顔で自己紹介した。


「・・・なあカヨ!」

と子狐はそう呼んだ。


「ええ~呼び捨てー?じゃあ、カヨお姉ちゃんは?」

とカヨちゃんは少しふくれっ面してこう答えた。


「カヨ!」

と子狐は何がなんでも呼び捨てしたいらしい。


「・・・君、頑固だね。」

とカヨちゃんはふくれっ面して答えた。


「オメーが助けたのか?」

と子狐は訊いた。


「君を運んだのは私だけど、治療したのはお医者さんをしている河童さんの千兵衛さんよ。とっても手先が器用でこの包帯とか手作りなんだよ!」

とまるで自分の手柄かのように得意げに少女は答えた。


「なんでオメーが得意気になんだよ。」

と子狐は呆れていった。


「だって、千兵衛さんは私の家族だし。家族のことを自慢するのは当然でしょ!ドヤっ!」

とカヨちゃんは自信満々に答えた。


「どや顔がなんかムカつくな!てか妖怪が人間の家族てどういうことだ?」

と子狐は?を浮かべてこう答えた。


「私たちお母様の療養のためこの山に引っ越してきたの。ここ古い別荘だけど優しい妖怪さんたちがたくさん遊びに来るの。」

とカヨちゃんは御簾を開けて、子狐に外の様子を見せながらこう答えた。


 何やら楽しそうに蹴鞠で遊んだり、独楽こまで競ったりしている妖怪がたくさんいた。河童の子供や傘小僧、それ以外にもなんと大きいぬりかべもいた。


「みんなでお菓子を食べたり、蹴鞠をしたり、おいしいご飯を食べたりとまるで家族の一員のように仲がいいんだ、それにお母様の容態を心配する私を励ましてくれるし。」

と優しく微笑みながらカヨちゃんは言った。


「あ、そういえば君、名前をなんていうの?」

とカヨちゃんは優しく聞いた。


「名前・・・そんなものオイラにねえよ。」

とそっぽを向いて子狐は答えた。


「ええええ!?そんなことあるの?親に名前をつけてもらったりは!?」

と少女は驚いた顔でこう答えた。


「オイラは生まれた時からずっと親なんて見たことねえよ。周りのやつらはオイラのことはたいていオメーとかガキ!とか子狐!て呼ぶからそれで呼んでいいぜ!」

とやけくそ気味に子狐はこう答えた。


「ええええ、そんなのダメだよ!もっと自分を大切にしなきゃ!君には絶対名前があるべきよ!」

とカヨちゃんは優しそうな顔から一転、少し険しい顔になった。


「じゃあ、さっさと適当につけて呼べよ。めんどいし。」

とそっぽを向いて距離を置きたがるように子狐はしゃべった。


「だーーーーーーーーーめ!!!私があなたにとびっきりふさわしい名前をつけてあげるから待ってて!」

とカヨちゃんはムキになってこう答えた。


 その三日後、子狐はすっかり傷は治っていた。しかし、子狐は蹴鞠をして遊んでいる妖怪の輪に入るどころか周りを警戒しているのかようだった。


 その目はまるで天敵に出くわし、縄張りから出ていけと言わんばかりな瞳で毛を逆立て、近づく者すべて睨みつけていた。


 しかしながら、そんな子狐の目線に対して、周りの妖怪たちは


「あいつ確か山の中で傷だらけだったところをカヨちゃんに拾われたんだろ。」


「周りの妖怪にいじめられて傷つけられたんだって。かわいそうにな。あんなに人間不信ならぬ周囲不信になっちまってるぜ。」


「声かけたほうがいいかな?」


「今はやめときな。今のところカヨちゃんとしかまともに喋れていない状態だぜ。それにあんなに痛めつけられてたからまだ心の傷が治っていねーかもしれねー。しばらく心を開いてくれるのを待とうぜ。」


と妖怪たちはひそひそ話をしていた。


「チキショー、あいつらオイラがケンカに負けたことで笑ってやがる。オイラは負けてねえんだ。弱くねえんだ。」

と子狐はふてくされてさっきの妖怪たちをにらんで独り言を言った。


 子狐はてくてくと簀子(板敷きの外廊下のような場所)を歩いていると、くしゃくしゃの和紙がたくさん転がっているのを見た。

 従者は何やら面倒くさそうな顔をしてそれを片付けていた。何だろうなと見ていたら、カヨちゃんが和紙でたくさん文字を書いていたからであった。


「何だこれ?なんて読むのかわかんねーけど、なんかかっこええな!この文字!」

とまるで子供のように子狐は興奮してこう答えた。


「あ、お狐ちゃん!」

とカヨちゃんは笑顔で子狐に話しかけた。何やら一生懸命書いているようだった。


「さっきから何の文字書いてんだこれ?」

と子狐は興味深々に聞いた。


「ああ、これはね。男手(漢字のこと)ていうの。これはとうという外国の文字なんだよ、そしてこれは全部あなたの名前候補なの。」

とカヨちゃんは自信満々に言った。


「名前候補て何だよ。てかこんなに書いたのか!?」

と子狐は驚いた。まさか自分の名前ごときでここまでしてるとは思わなかった。


「それであなたの名前を色々考えてみたの。白、白飛丸、白太郎、白次郎、白丸・・・・・」

と和紙を見せながら、カヨちゃんはこう答えた。


「多いわ!一体何個考えたんだよ。」

と子狐は驚きと呆れを混じってこう答えた。


「さっきまでは5百個考えてたんだけど、途中から数えなくなちゃった。漢字も調べてみたら、どうやら画数で運勢も決まるて書いてあったの。だから、組み合わせのいい漢字の画数や意味の相性とかいろいろ確かめてるの。」

とカヨちゃんはこう答えた。よく見ると周りには漢字に関する文献みたいなのが山積みになった。


「何でそこまでオイラの名前で一生懸命になれるんだよ?この間も言った通り適当に・・・」

と子狐は呆れ気味にこう言いかけたとき


「あなたまたそんなこと言ってるの!あなた自分をもっと大事にしなさい!名前というのはそれを与えられたらそれを一生背負って生きていくものなの!」

とカヨちゃんは険しい顔でこう言った。


「・・・あなたは妖怪なの。とっても長生きするものなの。だから、数十年で死んでしまう人よりもずっとずっと価値があるものなんだよ。」

とカヨちゃんは涙目でこう答えた。


「そ、そうなのか・・・」

と子狐はこう言った。少し申し訳なさそうな表情だった。


「これはね。私の弟になるあなたへ贈る最初の贈り物だよ。だから、それまではあなたは”お狐ちゃん”だよ。」

とカヨちゃんは優しい笑顔でいった。


 子狐の潤んだ瞳にはカヨちゃんの優しい笑顔が映っていたが、それを隠すかのように後ろを向いた。


「そうかよ・・・どうせならかっちょええ名前にしてくれよ。」

とそっぽを向いて子狐は言った。


「名前が決まったら、みんなに発表するね。」

とカヨちゃんは張り切って文字を書き続けた。


 次の日。子狐はカヨちゃんとともに妖怪たちも交えて蹴鞠をすることになった。


 子狐はしばらく敵として警戒していたが、一緒に鞠を蹴って遊んでいくうちにそんなことはどうでも良くなった。


 それからしばらくしてから、周りの子供妖怪たちに自慢するかのように鞠を蹴りを披露した。その様子はさながらガキ大将みたいだった。


「よーし、みんな見とけよ。オイラの最強の蹴りを!」


 子狐は力を誇るように鞠を蹴ったり、走ったりした。庭の池に落ちたりするドジを踏んだが、子狐を含めたみんなの笑い声が庭園に響き渡った。


 その一方、従者たちは


「貴族の女子が蹴鞠ではしゃぐなんてはしたない。」


とひそひそ話をしていた。


 その数日後。カヨちゃんは遊びに来た子供妖怪に自分からしゃもじをとってご飯を装い、かつお節を振り、鰯を載せたご飯をふるまった。従者たちはたまらずこういった。


「い、いけません!手づからご飯をよそうなんて源家のご息女がしていいことではありません!それでは高い家柄の跡継ぎと縁談が・・・」


「いいの!そういうの!私はみんなにおなか一杯にご飯を食べさせてあげたいの!お狐ちゃん、ご飯大盛だよ!」

とカヨちゃんは反抗気味にこう答えた。


「やったぜ。ありがとうな!カヨ!」

と子狐は舌を出しながらご飯にかぶりつき、むしゃむしゃと食べた。


 他の妖怪の子供たちはうらやましそうに

「ちえ、お前うらやましいな!俺にも大盛をくれよ!」

とぼやいた。


「はいはい。」

とカヨちゃんはご飯を大盛についだ。


 カヨちゃんは笑顔でご飯をよそいまくっていたのを見て従者は困惑した。


 とある満月の夜。カヨちゃんは子狐を抱っこして連れて、二人で月がよく見える高い場所に行った。


「覚えてる?二週間前、私とあなたはこの暗い森の中で出会ったんだよ。」

とカヨちゃんは優しくこう言った。


「そういやカヨ。オメーはそんとき何してんだよ。」

と子狐はカヨちゃんに訊いた。


「その時、山菜を採りに行ってたの。その時に何か争ったような音がしたの。それで何だろうと思って様子を見に行ってみたら、傷だらけのあなたがいたの。」

とカヨちゃんは森の方を見て言った。


「オメー、好奇心ありすぎだろ。てか、山菜採りにて、オメーの取り巻きの奴らが何か言いそうなことしてんな。」

と子狐は呆れ顔でこう言った。


「私もともと都の姫みたいにじっと室内の中にいるのが苦手なの。むしろ体を動かす方が好きなのようね。」

とカヨちゃんは今の貴族の生活に不満があるかのように嫌そうな顔してこう答えた。


「オイラもじっとしてるよりみんなと蹴鞠したり、走りまったりしてる方が楽しいや。」

と子狐はカヨちゃんに同調しながらこう答えた。


「そうだ。ようやく。あなたの名前が決まったの。」

とカヨちゃんは子狐にこう言った。


「マジかよ。さっさと教えろよ。」

と子狐は待ってました!と言わんばかりに訊いた。


「まだ内緒だよ。」

とにやりとしながらカヨちゃんはこう答えた。


「何でだよ。」

と不満そうな顔して子狐は訊いた。


「明日の夜、馳走を用意してみんなに庭に集まるように約束したんだ。それであなたの名前を盛大に発表するの。」

とカヨちゃんは楽しそうに答えた。


「はあ?めんどくせー!今教えろよ!」

と子狐は駄々をこねた。相当聞きたいらしい。


「だーめ!これから、みんなに弟の名前をしっかり覚えてもらうのだから!それに私がこの世にいなくなってしまったときに遊びに来てくれた妖怪さんたちが一生の友達になるんだから・・・」

とカヨちゃんはさみしそうにこう答えた。


「オイオイ、不吉なこというなよ。お前がこの世にいなくなるとか・・・」

と子狐は睨んだ顔でこう答えた。少し目が潤んでいた。


「・・・ごめん。この話はまだ早かったね。でも私は何よりあなたが名前を受け取ったときに喜ぶ姿をみんなに見てもらって、喜びを分かち合いたいのが一番かな。」

とカヨちゃんは一瞬さみしそうな顔したが、笑顔を取り戻した。


「はあ・・・なんかめんどくせーな。今知りたかったぜ。」

と子狐は呆れた顔でこう言った。


「・・・でも名前の由来だけ教えちゃおっかな。」

とカヨちゃんはこう答えた。


「え?」

と子狐はドキッとした。


「あなたの光る白い毛並みは今見えている満月みたいに夜を照らすそんな存在になると思うの。それにちなむ予定だよ。」

とカヨちゃんは優しく微笑んでこう答えた。


「そうか。きっとそれならきっとかっちょええ名前になるな!明日、絶対にかっこいい名前を紹介しろよな。・・・それとまだこれからも長くずっと生きててくれよな。」

と子狐は笑顔でこう言った。


「うん。約束だよ。」

とカヨちゃんは笑顔でこう言った。


 ・・・二人は明日が楽しみなようだった。


 次の日。子狐はみんなが集まる前の早朝に滝の近くで魚を捕りに行った。


「みんなが集まってくるんだ。なら、発表前に魚をいっぱい捕って、オイラのすごさをアピールする!そして、カヨがかっこいい名前をもらう。これでかっこいい大妖怪様への第一歩としてみんなに認めてもらうんだ!」


 子狐は張り切って泳いで魚を捕っていた。

 

 そして、暗くなる夕方の時。


「やべーな。そろそろ時間が来るな。まあ、これだけ捕ればみんなすげーと言われるに・・・え・・・オイオイ何で燃えてんだよ。」


 なんとカヨちゃんの別荘付近が山火事になっていた。


「一体どうなってるんだ?カヨ!みんな!」


 子狐は今まで一番速く走って、カヨちゃんたちのいるところへ向かった。別荘付近でただならぬ声が聞こえた。


「ぎゃああああああああああああああああ。」


「え?この声、河童の千兵衛!?」と妖狐は動揺した。


「きゃあああああああああああ」


「こっちは、山じじいの年彦の声!?」


 子狐は妖怪のみんなのただならぬ悲鳴に動揺してたとき


「おっしゃ、妖怪たちを成敗だ!」


「妖怪の根城を燃やして、炭にしてやれ!!」

 

 と聞いたことがない男性の声が聞こえたのでとっさに子狐は茂みに隠れた。そのとき、複数の男がなにやら刀を持ち出し、妖怪たちを次々と斬り殺して、ヒトダマみたいなものを回収して破壊しているではないか!


「な、何だよ。こえーよ・・・」


 子狐は震えていた。泣き出しそうになった。そのとき、突然、何者かが子狐の口を押さえた。子狐は心臓が飛び出しそうになったが、それはカヨちゃんだった。子狐を片腕で抱えて、茂みの奥に隠れた。


「お狐ちゃん、大丈夫?」


「カヨちゃん・・・え・・・それ・・・」


 なんとカヨちゃんは腕を斬り落とされており、包帯で無理やり出血を押さえていた。それだけではなく、矢が肩に刺さっていた。心臓部に近かった。


「カヨ。どうしたんだよ・・・それ。」


「私はもう長くないみたい。あなただけでも逃がそうと思うの。」


「長くないって。オイラと約束したよな。まだこれからも長く生きてくれるって。簡単にあきらめるなよ。」


「ごめん・・・お狐ちゃん。実は足も実は折れていて遠くに逃げられそうにないの。だから、昔私が森に遊びに行っていたときによく使う抜け道があるの。そこを通って行くよ。。」


 カヨと子狐は見つからないように森への抜け道の入り口に着いた。それはなんと、土でできた蓋を通るとそれに通じるトンネルが出てきたのだ。


「ここはね。私が山菜に採りにいきたいと行ったときにモグラ妖怪の平吉君に掘ってもらった穴なの。私くらい小さい子じゃないと入れないくらい小さいから、そこに入ったらあいつらは追ってこれないはずだよ。」


「なあ!カヨ!お前も・・・」


「そこにいたのか!妖怪に与する反逆者よ!」


 男性の声が聞こえたと同時にカヨの胸に刀が突き刺さった。どうやら後ろから刺されたらしい。


「・・・カヨ。」


 子狐は何が起きたのか分からず呆然としていたが、


「お狐ちゃ・・・ん・・・最後・・・に・・・あなた・・・の名前をい・・・」


「正義執行!」


 と同時にカヨちゃんの胸から刀を抜いた。血が大量に噴水のように出た。


「びゃく・・・や・・・だ・・・よ・・」


「カヨおねえちゃああああああああああああああああああああああん」


 子狐はかすれた声で名前らしき最後の言葉を話してくれたが、頭に入らなかった。


「呪文を言う前に悪を成敗してやったわ。」とその男性は冷たく言葉をそう放った。


「何でだよ・・・・何でこんなことするんだ!!みんな何も悪いことしてないじゃねーかよ。千兵衛も年彦のおっちゃんも、他のみんなも!そして、カヨお姉ちゃんも!」と妖狐は涙があふれた状態で怨嗟を含んでこう泣き叫んだ。


「妖怪の根絶させることこそ正義。それを執行したまでだ。お前ら妖怪は人間にはない神通力を持つ存在。この世に存在しちゃいけないのだよ。」


「何だよそれ・・・正義って何だよそれ!」と妖狐は言った。


「これもあの方が目指す平安のためだ!死ね!」


「う、うわああああああああああああああああああああああああ」と叫びながら子狐は抜け穴トンネルに入って逃げた。必死になって逃げた。わき目も降らず必死に逃げた。怒りや憎しみも悲しみもこらえて逃げた。

 

 うまく逃げ切り、暗い森の中でさみしく歩いていたとき、


「オイラが弱かったから妖怪のみんなも・・・カヨお姉ちゃんも・・・みんなみんな守れなかったんだ。妖怪が悪だっつうんなら・・・強くなって悪の道に徹底的に進んで正義てもんをぶっ潰してやる!」とこう言いながら子狐の瞳から血の涙があふれた。


 あれから、千年以上の時を経た。

 そして、この子狐はのちに暴風神速の妖狐となった。


 あのときの弱々しかった子狐から一転、白い毛並みや妖狐という以外おもかげがなくなっている。


 身長は235 cm、筋骨隆々の怪獣みたいな骨格をしている。腕は人間に近いが、脚は狐の骨格をベースとした大きく太い脚だった。


 頭の毛は荒々しくトゲトゲに逆立ち、まるで喧嘩上等のリーゼントみたいになっていた。先端は紅色に染まっている。黒い眉毛は太くそれが力強さと凛々しさを表していた。


 妖狐の胸板には黒い円のような模様があり、それの周りに紅色の炎のような隈取がある。


 腕も脚も太く、見る者に圧倒的な力を感じさせた。腕には黒い金属の腕輪みたいなのがある長大な尻尾(先端も紅色)がトレードマークになっていた。


 何より噂になっていたのは妖狐は音速すら超える風に変身して流星の如く空を飛べるというものだ。


「オレ様は風にしか変化(へんげ)ができねえ。だが、神速なら負けねえ!」


 なんと狐火を腕に纏った状態で腕に風の力を送り込み、青い炎としてロケット噴射した状態で風に変身することでマッハ100(これはとある調査機関の測定結果)で空を飛び回っているそうだ。

 

 風にしか変化ができないが、圧倒的な破壊力の暴風や竜巻を生み出し、さらにそれと狐火を組み合わせた妖術であらゆるものを破壊する恐ろしいS級妖怪になった。それだけではなく、


「子狐から九尾の狐になったと思ったら、9本から1本にまとまったな。それ以来、オレ様はとんでもねー怪力になっちまったぜ。」


 なんとこの妖狐は、九尾の尻尾の神通力が一つに集約され、一つの大きな尻尾になった結果さらに強力な神通力を持った真一尾狐となっていた。彼のしっぽは非常に太くてでかくそれがトレードマークになっていた。


「カヨの奴。オレ様にどんな名前をつけるつもりだったんだ。最後の言葉だったのに・・・全く思い出せねえ・・・・」

と妖狐は一瞬感慨にふけっていたが、


「はっ!いけねー!極悪非道の大妖怪様がこんなにしけてたら舐められる!虎の威を借りるどころか、虎ごと狩って伝説を作るのがオレ様だ!早速、暴れまくってやるぜ!」

とすぐに持ち直した。


 極悪非道の大妖怪様を名乗るこの妖狐が、のちに人助けばかりするヒーローになる羽目になるとは、本人すら思っていなかった。


「オレ様!豪快に参上!」

 

これがこの作品の主人公、白夜びゃくやである。


 自分は小説初心者ですが、キャラ愛とストーリーには自信があります。最後まで読んでくださりありがとうございました。

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