9.仕方ないこと
午前中に色々とありすぎてあっという間に時間は過ぎてゆきお昼休憩となった。
各々が保護者のもとに向かう中、私も席を立つと妹と弟と合流するために歩き始める。九条も紗良ちゃんを迎えにいくみたいで一緒に捜すことにした。
彼らのクラスの近くに着くと陽菜子と紗良ちゃんが仲良く手を繋いで駆け寄ってくる。その後ろには陽大もいた。
「お姉ちゃんさっきの男の人誰!?すっごく格好よかったね!」
「…うちの担任のお友達なんだって」
「御手洗先生だよね?先生のお友達が何の用事で来てたんだろう。それになぜかびしょびしょだったし」
「何でだろうね~」
陽菜子の疑問には答えずに足を進める。
よ、よかった。ひな達の方にはまだ広まっていなかったか。
実は九条と席に戻った私はクラスメイト達から質問攻めにされた。玉入れの件や白銀さんの事、さらに中村の事まで追及してくるためのらりくらりとかわしていると彼らは勝手に妄想を膨らませていった。
いわく、白銀さんに一目惚れした私は玉入れでアピールを行い、最終的に九条の時のように水をかけて惚れさせたとか。
白銀さんというライバルが現れたことで中村は嫉妬したとかいう三角関係とか。
中には白銀さんに一目惚れした九条と中村が邪魔な私を引き剥がそうとしていたとかいう変化球も混じっていた。
私は必死に否定をしていたのだが面白い事が大好きな彼らは聞く耳を持たない。九条や中村も一緒に否定してほしかったのにいつの間にか安全圏まで避難していた。
自分達も関係しているのにそれでいいの?
納得のいかない私が興奮している彼らに九条と中村が白銀さんに向ける視線は確かに意味深だったかも的な事を思わず呟いてしまったのは仕方ない。そう仕方ないのだ。
親が場所取りをしてくれている体育館の入口付近に着くと九条兄妹は教室に戻ると言った。
「紗良ちゃんのお母さんとお父さんはどこで待ってるの?」
基本的に体育館か運動場、中庭で食べることが多く、教室は一般開放されていないため教室に戻る彼らに陽菜子は不思議に思ったのだろう。首を傾げる陽菜子に紗良ちゃんは首をふった。
「ママとパパは来ないよ。だからお兄ちゃんと教室で食べるの」
「え、それなら一緒に食べようよ!ねえ、いいよね?」
紗良ちゃんの手を握りながら陽菜子がこちらを振り向く。別に問題はないため頷くと九条が止めに入ってきた。
「いや、お邪魔しては悪いから止めとくよ。ほら紗良いくよ」
紗良ちゃんの手を引く九条を今度は私が引きとどめる。
「邪魔とかそんなことないよ。ひなも紗良ちゃんと食べたいみたいだし一緒に食べようよ。それとも九条は嫌だった?」
「そんなことはないが…」
「はい、じゃあ決まりね。荷物取って来たら体育館に来て」
まだ九条は迷っていた様だが期待するかのように見つめてくる紗良ちゃんの姿を見ると、分かったと頷いた。