第七話 1
僕と優菜は今日もいつものように、向かい合って朝食を食べている。昨夜、僕が祐樹と遅くまで飲んでいたおかげで話が出来ていなかったせいか、優菜は昨日、早苗おばちゃんと福田の親父の店で何があったのか、まくしたてるように僕に話していた。
「それで、警察が来てね、私も色々訊かれたのよ! だから、今日は、早苗おばちゃんと福田のおじさんの店は、現場検証するからお休みだって。私も穴の開いたブラウスを発見した時の事情を説明しなきゃいけないから、お店に行かなきゃいけないの。早苗おばちゃん、大丈夫かな。なんだか心配……」
「優菜、今日は仕事は休みなんだろ?」
「うん、美帆に代わって貰った」
「だったら、早苗おばちゃんについててあげなよ」
「うん、そうするつもり。でも、亮ちゃんも大変だったね。いや、祐樹君が大変だったんだっけ?」
「アイツ、顔を殴られてたから、多分、今、物凄く腫れ上がってると思うよ」
「ええっ? 男前が台無しだね……」
「バンドの顔なんだから、もっと気を付けりゃいいのに」
「そうだね。でも、普段冷静な祐樹君が喧嘩だなんて、なんかあったのかな……」
優菜がそう言ったその時、祐樹が昨夜言った言葉が再び頭の中で蘇った。
『腎臓提供をしたのは、優菜だよ。優菜が亮ちゃんの命を守ったんだ。優菜が自分を傷付けてまで守りたいのは亮ちゃんなんだ。僕は、やっぱり亮ちゃんには敵わないんだよ!』
どう考えたって、衝撃的な告白だったのに、早苗おばちゃんの事件で頭がいっぱいになっている優菜に、どうしても腎臓移植について訊く気分にならないのだった。そして、僕の唯一の親友とも言える祐樹を僕は長年に渡って傷付けていたのだという事実が、僕を苦しめ口を重くしていた。




