第五話 1
祐樹の目の前で、美少女、山田さんは、路地で蹲っていた。転んだ時に、膝を強く打ったらしい。祐樹は山田さんに駆け寄り手を差し伸べたが、山田さんは恥ずかしいのか、祐樹のその手を無視し、落ちたタオルケットを被り直すと急いでその場から走り去った。祐樹は山田さんを追いかけるのを諦め、米田を詰問しようと引き返したが、彼女の姿もその場からすでに消えていた。背中に負ぶった光もお腹が空いたのかふがふが言い出すし、オムツも替えてやらなければならないし、祐樹は仕方なく自宅へ戻った。そして、芳子に事の顛末を報告すると、彼女も目を丸くしていた。
「姉ちゃんは、山田さんが若い女の子だって知ってたの?」
「うん、知ってたよ」
「えーっ! 知ってたのなら、なんで教えてくれなかったの!」
「これでも医者だから、まず最初に性別と年齢は確認するでしょ。それに、保健証を見ればわかるし」
「あ、そうか」
「でもね、私もね、山田さんに無理矢理タオルケットを取るように言うことはないのよ。統合失調症の患者さんに、ああしろこうしろと頭ごなしに押し付けるのは良くないからね」
「ふーん」
「でも、彼女、あんたの話だと、髪の毛も長かったし、可愛い洋服屋とか雑貨屋を覗いてたんだよね?」
「うん、ウィンドウに張り付いてたよ」
「そっか! じゃ、少し進歩したわね!」
「そ、そうなんだね……」
「うん、そう!」
芳子はそう言って笑った。




