第一話 11
そんな風に小学校時代を過ごした僕達だったが、中学校に進学してクラスが三クラスに増えた。僕と祐樹は腐れ縁なのか、またもや同じクラスになったが、優菜は違うクラスになった。愛川哲也も僕達とは違うクラスになった。それが変化といえば変化だった。
しかし、二学期になってもっと変化が起きた。アメリカで生まれ、カナダで育ち、関西人の両親を持つ帰国子女の転校生、菊池隼人が、僕達二人の仲間に加わった。両親が関西人のせいか、いつもテンションが高く、ウケ狙いで妙に明るく振る舞う癖がついていて、隼人は一週間も経たないうちにクラスから浮いてしまっていた。しかも彼の家も僕らと同じ方向にあり、登下校で毎日顔を合わす度に、彼から「やぁ!」と声を掛けられ、なんでだか三人でいつも一緒にいる羽目になってしまった。まぁ、三人共がクラスメイトから避けられている者が寄せ集っただけだったのだとは思うが……。
中学生になっても相変わらず僕の逃亡癖は健在で、窓の外をぼんやり眺めていたかと思うと、突然衝動的に教室を飛び出し、そのまま校門を出て外を走っていた。どうしてそんなことをしているのか、自分でも訳が分からなかった。外を走っていて、教室に帰らなければならないといつも途中で気付くのだが、気が付いてもそのままふらっとゲームセンターや繁華街に向かうこともあった。しかし、担任の体育教師、本岡信吾は、僕を諦めてくれなかった。僕が逃亡したことに気付くと、必ず目の前に現れて手を捩じられ、耳を引っ張られてそのまま中学校に戻された。
どうして、いつも担任が僕の居場所を突き止められるのか不思議で仕方なかったが、母と担任は連携していたのだろう、母に持たされていつも制服のポケットに入れていたGPS携帯のおかげだと随分後になってから気付いた。そんなことも知らないくらい、当時の僕は馬鹿だった。