第一話 10
僕と祐樹と優菜と三人でよく通ったのが、ジュエリー工房「SAKURAGI」のある商店街の真ん中に位置する駄菓子屋兼土産物屋の「うまいもんや」だった。
駄菓子屋の主人、東原太蔵はけっこうな歳の老人で、僕たちは彼のことを太蔵爺ちゃんと呼んでいた。太蔵爺ちゃんは、トメ婆ちゃん同様、店番をしながらしょっちゅう眠りこけているので、もしかして死んでるんじゃないのかと思って、チラシ広告で作った紙鉄砲を彼の耳元で「バンッ」と鳴らしたりして生存確認していた。太蔵爺ちゃんは、その度に座っている椅子からずり落ちた。
でも、安価な駄菓子と言っても僕にとっては、そんなに頻繁に買えるようなものじゃなく、だからコロッケ屋同様、ここでもたまに駄菓子をくすねることがあった。しかし、なんでだか太蔵爺ちゃんは全部お見通しで、「こら! 悪さを働くでない!」と一喝し、代わりに賞味期限切れの駄菓子をくれたりするのだった。
そうやって、僕は祐樹と優菜以外には特に親しい友達を作らず、小学校時代を過ごした。しかし、優菜は女子なので、僕や祐樹以外にも美帆やたくさんの女友達がいた。けれども、僕はただ顔を見ただけでしかめっ面されて逃げられ、祐樹は「キモい」と叫ばれ、僕たち二人は他のクラスメイト全員から避けられていた。愛川哲也のグループも僕達と同様、嫌われていたと思うが、表立って喧嘩をする時は、いつも相手が僕と祐樹で、アイツらはいつも大人がいないところで、他のクラスの生徒のいじめをするという卑怯な奴らだった。だから、僕と祐樹だけが、クラスで所謂、異端児ということになっていた。
その異端児に優菜は平気でくっ付いてきた。普通ならこういうことをする女子は、苛められたり、仲間外れにされたりするものだと思うが、なんでだか優菜に関してはそういうこともなく、いやおそらく優菜は成績優秀だし、気遣い屋だったから、一目置かれていたんだろうなと思う。とにもかくにも、優菜は子供ながらも、いつも公明正大、清廉潔白で聖人君子のような人間だった。だから、どうして優菜のような女の子が、僕達と一緒にいたがるのか、それは本当に不可解だった。優菜はもしかして、見かけによらず、変わり者なのかもしれないと僕は考えていた。




