第九話 3
祐樹も光を背負い、のんちゃんの相手をしながら、カフェを切り盛りしていた。優菜のことは心配だったが、今はカフェを繁盛させて、商店街を盛り上げることが、結果的に優菜を励ますことになると考えるしかないと思っていた。祐樹は、商店街の雑貨店で勤め始め、昼休憩のためにカフェを訪れた山田さんとカウンター越しに話をしていた。
「それでね、祐樹さん、昨日、思い切って彼に告白したんですよ」
「えっ、そうなんだね。それでどうなったの?」
「結果から先に言うと、……失恋しちゃいました」
「ええっ……」
「彼、今、付き合ってる彼女がいるって言ってました」
「そ、そうなんだ……」
「はい」
「山田さんごめんね、この間、偉そうに絶対告白したほうがいいって言っちゃって……。あんなこと言わなきゃ良かったかな……」
「ううん、そんなことないです。祐樹さんが言ったように、告白して良かったです」
「……」
「彼、言ってました、高校生の頃、自分が好きだったのは、実は私だったんだって。今も好きな気持ちは変わらなくて、駅のホームで再会できたのは嬉しかった、でも、今の自分が一番大切にしたいのは、今付き合ってる彼女で、だから私とは付き合うことはできない、だそうです。私、それを聞いて何故だか嬉しかったんです」
「え?」
「だって、今の彼女を大切にしている彼って、とっても素敵な人じゃないですか。そういう人が身近にいるんだなって分かったことが嬉しかったんです」
「そっか」
「はい」
祐樹は、自分が作ったランチをおいしそうに笑顔で食べている山田さんを見ながら、自分も思わず笑顔になっていた。