第1話 漫画研究部
はじめましての方も、いつもお読みいただいている方も、本作をご覧いただきありがとうございます。
この作品は、漫画研究部に所属する高校生二人が、文化祭へ向けて漫画を制作する青春コメディです。
……と言いたいところなのですが。
主人公たちがやっていることの大半は、漫画を描くことではありません。
「主人公は世界最強!」
「実は天使!」
「魔法は七等級!」
「やっぱり竜族も出そう!」
――そんな調子で、設定ばかり増えていきます。
果たして二人は、本当に漫画を完成させることができるのか。
創作経験のある方は「あるある」と笑いながら、そうでない方も気軽に楽しめる作品になっています。
肩の力を抜いて、最後までお付き合いいただければ嬉しいです。
聖フェリス学園高等学校。
放課後。
校舎の一角にある小さな部室では、今日も賑やかな笑い声が響いていた。
そこは漫画研究部。
漫画を描く者もいれば、読む専門の者もいる。
好きな作品について語り合い、イラストを描き、時には何時間も創作談義で盛り上がる、のんびりとした部活動だった。
部室の窓際では、一人の男子生徒がスケッチブックにペンを走らせている。
一年生、朝倉悠斗。
絵を描くことが好きで、この部へ入部した高校一年生だ。
一方、その向かいでは、漫画を夢中になって読みふける少女がいる。
一年生、橘花音。
漫画、ライトノベル、Web小説が大好き。
特に異世界ファンタジーには目がなく、
追放。
転生。
俺TUEEE。
悪役令嬢。
そんな作品を見つけては嬉しそうに読み漁っていた。
「やっぱり異世界って最高だよねぇ……」
幸せそうに頬を緩める花音を見て、悠斗は苦笑する。
「また新しい作品見つけたのか?」
「うん! 昨日だけで五作品読んだ!」
「読みすぎだろ……」
「でも全部面白かった!」
そんな他愛もないやり取りが、この部室では毎日のように繰り返されていた。
この時の悠斗は、まだ知らない。
自分が文化祭までの数か月間、作画担当ではなく、設定担当として地獄を見ることになるとは――。




