1年生10月:対抗戦準備
テストが終わって2週間後、豊穣祭の祝日を含めた三連休で五大魔法学園対抗戦『ペンタグラム杯』が行われる。
初日は中等部個人戦、2日目は高等部個人戦、最終日3日目が学園対抗団体戦だ。
団体戦のメンバーは全校生徒から4人が選抜され、選抜メンバーは個人戦に出られない。
というのも、個人戦で各学園のトップを獲った者は、団体戦メンバーに参加するからだ。
中等部トップと高等部トップの2名を加えて6名が学園代表チームとして最終日のリーグ戦を彩ることになる。
そのダリア代表チームに、ベリアルが1年生からただ1人選抜された。
『代表チーム4人に1年生で選ばれるのはすごいことだよー。』
今朝のホームルームでハンス先生がべた褒めして、ベリアルがちょっと照れて。
『ああ、それからアーチャーくんが自主退学したからねー。クラス委員足りなくなっちゃうけど、彼女の分も頑張れるよね、ノービスくん?』
さらっと伝えられてリリカは蒼白だったけど、ハンス先生からはそれ以上説明がなくて、淡々と午前の授業に突入した。
対抗戦の準備のため、午後の実技講座は1コマだけになった。
対抗戦に出ない生徒は3時頃からはフリータイムになるわけだけど、7割くらいの生徒が個人戦に出るらしい。
わたしもイマリも、もちろん個人戦にエントリーした。
ペンタグラム杯個人戦は、召喚魔物とのバトル・ロワイアル。
相手より早く、より多く魔物を倒さないといけない。
出るからには個人戦優勝して、団体戦チームに入りたい!
‥というか、多分イベント的に団体戦に出られないとまずい。
『ペンタグラム杯』
ベリアル、エリオスルート:好感度の高い方がヒロインと同じチームで出場し、ヒロインの加護を受けて見事に団体戦の優勝を飾る。
ファンルート:ベリアルもエリオスもヒロインと同じチームで出場するがすぐに脱落、危機に陥るヒロインを思わずファンが助けてチームが失格になる。
ディックルート:ディックが中等部優勝メンバーで参加して、ヒロインと同じチームで優勝する。
勇者ルート:攻略キャラのいないチームで出場して、ヒロインが自力で優勝する。
キャサリンルート:キャサリンと同じチームで出場し、ヒロインの活躍で優勝、キャサリンの嫉妬心が増す。
誰と同じチームかでルートが予想できるのだけど、そもそもわたしがチーム戦に出られないってどういうこと?
それに、負けるのは好きじゃない。
勝つためにできることは、全部やっておく。
大会に出るからには全力! 前進! あるのみ!!
というわけでわたしは午後の実技が終わると、ひとりでいつものノワールの池に向かった。
イマリとは魔法の属性が違うので自主トレは別々だ。
最近になって気づいたけど、わたしと同じ聖属性の生徒、ダリアにいるの?
図書館でも聖属性魔法の解説書が見つからなくて、炎系や水系の四大魔法はいくらでもあるのに、なにこの格差。
わたし1人だけすっごいガラパゴス感がある。
敵に勝つためにはまず己を知り、己に克つこと。
顧問の先生の信条だった。
わたしは、わたしのことを知らなすぎる。
「ノワール、ちょっとお邪魔するね。」
辺りを見回したけど、黒いもふもふ犬は今日はいないみたいだった。
池の水に手を浸すとけっこう冷たい。
「『クララ』。」
名前を唱えても何も起こらないので、売店で買った使いきりの召喚魔方陣カードも池に入れると。
池の底に魔方陣が輝き、光の中にオリエンタルな衣装を身にまとった、華奢な美女がすらっと水面に立っていた。
美女はわたしと目が合うと、軽やかに池から跳びおりてぎゅむっと抱きついてきた。
「姫、やっと呼んだ!」
わぁなんだろう、とてもいい匂いがして、弾力のあるボディにくらくらする。
「クララ?」
「そう、クララ!」
「なんだか前と違うね?」
「クララ、変化得意。海皇さま、この姿好き。」
なるほど、海皇さまは妖艶美女がお好みなのね。
赤い触手のクラーケンが現れると思っていたけど、人の姿の方が話しやすい。
クララを呼び出したのは、固有スキル『使徒』の確認と、聞きたいことがあったから。
「ねえクララ、海皇さまとお話しできないかな?」
「できる!」
できる女性風なのに子どもみたいな口調と思ったけれど。
わたしを抱きしめたまま、いきなり池に飛び込まないで!
仰向けで池に引きずりこまれて、水面に揺れる光に手を伸ばす間もなく。
クララはわたしを魔方陣の光の中に押し込んだ。




