1年生8月:攻撃(1)
アリス・エアル・マーカー(レベル17)
称号:聖女(初級)
HP:(レベル25から解放)
MP:9,999
魔法攻撃力:500
魔法防御力:800
魔法属性:聖
修得魔法:『復活』(MP消費5,000)、『聖域』(MP消費2,000/100m3/10分)、『蘇生』(MP消費500)、『治癒』(MP消費10)
武闘技:『聖拳突』(MP消費10~)
装備:学園の制服(夏服)、指定靴、節約の腕輪(MP消費4/5)、聖女の護印、聖女の刻印
所持品:MPポーション(銀)×3
ダリア魔法学園に入学して4ヶ月、覚えた魔法は4つ、レベル17なら頑張っているんじゃないかと思う。
舞踏会の翌日、夏休みの課題があるからと強引にダリアの寮に戻らせてもらった。
寮母さんには課題の資料を取りにきただけと伝えて部屋に入り、着替えなどを持ってすぐに寮を出た。
「ノワール、いる?」
いつもの森で黒犬を呼ぶと、ガサガサと低木樹が揺れてノワールが顔を出した。
「また大きくなったねー。」
しゃがんでノワールの頬をわしゃわしゃとなでる。
「おやつ持ってきたけど食べるかな?」
犬用ジャーキーを手のひらにのせて鼻先に出すと、バクバクペロペロとあっという間に食べてしまった。
「可愛いねー!」
ぎゅっと抱きしめると大人しく寄り添ってくれる。
‥あったかいなぁ。
もふもふの毛に顔を埋めていると、ノワールが目元を舐めてきた。
「くすぐったいよ、ノワール。」
長い毛をかきわけてノワールの目を発掘すると、真っ黒な丸い瞳が出てきた。
見つめると、ノワールの瞳に不安そうなわたしの顔が映る。
「ねえ、わたしちゃんと頑張れているよね‥。」
滲んだ涙を、ノワールがペロンと舐めた。
「また会いにくるからね。」
王都に出て、アーチャー商会の本店へ向かう。
アーチャー商会本店は駅前大通りに大きな看板を掲げていた。
奥の高額商品の棚で店員さんに声をかける。
「ねえ、『絶対零度』は無いの?」
「『絶対零度』でございますか、あれは禁忌品指定を受けていますので取り扱いしておりません。」
「禁忌品? ‥そんなのおかしいわ、こちらのお嬢さんが人相手に使ったじゃない。」
わたしのセリフに店員さんの笑顔が凍りついた。
「お客様、こちらへ。」
丁寧な態度で奥の個室へ案内される。
「会長がすぐ参りますので。」
冷たいお茶を出して、店員さんはすぐ引っ込んでしまった。
しばらくしてドスドスと荒い足音がして、応接室のドアが開いた。
「おまたせしてすんませんなぁ。」
恰幅のいい男性が扇子でやたらと扇ぎながら入ってきて、正面のソファーに座った。
「キャサリンの父で弊社代表のカジル・アーチャーですわ。」
彼はわたしの顔と手首を見て、
「うちの者が青い顔して飛んできましたが、なんや娘のクラスメイトさんにみっともないとこ見せてすみませんなぁ、ミス・マーカーさま。」
「急に来てしまってすみません。」
「なんや『絶対零度』をお求めとか‥何に使いますんで?」
「ちょっと魔物退治に。」
そう言うと、彼はひゅうっと息を呑んだ。
「高等部1年生のすることちゃいますねぇ。お父さんより無茶言いなさる。」
「父を知ってるの?」
「そらもう、聖戦のときは弊社も全面協力させてもらいましたんで。」
壁にかかっている写真を外して見せてくれた。
「お父さまのパーティーと、これがわたしですわ。15年前はまだ細かったんですがねえ。」
写真の真ん中に硬い表情で写っているのが父、ジャスパー・イオス・マーカーだった。
「お嬢さんはお父上似でいらっしゃる。」
くせがなくバランスがいい、こじんまりした目鼻立ち。
整っているんだけどどこか地味な印象だ。
「似ているかしら。」
「そらもう。それで『絶対零度』はあと2つ在庫がございますが‥まあこれがね。」
親指と人差し指で丸を作ってみせる。
「かなりいただかんと売れませんなぁ。」
手持ちのお金は、銀貨3枚と銅貨が少しだけ。
「魔法にはお詳しいですよね?」
「そりゃあ飯のタネですしそれなりに。」
「『蘇生』を知ってます?」
「使い手がいればご紹介いただきたいもんですな。」
カジルは近くの棚から金属の小瓶を取ってテーブルに置いた。
「これはうちで開発した『魔法瓶』というもんで、中に魔法をひとつ詰めておいて蓋を開ければ発動しますがね、『治癒』くらいならポーションで足りてまう。まあ『火球』あたりが護身用にうけるでしょうが。」
こういうのはとっときのもので、納められる魔法のレベルなら攻撃魔法より治癒魔法のほうが効果が高い。
「瀕死から満タンまで回復できる『蘇生』を持って歩けたら、そら冒険者さんに売れまくるでしょ。」
「これ、どうやって魔法を込めるの?』
カジルは瓶の蓋に埋め込まれた魔石を指す。
「蓋をしたままこの石に触って魔法を唱えるだけ、使い方もシンプルで、目玉になる魔法があれば一気に売れますやろ。」
「『蘇生』」
魔石に人差し指をのせて魔法を唱えると、瓶が銀色に光って筒の表面に『リザシエイション』の文字が浮かんだ。
「これ、いくつ作ったら『絶対零度』と交換してくれます?」
「ーお嬢さん、子供にしてはいい度胸ですなぁ。魔法学園の生徒なんてもったいない、うちで商いの修行しません?」
「魔物退治が宿命なんで。」
「その年で将来決めんでも‥。最近魔物が暴れたとは聞きませんが、なにを退治するつもりで?」
わたしはもともと、防御より攻撃型だ。
ヒロインらしく、ご令嬢らしく、なんてちょっと自分を見失っていた。
このままやられっぱなしではいられない。
わたし一人でも、全てを駆使して打ち破ってやる。
「クラーケンをちょっとどついてやろうと思って。」




