3-3 発見
攻略戦を終えた雄叫びがおさまり、頷く。
「アーロン、フランクとともに速やかに砦の出口で兵の再編を頼む」
「主様は?」
「……少し状況を見たい」
「まだ残党が隠れているかもしれません。シトとラン、あと数名の兵をお側にお付けください。今のお二人であれば兵たちも反論はしないでしょう」
「わかった」
「は、我らは砦の正門外でお待ちしております」
アーロンとフランクの指示を出す。
他の兵たちが去ったあと、骸、血の跡とにおい。その周囲の建物を見渡し、視界の地平が途切れる違和感を見つける。
何もなさそうで確かにある段差に隠れるようにして座っていたのは血を浴びたチェスターの姿だった。
震える三人は、見つかったとわかるなり、震える身体のまま土下座をした。
「申し訳ございません。…………申し訳ございません」
悔しさと恐怖が入り乱れた泣きながらの声。
そんな三人を前に膝をつき、その真ん中にいて、誰よりも代弁して謝るチェスターの手をとる。その手は震え、やがておそるおそると顔を上げた。
「遅くなってすまない。これは私の失態だ。チェスター」
「申し訳ございません。俺は……」
「チェスター、謝る必要はない。其方たちの兵が頑張ってくれたおかげで砦の制圧は無事成功した」
「…………それなら、よかった」
「だから」
笑顔を作ろうとするチェスターに次の言葉は届かなかった。
「…………安心して眠るといい」
チェスターの目を閉じさせる。
「……だれか代わってチェスター隊の戦果報告を」
「潜入に成功し、中央とそこに接する門の解放に成功するも、謎の大男集団が突如として襲いかかり……我ら三名を除き、全滅。エリオット什隊長、テリー什隊長も……」
「そうか。……報告ご苦労」
ただ感情を殺すしかなかった。まだ決戦は始まっていないのだ。
拳を強く握り、顔を上げ、前をきちんと向きながら正門に戻る。
サンフィールド城に向かうべく、編成の終わった隊が行軍の準備を整え待機していた。
「待たせたな。全軍、行軍を開始する。目指すはサンフィールド城!」
こうして川沿いを下り、ヘレナ隊とも合流する。そこからはシトとランの案内で川沿いでありながら大森林を歩き、道らしき道まで見え始めた。
そこからは足場も整い、歩みを速める。日も傾き、焦りも胸に募り感じ始めたそのときだった。
「ご主人、見えますか?」
下りの斜面を歩いていた目の前に見えたのは大森林のわずかな隙間から映る田畑と、その先の山沿いから少し突出した丘にある城。サンフィールド城の姿であった。
期待と不安に胸が高鳴るのを感じながらその城に目を凝らせば、おぼろげながらも色と旗印から見えるサンフィールド家の家紋の旗。そして、その城下には、城を囲むようにして陣を構える賊の集団があった。見えるだけで三千もの規模のように思えた。
「今すぐ突入する!」
「主様、お待ちを。ここから焦って動いても返り討ちにあってしまいます」
「……私は良い考えだと思いますよ?」
止めるアーロンと、肯定するヘレナ子爵。
「ヘレナ子爵、説明を」
「日も傾きつつある夕暮れ前。今日、この日にサンフィールド城で守る兵たちに知らせるのは今しかありません。
それに、賊はサンフィールド城包囲のために広がり、数が多く見えます。ですが実際には一千から二千ほどでしょう。サンフィールド伯爵が不意を突いての一点突破するだけなら、城下町の建物が包囲を困難にして、十分可能かと思います。
それに相手は“賊”です。であれば城下町という地の利もまたサンフィールド伯にあるでしょう」
ヘレナ子爵は微笑み、馬から降りて、アーロンの耳元で囁いた。
「恐れるのはお止めなさい。もう既に決しているのです」
声は聞こえなかった。ただ、予想通りの言葉であったために口の動きからそう読み取れた。
ヘレナ子爵は不敵な笑みを見せ、アーロンからは隠しきれない動揺をしていた。
「なっ、!?」
周囲の視線がアーロンに集まっていた。
それに気づいたらしいアーロンはこちらを向き、跪いた。
「主様、どうか私めに先鋒として騎兵を率いるご命令ください。必ずや敵陣に穴をあけ、城へと合流してみせましょう」
「その言葉を待っていたぞアーロン。私もその先鋒に加わろう。フランク!」
「はっ!」
「歩兵の指揮は任せる。騎兵の後ろに付き統率をとってくれ。不安があるなら今聞こう」
「ご命令、承りました。ご期待に添えるよう善処いたします」
話は終わり、大森林を抜けようと再び進んだ。




