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3-2 前哨

「さて、私たちも行動に移るか」

「であれば私めに別動隊としての許可を」


 第二歩兵部隊長。サンフィールドで主力の一角を担うチェスターが名乗り出た。


「理由を申せ」

「内部もわからない砦。であればこれまでのヘレナ子爵のように先に潜入し、内部と外から同時に攻撃というのが砦の門で被害防ぐことにもなるかと」

「一理ある。アーロンはどう思う?」

「……異論はございません」


 アーロン、そして再びチェスターを見ると、チェスターは力強く頷いていた。


「チェスターを信じよう。数はいくつ必要だ?」

「伍隊を十ほど。できれば二番歩兵隊の者たちを中心に」

「わかった。人選は任せる」

「ありがとうございます」

「他の者たちは三隊に分かれた砦の正面から隠れつつ、動きをもって突撃を開始する。本隊は私自ら率いる百、第一隊はフランク率いる百、第二隊はチェスターに変わってアーロンが務めてくれ」

「「はっ」」

「チェスター、砦の攻略は絶対ではない。難しいと判断した時は無理せず撤退を判断するように」

「承知しました」


 作戦は決まった。

 チェスター部隊長が五十を引き連れ先行し、三つの隊は正門を取り囲むようにして三方の木々に布陣し、それぞれの部隊長が先頭に立って、潜みながらも砦の様子の変化を待つ。

 


「……どうやってこんなところに砦を作ったのだろうな」

「主様。お考えはごもっともですが、今はお静かに」


 オリバーが注意する。


「待機する兵たちは上手く隠れているか?」

「ご心配なさらずに。主様の突入に合わせて、待機している兵たちは掛け声とともに突入できる……はずです」

「……ヘレナ子爵ならもっと上手く作戦を練ったのだろうか」

「悔しいながら、おそらくできたでしょう。ですが意識しすぎて作戦を複雑にするのは愚策だと思います」

「愚策……か」

「主様が、とか策がというのではなく、兵がそれについて行けないのです。……ヘレナ子爵の兵が羨ましいですか?」

「それを説明できるオリバーたちがいるんだ。羨ましいと思うこともないだろう」


 しばし無言の時間の中で待つ。

 一向に現れない変化にキースが不意に呟いた。


「…………遅いですね」


 その言葉に目を閉じ、胸のざわつきと相談し、大きく息を吐き、目を開くと剣を抜く。


「たしかにそうだ。今は直感を信じる時だな」

「……主様?」

「全軍、我に続け!」


 その掛け声と同時に真っ先に飛び出したつもりだった。

 だが優秀なキースとオリバー、そして後ろで待つ兵たちは、その掛け声を待ちわびたがごとく「突撃」という言葉が飛び交い走り出し、アーロン、フランクも続いた。


「主様! 砦の正門はまだ開いていません! いかがなさるおつもりですか」


 追いついたキースの言葉どおり正門はまだ閉じていた。


「ならば開けるまでだ。オリバー!」


 正門の両端の台に立つ二人の見張りはこちらの様子に気づき、呆気にとられていたが、我に返ったようにクロスボウで狙い始めた。

 その迎撃を優先した行動も、我に返るまでの時間を取り戻すまでには至らなかった。


 跳んで、壁に手をついたオリバーの肩を借り、蹴りあがる。鎧を身につけない身軽な身体は一人では手を伸ばしても届かなかった柵を飛び越え、狙ったであろう矢も外れ、単身で砦の内側へと入り込んだ。


「しまった!」


 賊の一声はそこで途切れ、次の矢が放たれるより先に門の死角となる下側に入り、そのまま閂を外して、砦の門を開ける。

 そして、兵たちの中で最初に見た砦内の景色に思わずつぶやく。


「……少ない?」


 サンフィールドの兵たちが開いた門からなだれ込み、賊を倒しながらさらに奥へ進んでいく。

 そこから少し遅れてフランクが門から先へ向かい、アーロン、オリバー、キース。そしてシトとランが追いついた。


「主様、ご無茶はほどほどにお願いいたします」

「キース、すまなかった」

「まさか、主様だったのですか! あんな手慣れた技をどこで……。こうやってお忍びで抜け出していたのですね!」


 睨むアーロンにオリバーとともに目をそらした。


「そ、そんなことよりだ。アーロン、この砦は何か変ではないか」

「……賊が少ないことしか」

「では、チェスターが失敗する景色に思うか?」

「…………いいえ」


「ご主人、少しよろしいでしょうか。その、奥まで討伐のご許可を」


 シトとランが物言いたげな目で見ていた。


「向かうといい」


 シトとランが手にした槍を見て頷くと、彼らが真っ直ぐ向かったのを見送ってアーロンを見る。


「私たちも向かおう」


 次々と来る、制圧の報告に奥へ向かうよう指示をする。そして先へ、奥へと目指す。

 そして、次の既に開かれた門を通り、既に賊たちが多く倒れる砦の中心部を過ぎ、さらに門を通って最奥部にたどり着いた。


 そこに広がっていた光景。

 賊に加えて、サンフィールドの兵だった残骸が地を赤い染めていた。その中心の広場では、人の三倍はあろうかという大男が百近く既に肉塊として倒れていた。

 その倒れた大男の上に立って見渡すシトとラン。それを取り囲むようにサンフィールドの兵たちが呆然としたり喝采を上げていた。


「これは……あの二人が倒したのでしょうか?」

「そのようだな」


 キースの問いに頷く。その会話に気づいた兵たちが道をあけると、二人は気づいて駆け寄ると跪いた。


「討伐。完了いたしました」

「よくやった。仮ではあるが二人の伍長の地位を任ずる。他に何が欲しいかをよく考えておくように」

「ありがたきお言葉。更なる忠誠を誓います」


 頷き、続いてチェスターを探す。

 勝どきを待つ兵たちの姿からはチェスターの姿は見当たらない。尋ねたい気持ちを拳を握って殺し、剣を高く掲げる。


「勝どきを上げよ!」


 兵たちは雄叫びを上げた。


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