マッチングアプリでの出会い
さてその夜。
家(両親と同居)に帰った私は、夕ご飯を食べてお風呂から出た後、早速マッチングアプリのプロフィール設定をすることにしました。
何しろ、ちゃんと活用できているか、明日幸子さんがチェックなさるというのです。
TwitterだのFacebookだのといったSNSすら一切やっていない私ですが、設定に戸惑うことはありませんでした。
自己紹介文の入力に悩んだ程度でしょうか。
何しろ、自己アピールできるようなことが何もないのです。
身長や体重なんかはありのままを素直に入力しましたが、自分に関して特筆できるようなことというと・・・。
趣味の欄には無難なところで映画観賞と旅行と入力。
好きな動物は猫。
まぁ、お料理するのは好きかな。
一番困ったのは自撮り写真です。
幸子さん曰く、
「写真載せてるのと載せてないので、マッチング数が全然違うらしいから」
とのことでしたが・・・。
確かに、ネット上での出会いだったら相手の顔が見えた方が安心ですよね。
でも正直、自撮りなんてほとんどしたことがありません。
幸子さんは
「適当に撮って後から加工すればいいのよ」
とおっしゃいますが、それってちょっと詐欺・・・。
仕方がないので、何枚か撮影してみて一番マシに思えるものを加工なしにアップしました。
ありのままの私を見て気に入っていただける男性に巡り会えればいいな、なんてお花畑なことを考えていたのも事実です。
幸子さんに半ば強制的に入会させられたマッチングアプリではありましたが、不安や面倒くささの一方で、ちょっと期待というか・・・ワクワクしている自分がいることも確かでした。
私だって街中のラブラブカップルを見たり幸子さんのノロケ話を耳にして羨ましいと全く思わなかったわけではありません。
ただ、男性とのお付き合いなんてコミュ障の自分には遠い話・・・あまり関係のない話だと思っていたんです。
何しろ、新しく出会った人と人間関係を作るまでに相当時間がかかりますし、慣れない相手の前だと上手く話せなくて挙動不審になります。
以前どなたかに
「いつまでたっても懐かない家猫」
と評されたことがありますが、自分でも本当そんな感じだと思います。
知らない人の前だと特に緊張してあがって頭が真っ白になってしまいますし。
考えてみれば、そんな私がマッチングアプリを始めるのは案外いいアイディアだったかもしれません。
いきなり顔を合わせるとかでなく、まずはメールなりLINEなりで文字のやりとりから始められますし、その間にお相手の人となりも多少は分かるでしょうし。
合コンなんかよりも全然気楽といえば気楽です。
--ところが。
私の見立ては少々甘かったようです。
マッチングアプリに登録したはいいものの、登録した途端・・・まだプロフィールを入力するかしないかの段階で、男性からの反応がこれでもかと来るのです。
私みたいな地味子なんて相手にしてくださる方は少ないだろうと呑気に構えていたので、これには大変驚きました。
いいねしてくださる方、サイト内メールをくださる方・・・。
あっという間に10件20件と増えていき、その全てに対応しなければと慌てた私は完全にパニックに陥りました。
おまけに、中には
「条件あったら教えてください」
だの
「今から会えますか」
だの、露骨なのだと
「いくらですか」
なんて質問してくる方までいます。
最初は何のことなのか分からなかったのですが、要するに体を売るというお話なのですね。
それが分かった瞬間ゾッとしてしまいました。
極めつけが
「パパ募集してませんか」
という質問。
これって噂に聞くパパ活というやつですか・・・!
この辺りで私のキャパは限界を迎えました。
マッチングアプリならスムーズに男性との関係を始められると思いましたが、無理です。
無理無理無理無理かたつむりというやつです。
完全にキャパオーバーになって無の境地に達した私はそのまま静かにマッチングアプリを退会しました。




