ドキドキの初対面(はつたいめん) 4
「まぁ、俺営業苦手だから」
「でも・・・営業ってホストさんにとっては基本のような気がしますけど・・・」
「うん、まぁそうなんだけどね」
そこで純さんはちょっと伏し目がちに笑いました。
「なんか『店に来て』ってあんまり強く言えないというか・・・。しつこいって思われるのも嫌だしさ」
良い意味でも悪い意味でも押しが弱いということでしょうか。
マッチングアプリを利用していた時、某巨大掲示板でそのサイトのスレッドをチェックしていたのですが、確かに「ホストの営業がしつこくてうざい」というレスがちらほら見られました。
中にはプロフィールのスクショ+名指しで批判されているホストさんもいらっしゃってなかなかカオスだったのを覚えています。
マッチングアプリを通じて真面目に恋人や結婚相手を探してらっしゃる女性からすれば、そこを営業の場としてしか考えていないホストさんたちは煙たい存在でしょう。
騙されたとさえ感じるかもしれません。
ただ、純さんを見ているとホストやホスト業界もそれだけ必死なのだなとも思うのです。
実は、純さんとお会いする前に、ホストやその業界のことについてこっそりいろいろ調べてきました。
純さんのことについて知りたいという気持ちもありましたし、自己防衛の意味もありました。
そうやって調べた中に「この業界では優しい人ほど上にいけない」という一文を見かけたのを覚えています。
純さんがお茶挽きに甘んじてらっしゃるのは、やっぱりその優しさのせいなのかもしれません。
「できれば子供の将来の夢のNo.1がホストっていう世の中になるといいんだけどね」
それは・・・かなり難しいかもしれません。
女性の社会的地位向上なんかの問題もからんできそうですし、一般の女性にとってはまだまだ敷居が高すぎます。
ただ、同じ夜のお仕事でもキャバクラが接待に使われたり、若い女性の憧れの職業にキャバ嬢がランクインするなんてお話も聞きますし、このままホストクラブのイメージが変わり続ければあるいは、ということも無きにしもあらずかもしれません。
最早何が流行るか分からない世の中ですから。
最近ではラブホで女子会なんてプランもあるらしいので(あくまで幸子さんから聞いただけです。私はラブホなんて行ったことないんですからっ)、ゆくゆくはホストクラブで女子会なんてことになったら面白いかもしれません。
もっとも、マッチングアプリや掲示板を見る限り、ホストさん側の意識改革も必要でしょう。
お仕事について熱く語る純さんのお話を、私はほとんど黙って聞いていました。
時々質問したり相槌を打ったりする程度です。
純さんのお仕事に対する熱意はとても強く伝わってきました。
昔から、職業に貴賤はないと言います。
どんな職種であれ、情熱を持ってご自分の仕事に当たる男性は素敵だと思います。
ただ、いくら頑張っても結果が伴わないことも多々あります。
こうして純さんとお知り合いになったのは何かの縁です。
それは間違いありません。
そしてお話を聞くうちに、そんな純さんをとっても応援したくなりました。
純さんがホストだからでなく、純さんだから。
きっと純さんはちょっと不器用なところがあって、だから営業が苦手でお茶挽きに甘んじてて――
「あのっ」
「何?」
「今度お店にうかがってよろしいですかっ?」
気づいたら、そう言ってました。




