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お稲荷様の異世界探訪  作者: 瀧乃助
序章「王都編・お稲荷様の街角探訪」
10/10

学園へ行ってみよう(1)

そうだ、学校へ行こう


 朝あたしはひっそりと狐白様の部屋へと侵入をしましたっ。

 此処最近のあたしの日課となっておりますっ。

 狐白様が家に来て下さってから早くも今日で三日目。

 初日は顔合わせ程度、しかしあたしは此処で初めて狐白様を見たんだけど一目でこの人だ、と思いましたっ。

 何がこの人かって? 言わさないでよこの野郎っ。

 二日目はあたしとお姉さまと椎ちゃんと狐白様でFAGへ行ったんだよねっ。

 あたしも初めて行ったんだけどすごかったとしか言えないよっ。

 あたしも早く登録したいな~っ。

 っとと、こういう事を言ってる場合じゃなかったんだよっ。

 三日目の今日は重大な任務があるんですっ。

 狐白様を優しく気持ちよく起こしてあげるという任務がねっ。


 と言う訳でレッツインザ狐白様のふとーんっ。

 あ゛ー……ぬっくぬくで狐白様のいい香りーっ。

 幸せです、死んでもいいですー……ハッ! いけないいけない、あたしは狐白様を起こす為に此処に居るんで、居るんで……ふにゅーっ。

 た、助けてくだしゃい狐白様の香りやその他諸々に勝てましぇん……。

 !? はぅっ。こ、ここここ、狐白様に抱きつかれてしまいましたっ。

 うにゃにゃにゃにゃーっ。

 ぎゅーってされてるぅーっ。

 そのままゴロゴロされてるぅーっ。

 嗚呼、やばいよ、鼻血少し出ちゃったよっ。

 もう人生に悔いはないです、はいっ。

 起こさないといけないんですよっ。

 おーきーてーくーだーさーいーっ。


 ……はぁはぁはぁ、何とか起きてくれたみたい。

 でも、なんか寝ぼけてる。

 ふふふ、それもまた可愛いでぇっ。

 ふらふら上半身を揺らしながらまだボーっとしてるっ。

 はぁはぁ、お嬢ちゃんかわええのぅ―――っ!?

 チュッ……。

 ―――キ……ス……?

 え、今あたしき、キスされたのっ?

 え、嘘、本当?

 どっち、どっちなのっ。

 ええい、どっちでもいいよっ。

 キス、キスされたんだか……りゃぁ~っ。


 ・

 ・・

 ・・・

 ・・

 ・


 ん? あれ、何か今変な事をしてしまった様な……。

 うーん、寝ぼけてたからわからん。

 あ、朱音ちゃんだ。また僕の布団に忍び込んできたのかな?

 ん、あれ、何か目を回してるなぁ。それに鼻血も出てるっぽいし。

 うーん、まだ寝ぼけてるのかな……顔洗って来よう。

 ―――うん、すっきりした。

 それにしてもやっぱり朱音ちゃんは本物だったか。

 顔を洗って戻ってきても変わらず同じ態勢で微笑みを浮かべて鼻血を出しながら目を回してる。

 何があったんだろうか?


「おはようございます、狐白様。朱音お嬢様の唇の感触はどうでしたか?」

「にょほっ! 吃驚した! 何時もいつの間にか背後に立つ人ですね椎奈さん。……所で最後の方に何か言いましたか?」

「ええ、ですから、朱音お嬢様の唇の感触はどうだったかと」

「え、唇? 何の事ですか?」

「ああ、寝ぼけていらっしゃったのですね。それは残念でございました。いえ、これはこれで面白いのでしょうか?」

「?」

「では、詳しくご説明いたしましょう」


 そう言って椎奈さんの説明が始まりました。

 ……ええ、自分でもびっくりな寝ぼけ具合でした。

 最初の方から聞いて行くうちに僕の羞恥心が悲鳴を上げ始めてます。

 特に抱きついて抱き枕よろしくギュッと抱きしめてしまったとか、起きてなお寝ぼけたまま朱音ちゃんにキスしてしまっただとか。


「で、どうでしたか朱音お嬢様の唇は。柔らかかったですか?」

「お、覚えてませんよ。寝ぼけてたんですから!」

「あらあら、可哀想に。朱音お嬢様のファーストキスだったのかも知れなかったのに」

「―――っ、だだって……」

「だってもヘチマもありませんよ。朱音お嬢様のファーストキスをどうしてくれるのですか?」

「―――っ」


 ぽてっと僕は倒れて気を失った。


「やれやれ、まだまだですね。ふふ、でも面白いネタをゲットです」

「……椎奈。何をしているのかしら?」

「お、奥様。い、いえ、何も悪い事はしてませんよ?」

「そう、悪い事(・・・)はしていないのね。では悪くない事は何をしたの?」

「……え、その、はい」


 椎奈さんはこれまたいつの間にかやってきていた静音さんに問い詰められることとなっていた。

 僕は何とか椎奈さんが問い詰められている間に復活。

 そしてその時椎奈さんはとても疲れているように見えた。


「あら、おはよう狐白ちゃん。どうだった寝心地と―――娘の唇は?」

「静音さんまで―――っ!」

「ふふふ、冗談よ。狐白ちゃんが悪い訳じゃないわ。悪いのは狐白ちゃんのベッドに侵入した朱音が悪いのだから。ファーストキスなんて奪われる隙を見せた朱音が悪いのよ。ま、朱音は本望だったでしょうけど?」

「そ、そうですかね?」

「ふふふ、後で聞いてみたら?」

「い、いや、無理ですよ」

「そう、そう言う事にしておいてあげる。じゃあ、椎奈、朱音をお願いね。狐白ちゃん、食堂へ行きましょう?」

「わかりました」


 僕と静音さんは食堂へと行き、ぐったりしている椎奈さんと未だに目を回している朱音ちゃんは僕の部屋でもう少し休んで行くようだ。

 食堂に着くと既に朱音ちゃんと鈴音さんのお父さんである和徳さんがのんびりとしており、その隣には鈴音ちゃんも制服と思われる物を着て朝食をとっていた。


「やあ、おはよう。狐白君。中々面白い事があったそうだね。……おっと、言う必要はないよ。謝る必要もね」

「それにしても朱音はまた狐白さんのベッドに忍び込んだんですか。妹ながら申し訳ありません」

「いやいや、気にしてないですから」

「さ、では朝食でもいかがかな? おーい、狐白君と妻にも朝食を頼むよ」

「かしこまりました、旦那様」


 そう言って僕たちの朝食が準備される。

 僕と静音さんが席について四人で朝食が始まった。

 とは言っても和徳さんと鈴音さんは既に食べ終わっているみたいだけど。


「そう言えば鈴音さん。その格好はもしかして学校の?」

「ええ、王都立学園高等部の制服です」


 そう言って立って見せてくれたのはチェック柄のスカートとブレザーの上着、しかも上着には王都立学園のエンブレムが刺繍されている。

 それに、胸元には大きなリボンが付けられていた。


「このチェック柄のスカートとリボンは在籍する学科によって色が違うんですよ。赤は騎士科、青は魔法科、緑は生産科、黒は商業科、そして紫は生徒会所属の方々の実が身に付けられる色です。因みに私は青ですから魔法科ですね」


 その後は学科の説明もしてくれた。

 騎士科は騎士とは言っているが、所謂前衛型の生徒が所属する科で誰もが本当に騎士になる訳ではない。

 FAGの前衛職の人は大抵この科の出身だそうだ。

 魔法科はその名の通り、後方支援型の生徒が所属する科で後々宮廷魔導師になる人もいるとか。

 FAGでも活躍する人も多いみたいだ。

 得に回復系スキルを持った人は重宝されるとか。

 生産科は鍛冶師になる人が多く、この科の人たちがFAGなどで売られている魔弾の学生品を作っているという。

 次に商業科だが、これはまあ、その名の通り商売に関する仕事に着く人が所属する科だと言う。

 FAGで受付の仕事をしたりレストランや喫茶店の依頼アルバイトを受けている人は大体この科の出身者だって。


「もしも僕が学園所為なら青色ってことですかね。支援魔法を覚える予定ですから」

「そうなりますね」

「ほう、狐白君は支援魔法使いになりたいのか。あの職は不人気ながら、居るのと居ないのとでは戦闘がだいぶ違ってくるからな。鈴音、狐白君は他のチームに行かない様に大事にするんだぞ?」

「はい、わかってますよ、御父様」

「それなら良い。……お、そうだ、狐白君。鈴音について行って学園でも見学して来てみたらいかがかな? 本人も少し乗り気なんじゃないか?」

「あら、いいわね、それ。鈴音、狐白ちゃんも一緒に連れて行ってあげなさい。学園には私から連絡しておくわ」

「わかりました」


 あれ、何か僕が学園に行く事が何時の間にか決定事項だよ?

 しかも僕が乗り気?

 何時の間にそんな気になってたんだ僕は。


「え、でも、迷惑じゃ……」

「ふふふ、貴族の権力はこういう時に使うのよ」

「ええ!?」

「とは言っても学園に権力は意味無いから関係の無い事なのだけれど」


 くすくすと笑って冗談(だったらしい)を言う静音さん。

 そうこう会話をしていると漸く復活したのか朱音ちゃんも会話に参戦し、学園行きに賛同した。

 学園側からも連絡が来て「将来有望な子なら大歓迎です」と言って喜んで迎え入れてくれるようだ。

 ―――あれ、今度は微妙に編入生の様な扱いじゃないか?


「では学園に行く準備をしましょう。とはいっても狐白さんは私服でいいのですけどね」

「あたしも急いで着替えてくるよっ」


 バビュンと食堂から出て行った朱音ちゃん。

 僕もまだ寝まきだったので服を着替えるため借りている自室へと戻った。

 って言うか、起きたまんまの格好だったから、きぐるみパジャマじゃん!

 うっわー、恥ずかし。

 ……まぁ、待たせるのはよくないか。

 恥ずかしさは一端置いといて速く着替えよう。

 がさごそとクローゼット―――中身はなんでも着ていいと言われている―――を漁り、今日着て行く服を決め着替える。

 ―――ふと思ったんだけど、これからこの家を出て宿屋とかで一人暮らしをするんだからこんなぜいたくをしているのは駄目なんだよね。

 反省。

 そろそろちゃんと依頼を受けて、お金を稼いで自分の身の回りの物とか宿とかを借りて行けるようにしないとだらだらと自活できない子になってしまう。

 これはなんと言うトラップ。

 僕をこの家から出て行けなくするものなのか!


「はい、その通りです。狐白様」

「うわっ。な、何なんですかいきなり」

「いえ、狐白様が遅かったもので見に来ました。それに、何かブツブツとつぶやいていたので、聞いてみたらトラップがどうの、この家にずっと居させる目的がどうのと聞こえたので、親切に答えてあげたのですよ?」

「え、口に出してました? って、その前にやっぱり僕を一人立ちさせないトラップなんですかこれ!?」

「さて、何のことやら。ヒューヒュー」

「いや、口笛吹けてないですよ……」


 なんかどっと疲れた。

 まぁ、着替えも終わったし、待ち合わせ場所……とわ言っても玄関ホールだけど、向かいますかね。


「あ、漸く来ましたね。では参りましょう」

「レッツゴーだよっ」

「あ、朱音ちゃんの制服は鈴音さんのとはまた違うんだね」

「ええ、朱音の制服は中等部用のものですから」

「でも可愛いでしょっ!」

「そうだね」

「にゃっ!」


 朝の時の様に再び顔を赤くした朱音ちゃん。

 今日はごめんね、僕の所為で。

 だが後悔はしていない、しかし反省はしているさ!

 ―――流石に今回は学園までの道のりを歩いて行く訳にも行かないので車で学園に向かった。

 今日は普通に歩いて行くと遅刻するらしいからね。

 と言う事はいつも歩きなのかな?

 え、僕が軟弱でFAGに行った時みたいにだらだらと歩いて欲しくないからだって?

 悪うございました。


 そうして僕たちは王都立学園へと向かった。

 ええ、車とは便利なものだと久しぶりに思いましたとも。

 でも、こっちの世界の車って最高速が50km/hなんだって。

 原付も最高速が30km/hだしね。

 ―――そう言えば向こうの皆はどうしてるかな。

 火事は大丈夫だったかな。

 お金も足りてるかな。

 それよりもまず、僕は元の世界に帰れるのかな。

 追々調べて行くしかないか。

 まずは、こっちの世界を楽しもう。

 じゃないと損だからね。


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