〈第五章〉十二月二十九日
今回はいつもと少し雰囲気が違い、シリアスなお話になります。
未来さんが抱えていた過去とは何なのか。
ぜひ注目して読んでみてください!
未来さんの家に行ってから五日が経った
俺はいまだに、未来さんの家の匂いが忘れられずに、毎日を無駄に過ごしている。
永井「勉強しないとな…」
そんな時スマホが鳴る。
スマホ「ピコッ」
俺は未来さんからの連絡だと思って、すぐにスマホを見る。
メールは姉ちゃんからだった。
永井「なんだよ。姉ちゃんかよ…」
俺は嫌々返信する。
〜スマホの画面〜
姉 「今日友達の誕生日プレゼントを買わないとなんだけど、一緒に考えてくんね?」
永井「嫌です。一人で行ってください」
心の中「いくわけがないだろ。俺は受験生だぞ。勉強してないけど。」
姉 「えーーー笑いいじゃんこの可愛いお姉ちゃんといこーよー」
確かに、俺のお姉ちゃんは「世間一般的」に可愛い。
永井「えー。まあどこに行くかによる」
姉 「横浜駅〜」
心の中「今欲しいラノベが横浜駅にあるから正直行きたいな…」
俺は素直に言えずにこう言った。
永井「うんまあ近いからいいよ。」
姉 「ナイス!じゃあ十二時に現地集合で」
永井「はーい」
〜集合時間〜
永井「あいつ来ねえなー!」
三十分も待ってるのに一向に来ない。
俺はスマホを何回も確認するが、姉ちゃんからの連絡はない。
永井「まさか忘れてるんじゃないだろうな…!」
俺は少しイライラしながら、周りを見る。
そんな時、見たことのある美人が見えた。
こんな人混みの中でもすぐに目に入った。
見間違えるはずがない。あの綺麗な黒髪も見覚えのある後ろ姿も間違いなく未来さんだ
そう思った俺は周りの人を避けて、その美人に話しかけにいった。
永井「あれ?未来さんだよね?」
未来「…」
永井「?あれ違いますか?」
そう言った瞬間、未来さんは俯きながら逃げていった。
一瞬、何が起きたのか理解できなかった。
俺はただ声をかけただけだ。なのに、どうして逃げられたんだろう。
もしかして、俺は何か嫌われるようなことをしてしまったのだろうか。
永井「なんで…」
姉 「ごめんごめん少し遅れた〜笑。ちょいとナンパされてきた!笑」
永井 「…」
俺は追いかけた方がいいのだろうか。追いかけたら気持ち悪がられるだろうか。
心の中「行かなきゃ…」
永井「本当にごめん。姉ちゃん。一人で行ってくれ」
姉 「ちょっと待ちなさい」
そう言われながら腕を掴まれる。
俺は必死に振り払おうとした。
永井「離してくれよ!!今追いかけなきゃいけないんだよ…!」
姉 「あんた、一回落ち着きなさい。何かあった?」
俺は我に返り、落ち込みながら言う。
頭の中では色々な考えが巡っていた。
でも、今の俺には何が正解なのか全く分からなかった。
永井 「実は、さっき友達に会ったんだけど、逃げられちゃって…」
姉 「そっか。それ女の子?」
永井 「うん。」
姉 「そしたら、絶対に追いかけちゃいけないね。」
永井「なんでだよ!まだ近くにいるかもしれないんだぞ…」
姉 「一回落ち着け。逃げられた原因はわかる?」
永井「わからない。最近までいい感じだったのに…」
姉 「そっか…その女の子の連絡先は持ってるよね?」
永井「うん…持ってるけど。」
姉 「その女の子にも事情があるはずだよ。聞いてみなさい。」
俺はまだ自分から連絡したことがなかった。
いつも未来さんからのメールを待っていた。
心の中「勇気を出せ俺!!!!!!」
永井「わかった…!連絡してみる!」
姉 「そうしなさい。私は買い物行くね」
そう言い、姉ちゃんは去っていった。
〜スマホの画面〜
永井「未来さん。さっき横浜駅にいた?」
意外と早く既読がつく。
未来「はい。居ました。」
永井「単刀直入に言うね。」
永井「俺、何かしちゃった?…」
このメールを送ってから、十秒もしないうちに、急に電話がかかってきた。
まさか電話がかかってくるとは思っていなかった俺は、少し驚きながら通話ボタンを押した。
永井「はい…もしもし…?」
未来「さっきは本当にすみませんでした!!!」
大きな声で未来さんがそう言った。
永井「大丈夫だよ!それより、俺なんかやっちゃいましたか?…」
未来「違うんです…学さんは悪くないんです…」
未来「学さん。実は…!」
覚悟を決めたように、未来さんが話す。
未来「学さんには言わなきゃいけないことがあります。」
未来さんが深呼吸する。
未来「実は、私は月に一度しか、友達に会っちゃいけないんです」
俺は少し困惑したが、すぐに返答した。
永井「それを破るとどうなるの?」
未来「何をされるかわかりません。」
永井「…」
未来「少し長くなりますが色々話しますね」
永井「うん」
未来「実は、私が中学ニ年生の頃、学校で知り合った女の子と、親しくなって毎日のように遊んでいたんです。」
未来「そんな時、急に父親がこう言ったんです…」
未来の父「あの子と遊ぶのはもうやめなさい。未来にとって悪影響だ。」
未来「もちろん。私は反論しました。」
中二の頃の未来「悪影響なんかじゃないよ!あの子はとってもいい子なの!!」
未来「その時突然父親から殴られました。」
永井「え……」
未来「私の父親はこう言いました」
未来の父「反論すんじゃねぇ!!!お前は、天童グループの令嬢なんだぞ!」
未来「そう言われて、私は泣きました。どれだけ泣いていたかわかりません。」
未来「その時、私の父親はルールを作ると言いました。」
未来の父「これからお前が友達と月に一回以上遊んだら、家を追い出す。」
未来「私はびっくりしました。そして母親が畳み掛けるように私に言いました」
未来の母「分かった?あんたは月に一回しか、友達に会わないこと!」
未来「……」
未来の父「返事は?」
未来「その時、私の中で、何かがプツンと切れました。」
未来「私は泣きながら言いました。」
中二の頃の未来「こんな家もう住みたくない。」
未来の父「じゃあ一人で暮らせ。マンションの鍵だけ後で渡すわ。」
未来の父「あー、あと、お前さっきのルールを破ったらマンションの契約も解除するから」
未来「とても、軽い感じで言われてショックでした」
未来「私はその日のうちに家を出ました。」
未来「私、今でもルールを破ったらどうなるか怖いんです。」
未来「だからさっき逃げてしまったんです…本当にすみません。」
俺は何も言えなかった。
未来さんが今までどんな気持ちで生活してきたのか、俺には想像することしかできない。
ただ、一つだけ分かったことがある。未来さんはずっと、このことを誰にも言えずにいたのだろう。
俺は、最初に未来さんにこう言った。
永井「まずは、話してくれて嬉しい。」
永井「そのお父さん今どこにいるかわかる?」
未来「多分…家で仕事してると思います…」
永井「分かった。ちょっと一発殴ってくる…!!!」
正直、何をすればいいのかなんて分からない。
でも、未来さんが今まで苦しんできたことを知って、何もしないわけにはいかなかった。
俺は検索サイトで未来さんの実家の住所を調べながら、走り出した。
永井「ごめん!ちょっと、一回切るね!」
未来「学さん!!!ちょっと待ってください!」
心の中「流石に殴るはまずかったか…」
そう思いながら走っていると、未来さんは吹っ切れたように言った。
未来「私、学さんにこのこと言えてスッキリしました!私も殴りに行きます!!!」
その未来さんの吹っ切れたような声は、
今日聞いた中で一番、晴れやかに俺の耳へ届いた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
未来さんの過去を知った永井。
そして、未来さん自身も覚悟を決めました。
次回もぜひよろしくお願いします!




