Scene47
リクとアリスは猫を連れて学校に戻り、山田先生にダンボールに入った猫を引き渡した。職員室を出るとアリスが言った。
アリス「ねえ、今からリクの家に行ってもいい?」
リク「え?いいけど、もう結構遅い時間だよ。アリス、時間大丈夫なの?」
アリス「いいから、いいから。」
リク「まあいいけど。ウチに来ても何もないよ。」
アリス「それは良かった!」
リク「どういうこと?」
アリス「まあ、いいから。リクの家に行く前にコンビニに寄りたいんだけど。」
リク「帰り道にあるけど、何か買うの?」
それからリクとアリスはコンビニに寄ってリクの家に行った。
アリス「ちょっと台所借りてもいい?」
リク「いいけど。そろそろ何を企んでるのか教えてくれない?」
アリス「企みって何よ?何か悪いことをしようとしてるみたいじゃない。」
リク「台所を借りたいなんて、何か作るんだろうなってことは分かるけど、ちょっと怖いぞ。」
アリス「そんな大したことじゃないわよ。猫の御礼で、フレンチトーストでも作ってあげようかと思って。」
リク「フレンチトースト?なぜフレンチトースト?」
アリス「あれ、フレンチトースト嫌いな人?」
リク「嫌いじゃないけど、なかなかピンポイントでフレンチトーストを作りに来る人いないだろ?」
アリスは笑った。
アリス「フレンチトーストは、食パンと卵と牛乳があればできちゃうの。お金の無い高校生の財布に優しいでしょ。でも、あと砂糖とバターもいるけどね。」
アリスはまた笑った。
リク「まあ、合理的ではあるな。」
アリス「リク、合理的なの好きでしょ?」
リク「オレ、合理的キャラなの?」
アリス「リク、手伝ってくれる?」
リク「え!オレも手伝うの?さっき御礼とか言ってなかったっけ?」
アリス「リクは食パンのみみを切って。切ったみみはこのボールの中に。みみは捨てるところじゃないから丁寧に扱ってよ。」
リクは食パンを袋から取り出して、パンのみみを切り始めた。リクは慣れない手つきで包丁を使っていた。それを見たアリスが心配そうに声をかけた。
アリス「何か危なっかしいな。」
アリスはリクの手に触れながら包丁の持ち方を直した。
アリス「リクってフレンチトースト作ったことないの?」
リク「普通、無いだろう?」
アリス「普通、あるだろう?」
リク「いや無いって。食パンはトーストでしか食べないだろ?そりゃアリスの家は違うかもしれないけど。」
アリス「仕方ないな。じゃあ、私が作り方教えてあげる。」
リク「オレが作るのかよ。さっき御礼でフレンチトースト作ってくれるって言ってなかったか?」
アリス「じゃあ変更。フレンチトーストの作り方を教えてあげるのが御礼。文句ある?」
リク「いや、文句はないけど。」
リクは卵を割り始めた。リクが卵を割って生卵をボールの中に落とすと、卵の殻も一緒にボールの中に落ちた。するとアリスは笑いながらリクの肩を軽く小突いた。
アリス「しっかりしてよ。」
アリスの仕草が可愛らしくて、リクは笑いながら言った。
リク「次はちゃんとやるから。」
リクはパンを卵と牛乳にまぶして、バターを敷いたフライパンで焼き始めた。リクが作業に集中していると、フライパンを覗き込んだアリスの肩がリクの肩に軽く触れた。リクが少し照れくさそうに「あ、ごめん、」と言いうと、アリスは軽く笑って「大丈夫だよ。」と返した。
フレンチトーストが完成し、2人はテーブルに座った。最初にアリスが味見をした。
アリス「思ったより美味しいじゃん!」
リク「思ったよりって、アリスに言われるがままに作っただけだから。」
アリス「ああ、そっか。」
アリスは笑った。