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Scene173

その日、夕方から雪が降り始め、東京の街は白く染まりつつあった。リクは御成門の駅で降りて、地下のホームから地上に出た。それからリクたちが龍と戦った増上寺を通って東京タワーに向かった。


リクは東京タワーにつくと、エレベーターを使わずに、階段を使って東京タワーを登っていった。そして、アリスと最後の時に、最後にいた場所に立った。


リクは携帯でSNSのアプリを開いて自分の投稿を見た。その投稿の内容はこうだった。


投稿(12月24日、最後の時にいた、最後の場所で待ってる)


リクは東京タワーから見える夜景を見ながら、最後に会ったときのアリスのことを思い出していた。


――


リク「じゃあ、これからも宝物を作っていけるかな?」


アリス「うん。作っていきたい。」


リク「そうか。楽しみだなっ!」


アリス「うん。楽しみっ!」


そのときリクは真剣な表情でアリスを見つめて言った。


リク「オレ、アリスのこと待ってるから。次に会えるまで、アリスのことずっと待ってるから。」


そのときリクの名前を呼ぶ声がした。


――


アリス「リク・・・。」


振り返ると階段の下にアリスがいた。


リク「アリス・・・。」


アリス「フフッ、久しぶり。」


そう言ってアリスは微笑んだ。


リク「久しぶりってなんだよ。」


アリス「だって久しぶりでしょ。」


アリスは階段を上ってリクが立っている踊り場まで来た。


リク「今、ペテルギウスを見ていたんだ。」


雲の合間にペテルギウスが赤く輝いていた。


アリス「ここからだと良く見えるね。」


リク「まだペテルギウスはあるの?」


アリス「その答えについては640年後のお楽しみ。」


リク「じゃあ、ベテルバティって本当にあるの?」


アリス「まだ人類が知らないことは秘密!」


リク「何も答えてくれないじゃん。」


するとアリスは冗談っぽく言った。


アリス「だって、また記憶を消されることになったら困るでしょ?」


リク「ああ、もうそれだけは勘弁だよ。」


2人は笑った。


アリス「でも、それでいいのよ。この星のことは、この星の人たちがゆっくり進めていけばいい。」


リク「そっか。だったらペテルギウスの形ってどんな形してるの?」


アリス「何その質問?恒星は球体って決まってるでしょ?」


リク「いいじゃん。答えが分かるまではいろんな想像をして!」


アリス「じゃあペテルギウスはハートの形をしてるとか?」


リク「ちょうど赤いしな!」


2人は笑い合った。


アリス「全部、思い出したんだね。」


リク「ごめんな・・・。アリスのこと忘れてしまって・・・。本当に・・・。」


アリス「ううん。いいのよ。っていうかお久しぶりっ!」


リク「え?どっちの意味で?」


アリス「今のは、私のことを思い出してくれたときのお久しぶり!」


アリスは笑った。


リク「あの世界に行って、だんだん思い出したんだ。そして今は全部思い出すことができた。だからあの世界に行けたことを感謝してるよ。」


アリス「そうなんだ!じゃあ修学旅行で伏見稲荷に行ったときのこと覚えてる?」


リク「ああ、もちろん!」


アリス「あのときにお願いしたでしょ?リクはあのとき何をお願いしたの?」


リク「オレのはまだ叶ってないんだ。だからから言えないかも・・・。アリスは?」


アリス「私は、地球に戻ってこれますようにって、お願いしたの!それでやっと叶ったから言えるようになったよ!」


リク「じゃあ、そのお願いはあのときオレたちには言えなかったな。」


アリス「でしょっ!?言ってたら私、頭がおかしい人になってたかも!」


アリスは笑った。


リク「いや、言っても大丈夫だったよ。アリスがどんな人だったとしても・・・。」


アリス「ごめんね。私、言うべきだったのかもって、今は思ってるんだ。リクたちに本当のことを言えなくて・・・。だからごめんね。」


リク「いいよ。アリスにはアリスの立場があった訳だし。オレたちのことを心配してくれてた訳だし。オレがアリスと同じ立場でも、やっぱり言えないと思うから。」


アリス「ありがとう。久しぶりに会ったのに・・・、また謝ってるね。」


2人は笑った。


リク「でもアリスは願いが叶って本当に良かったよ。もし叶わなかったら、もうアリスとは会えなかった。」


アリス「リクのはまだ先のことなの?」


リク「だろうな。」


アリスはリクを見つめて言った。


アリス「それってもしかして、私と関係ある?」


リク「うん、あるよ。」


アリス「あ、だったら分かった気がする。」


リク「え?」


アリス「たぶん、だけど・・・。」


リク「まだ言うなよ。願いが叶わなくなったら嫌だから。」


アリス「言わないよ。もし私が思ってるのが正解なら、私からは言えないよ。」


リク「ああ、そういうことか・・・。だったら正解なのかもしれない・・・。」


するとアリスは嬉しそうに言った。


アリス「もしその願いを叶えるために、私に何か出来ることがあったら、そしたら何でも言ってね。」


リクは恥ずかしそうに言った。


リク「そのときは、ちゃんとした場所で、ちゃんとしたタイミングで、ちゃんとアリスにお願いするよ。」


アリス「分かった。私もちゃんと待ってる。」


アリスは笑った。そのとき夜空に流れ星が流れた。


リク「あっ!」


アリス「流れ星っ!」


リク「願い事をするチャンスだったのにー!」


アリス「リクって願いごと多いね!」


リク「多すぎるかな?」


アリス「いいと思うよ。それだけ夢があるっていうことでしょ?」


リク「夢かー。」


アリス「夢といえば、昔見つけた宝物は役に立った?」


リク「ああ、それで論文や本を書いたりしているよ。苦労してるけどな。」


アリス「本当?手伝ってあげようか?」


リク「またそんなこと言って。アリスに手伝ってもらったらズルいだろ。オレはこの星の人だから、この星の人がゆっくり頑張って完成させるよ。あっ!本ができたらアリスにプレゼントするよ。」


アリス「嬉しい。楽しみしてる。私、本当に地球に来て良かった。」


リクはおもむろに言った。


リク「でもアリス、来るの早かったな。」


アリスは真面目に言った。


アリス「だって、リクに早く会いたかったんだもん。」


アリスはそう言うリクの手を取り、リクの指を触った。するとリクはアリスの手を引っ張ってアリスを抱きしめた。


リク「オレもアリスに会いたかった。」


アリス「にしては、変わった待ち合わせの場所だね。」


アリスはリクの腕の中で笑った。


リク「オレたちにとっては最高に分かりやすい場所だっただろ?」


アリス「そうだね。でもここが一番の思い出の場所なんて言わないでよ。」


リク「でもこれからここが一番の思い出の場所になるかもしれないよ。やっと再会できたんだから。」


アリスは少し考えて言った。


アリス「うん、最後の時、最後の場所は・・・」


リク・アリス「始まりの時、始まりの場所。」


2人の声がハモったことがおかしくて笑った。そしてリクが冗談っぽく言った。


リク「ここから始まりか。それで、あの時の続きはどうするの?」


そう言われてアリスは、あのとき戸惑ってリクにキスできなかったことを思い出した。またキスをしようとするとリクが消えていなくなってしまうのではないかと少し不安になった。だからアリスはリクの方にスッと一歩を踏み出し、リクの唇にキスをした。


――


♬ REO Speedwagon “Can’t Fight This Feeling” ♬


2人は都内の夜景の中にいた。その夜景は日本の一部で、アジアの一部で、地球の一部だった。地球を回る変わった形をした人工衛星があった。その人工衛星の向こうを横切る彗星があった。


タイトル「最後の時に 最後の場所で」

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